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特集「ベストコレクション」

2015年6月7日

特集「水無月6月/ベストコレクション」メビウス(2013年 サスペンス映画)

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監督 エリック・ロシャン
出演 ジャン・デュジャルダン/セシル・ド・フランス/ティム・ロス

いかれた女の系譜

エリック・ロシャン監督の映画って、おしなべてこういう作品なのでしょうか。「アンナ・オズ」も夢と現実の境を行ったり来たり、しまいに夢のなかの自分が現実の自分にとってかわるという、倒錯の映画だったわね。それにくらべたら本作はまだつかみどころがあるのだけど、ロシャンは基本的に「こっち」か「あっち」か、正体不明の「ややこしい関係」が好きな複雑系男子なのね。本作は二重スパイの競演で、単純なアタマとしてはどこまでついていけるか不安だったくらいよ。主人公はロシア諜報部(FSB)の諜報員グレゴリー(ジャン・デュジャルダン)と、アメリカ人女性ディーラーのアリス(セシル・ド・フランス)だ。アリスはリーマン・ショックで世界の金融を狂わせた伝説のディーラー。リーマンを潰してアメリカを所払いになった伝説の女▼アリスは現在モナコのロストフスキー銀行で働いている。ロストフスキー(ティム・ロス)の、不正資金洗浄の実態を調査しているのがロシアのグレゴリー。なぜ調査するかといえば、彼の育ての親ともいえる上司のチェルカチンが、ロストフスキーの支援によってFSB長官への昇進がほぼ決まったから、ロストフスキーとの腐れ縁で墓穴をほらないよう、彼を葬ることにしたのである。グレゴリーらロシアのスパイグループは、モナコ警察と偽ってアリスに近づき、アメリカへの復帰をエサに、内部調査のため雇う。ところが彼女はアメリカのCIAのスパイでもあった。CIAもまたロストフスキーの身辺を調べていたのだ。アリスはFSBからアプローチがあったことをCIAに報告すると、それはそれで引き受けろという指示。で、彼女は二重スパイとしてロストフスキーに接近し「あっち」と「こっち」の情報を流通させることになる。ロストフスキーはアリスが気に入り、大きな仕事を任せようとするが、ボディガードのコルゾフはなかなか気を許さない▼アリスはグレゴリーが自分を監視しているとは知らず、彼の正体を知らないまま恋に落ちる。グレゴリーはグレゴリーで、アリスがCIAのスパイだとは知らずに深い仲になる。関係はチェルカチンの知るところとなり、アリスとの清算を迫られるが、グレゴリーは命令に背きさらに関係を深める。アリスの行動もコルゾフに感付かれグレゴリーがロシアのスパイであることも知られる。グレゴリーはコルゾフを殺しロストフスキーの屋敷の前に放置する。ロシア・マフィアの仕業だと取ったロストフスキーはアリスを伴いモスクワに逃亡する。モスクワではチェルカチンが正式にFSB長官となり長官交代の慣例行事としてCIAとFSB関係者が非公式に顔合わせをする場所で、アリスはグレゴリーがFSBの一員であり、グレゴリーはアリスがCIAの一員であることがわかる。ロストフスキーは資金洗浄で起訴されるとイギリスに亡命し、すでにNATOの財政顧問となっていたアリスへの報復を部下に命じる。毒殺されかかったアリスは一命をとりとめたものの、脳を破壊され植物人間となる。それを知ったグレゴリーは病院にかけつけ、うつろなアリスを抱きしめると、かろうじてアリスは反応した…▼言っちゃ悪いけど、豪華な俳優陣のわりにはこけおどしなのよね。デュジャルダンは「アーティスト」で、アカデミー主演男優賞、ティム・ロスは言うに及ばぬイギリス出身の性格俳優、最近では大胆にもモナコのレーニエ大公に扮しました。そこへセシル・ド・フランス。彼女が頭と精神のおかしくなる役って二度目よ。最初は「ハイテンション」の狂気の殺人鬼。アレクサンドル・アジャ監督がむちゃくちゃ狂わせてくれたわね。どっちのセシルが記憶に残るかというと、後者なのよね。彼女は「ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵No.1と呼ばれた男1」でメスリーヌの相棒をやったけど、全然冴えなかった。あのやさしげな顔で、犯罪者という柄ではないし似合いもしないことがどうしてわからないのかしらね。美貌ではあるが色っぽくないからゲイの役が多いな。彼女は39歳になった(2015)。これから女優として難しい年齢だから、いろんな役に挑戦するだろうけど、ビッチ(悪女)がやれるかな。ヨーロッパの女優が得意とする、狂気が揺曳する女。ロミー・シュナイダーがやり(「地獄の貴婦人」)、シモーヌ・シニョレがやり(「悪魔のような女」)、シャーロット・ランプリングがやり(「愛の嵐」)、ジャンヌ・モローがやり(「黒衣の花嫁」)、ジェーン・バーキンがやり(「ラ・ピラート」)、マリオン・コティヤールがやり(「エディット・ピアフ~愛の讃歌」)、イザベル・ユペールがやり(「ピアニスト」)、ティルダ・スウィントンがやり(「少年は残酷な弓を射る」)、カトリーヌ・ドヌーブがやり(「反撥」)、クリスティン・スコット・トーマスがやり(「ずっとあなたを愛してる」)、ケイト・ウィンスレット(「愛を読むひと」)がやった、死と虚無と耽美をまとった、最高にいかれた女の系譜に堂々名を連ねるか。連ねてほしいですね。

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