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特集「ベストコレクション」

2015年6月1日

特集「水無月6月/ベストコレクション」ゴーン・ガール(2014年 サスペンス映画)

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監督 デヴィッド・フィンチャー
出演 ベン・アフレック/ロザムンド・パイク

それが結婚よ!

妻のエイミー(ロザムンド・バイク)に、追い詰められた夫ニック(ベン・アフレック)が叫ぶ。「世間がぼくをどう思おうと憎もうとかまわない。君と別れる!」「この子はあなたを憎むわ。だれも教えなくても」「このクソ女!」「あなたはクソ女と結婚した。クソ女に好かれようと装っていた自分が好きなはず。わたしはひるまない、クソ女だから。あなたのためにあの男を殺した。わたしだからできたのよ。平凡な女に満足できる? 無理よ。わたしでないと」「君は狂っている。完全に異常だよ。なぜこんな真似を。君を愛したけど、憎みあい支配しあおうとし、お互いを苦しめた」「それが結婚よ」え~そうなの、こんな結婚観もあるのね▼ニックの双子の妹は性悪の嫁に陥れられた兄が可哀想でたまらない。子供が生まれ成人するまで「18年間も偽りの人生を送るなんて」と泣く。ニックは「ぼくの子だ。放っておけない。ぼくがどう望むかではなく責任がある」妹はこう聞く「彼女といたいのね」。当たりだわね。さんざん妻をこきおろしているわりにはこれから18年も我慢しようっていうのだから、つまり離れたくないのよ。ニックは妹に「君だけがぼくの理性の支えだ」「生まれる前からいっしょだったもの」仲のいい兄妹なのだといえばいえるが、こんなに妹に頼る兄貴もめずらしい。ニックという男はことほどさように、妻にも妹にも調子よく依存心が強いのです。異常なほど性格も自尊心も強い妻はそこを見抜いています。失業して稼ぎもなくノンベンと毎日を送っているヘタレ亭主が、一人前に浮気して自分を顧みないなんて、人を馬鹿にするにもホドがある、落とし前、きっちりつけさせていただくわ…で、どうするかといえば夫を殺人犯に仕立て、法の手によって死刑にしてやるというぶっ飛び方です▼監督がデヴィッド・フィンチャーでしょう。この人のストーリー・テリングの力強いことは「ドラゴン・タトゥーの女」「セブン」「パニック・ルーム」などいちいちあげるまでもなく定評があります。グイグイ彼の映画世界に引き込んでいく。本作も落ち着いて考えれば「?」という箇所はポロポロでてくるのですが、おかしいなと立ち止まる前に強引にひきずられていってしまいます。映画づくりには、よくできているけど感動できない映画をつくる人と、ディテールで欠点は数えられるが、見終わったあと堪能できる映画をつくる人がいると思うのです。後者のほうが断然好きな映画ファンのほうが多いと思えるのですが、本作がオスカー前哨戦の圧倒的下馬評のわりに主演女優だけに終わったのは、ハリウッドのベン・アフレック嫌いもさることながら、デヴィッド・フィンチャーの作劇術を「こけおどし」だと捉える向きがあるからかもしれません▼べつにこういう行動がいいというのではないし、エイミーは確かにサイコパスかもしれませんが、若くてきれいで、高学歴で能力のある女が、やりたいことをやるというとらえかたにおいては、案外共感する女性って多いのではないかと思うのです。だってエイミーは住み慣れたニューヨークからミズリーの片田舎に、夫の事情で引っ越してきたわけね。デヴィッド・フィンチャーが彼好みの独特のうらさびれた暗い映像で、小さな町の壁や路地を映していくにつれ、見ているほうもだんだんやりきれなくなります。田舎町にきたエイミーは完全に場違いな都会派である。結婚して5年、倦怠期にあり、夫は怠け者でろくに収入もなく、実家の両親にも合わせる顔がない、おまけに女までこさえて…思うのですがエイミーの唯一やりがいのあった才能の消費は、このたびの犯罪だったのではないでしょうか。夫が女をつくっても我慢する、夫がお金を稼いでこなくてもじっと耐えるなど、不服も忍従もくそくらえ、完全なる復讐に全知全能をあげ、蜘蛛の糸にからめとられた男は妻のブロンドの髪をなでながらつぶやく「これからどうなる」…知るかよ。エミリーの、というより性悪女のサイコパスの一人舞台で映画は終わります▼すくなくとも殺人事件だから、当然町あげて警察も検察も弁護士も動くのですが、世論は圧倒的にエイミーに有利。マスコミという「第三の証人」を操作する手練手管もこの映画を華やかにしています。反撃にでたニックがマスコミを懐柔したテクに、エイミーがいままでバカにしていた夫を見直し、彼を刑務所から死刑台に送るのではなく、生かしておいてもっと利用しようと方針を変更するあたりはビッチ(クソ女)の面目躍如です。監督は原作を読んで「エイミーのイメージはキャロライン・べセット=ケネディ」だったといいます。JFKの一人息子の妻。小型飛行機の事故により夫と実姉といっしょに死亡しました。ブティックのスタッフからセレブにとつぎ、一時ストリート・スマートとして注目を集めました。

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