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特集「ベストコレクション」

2015年6月3日

特集「水無月6月/ベストコレクション」インターステラー(下)(2014年 ヒューマン映画)

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監督 クリストファー・ノーラン
出演 マシュー・マコノヒー/アン・ハサウェイ/ジェシカ・チャステイン/マット・デイモン/マイケル・ケイン

遙かなる銀河の彼方

(承前)マン博士はしかし驚くべき「ラザロ計画」の真相を暴露します。同時期マーフは死を前にしたブランド教授から思いもよらぬ事実を告白される。重力をコントロールできる方程式の「解」を得たら、巨大なスペースコロニーの建設によって人類の脱出は可能になる、しかし教授は「できないのだ、重力方程式はとっくに解けていた。半分はね。あとの半分の答えはブラックホールにある。ブラックホールからデータを取り出さない限り不可能なのだ」。マーフは愕然とする。父はそれを知っていたのか。知っていたとすれば自分は置き去りにされたのか。マーフはそれでも研究を続行する。重力の本質を理解するためにはブラックホールの特異点を観測し、データを持ち帰る必要があった。ところが事象の地平面の外側から特異点を観測するのは絶対に不可能とされていて、それこそが教授の重力制御を諦めた理由だった。このとき父クーパーは宇宙船に残ったロボットとともに、人知を超えた挑戦にでようとしていた。宇宙船が向かうブラックホール「ガルガンチュア」は最大級ではあるが老齢のため特異点の力は穏やかだ。地平線を猛スピードで突っ切れば生き残る可能性はある。その先は謎だ。だが特異点を観測し量子データを送信できれば方程式は完成する。彼に送信機を装着すれば可能だ。ロボットのTARSが叫ぶ。「その彼っておれのことか!」▼ガルガンチュアの特異点に突入したシーンの映像は幾何学的・重層的で美しい。無数の立法体が折り重なった五次元の時空。未知の世界に書きこまれたデータを収集したTARSが、地球に向かって送信する。だれが受け取るのかとクーパーに聞く。「マーフだ」「子供には難しすぎる」「10歳だけど、おれの娘だ」ここで冒頭の本棚から本が落ちるメッセージの真の意味が明かされます。パパは五次元の未来から解を送っていたのです。パパが残していったアナログの腕時計の秒針が小刻みに行ったり戻ったりするのをみたマースは、それがモールス信号だと気づく。「パパよ、姿は見えないけどパパが帰ってきた、パパはわたしたちを見捨てなかったのよ」なんだか知らないけど、ここ泣けてしまいます▼さて話はすこしあともどりします。アメリアのことです。燃料と酸素のほとんどを失った宇宙船は、地球への帰還は絶望的となっていました。クーパーは宇宙船をガルガンチュアに接近させ、アメリアひとりを宇宙船に残したままTARSを乗せた小艇、自分を乗せた小艇をそれぞれ切り離しアメリアに生存を託す。死重量を棄てて身軽になった宇宙船はガルガンチュアを脱出する軌道に乗るが、クーパーとTARSはガルガンチュアの中心へ落下していきます。めざすのは前人未到、ブラックホールの向こう…アメリアは無事エドモンド星に着陸します。ラストのこのシーンも美しかった。すでにエドモンドは死亡していた、アメリアはエドモンドの肩章を墓石に置いている。彼女が歩む先には小さなキャンプがある。ここで彼女もまた死に就くだろう。クーパーは老齢となったマーフに会えた。そこは土星の軌道にある宇宙ステーションのコロニー。地球脱出は成功し人類は移住できたのだ。コロニーの名は「クーパー・ステーション」。自分の名をつけてくれて光栄だというクーパーに医師と看護師は「お嬢さんの功績をたたえた名前です」と告げる。マーフもまたコロニーに来ていた。パパに言う。「わたしには子供も家族もいるから大丈夫。パパはアメリアを探しに行って」。パパがひそかにアメリアを好きだったことを娘は知っていた。そうしてパパは再び飛び立つのです。うへ~まだ行くかア。荒涼とした星にいるアン・ハサウェイがときならぬ美少年みたいで「なんでこうなるの?」と思ったけど、まあいいか。モノローグはアメリアの死をほのめかしているけど、そのうちクーパーがくるだろ。ミステリーあり、ドンデン返しあり、見応えあります。でも幾層にも重なった物語は、五次元の宇宙空間だけではありません。人類愛に燃えて新しい星に着陸した天才の逸脱、長いインターステラーの旅の間に亡くなっていった家族、不慮の事故で犠牲になったクルー。宇宙船との交信が何十年も途絶え、絶望と希望が交錯する地球の科学者、時間と空間を往還し織りなされた彼らのドラマ。その中軸をなす魂の存在こそじつはだれも解明したことのない五次元の内的空間ではないか、わたしたちがその正体をまだ理解していないだけで、銀河を越えたガルガンチュアの彼方、高次元で作用するなにかではないかと思わされたのでした。人はそれを愛と呼んでいるけど。

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