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特集「ベストコレクション」

2015年6月8日

特集「水無月6月/ベストコレクション」カリフォルニア・ドールズ(1981年 ヒューマン映画)

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監督 ロバート・アルドリッチ
出演 ピーター・フォーク/ヴィッキー・フレデリック/ローレン・ランドン

このやるせなさ、この生きる度胸

「カリフォルニア・ドールズ」というチーム名でタッグを組んでいる女子プロレスのふたりがいる。相棒のモリー(ローレン・ランドン)が「もうやめたい」という。うらぶれたモーテルで、いつものようにアイリス(ヴィッキー・フレデリック)と同室だ。「同じところをぐるぐる回っているだけで前に進めない気がする」とモリー。アイリスは「夢をあきらめるの」ときく。「ロスに帰ってなにをするの。電話交換手? ますます道は遠のくわ」「高校は出ていないけど、夜学だってあるわ」「でもひとりで暮らすことになるのよ」「今はあなたやあいつがいるってこと?」「3人一組で生きるしかないわ。たとえ失敗しても」。ロバート・アルドリッチ監督は学歴も資産もなく、貧しい家の出である彼女らが、故郷の親元を離れあるいは家族を棄て、サクセスの夢を追ってプロレスの道に入ったものの、有名でもなければ期待もされていない前座のレスラーであり、試合をさせてくれる興行主を探して、旅から旅の巡業に明け暮れる毎日。ひとりは疲れ弱気になり、降りようとしている、そんな状況を暗い部屋のトーンとともに手短に描出する。モリーがいう「あいつ」とは彼女らのマネージャー、ハリー(ピーター・フォーク)のことだ▼監督はハリーの履歴や仕事歴をスパッと削除し、ただひたすらいかがわしい男であることをほのめかす。ハリーとアイリスは関係がある。愛というには程遠くなった、むしろ友情とよぶべき乾いた関係だが、ハリーと女たちにはたったひとつ、プロレスで有名になる、大金を稼ぐ、チャンピオンになるという夢がある。ハリーはモリーとアイリスが必ずトップになる選手だと信じ、テキ屋よろしく「女子プロにはブスが多いが、うちの2人はモンロー級だ。プロレス始まって以来の大物だ。ロックも顔負け、客を熱狂させる」と売り込むのだ。日本人レスラー(ミミ萩原とジャンボ堀)の回転逆エビ固めに苦戦した。あのわざを練習しろと言う。たまには休みもとり満足な食事をしたいと彼女らが言うと「正式なものは高くつく。成功したければ黙ってついてこい。名を売り、金を稼ぎたければぐずぐず言うな」そう一蹴する。見世物同然の遊園地での泥レスリングや、ドサ回りの試合を経て、やっとランキングの3位に名前があがった。アイリスもモリーも飛び上がって喜ぶ。チャンピオンの「トレドの虎」には最高のトレーナー、元ローマ・オリンピックでコーチだったスタンリーがついている。育てた選手は必ず一流になる。だから油断するなとハリーは舞い上がるふたりを抑える▼興行主も「カリフォルニア・ドールズ」に注目しはじめた。人気も出てきた。彼女らは美人だし強い。がめつい業界の顔役エディはしかし、ドールズをチャンピオン戦に出場させようとしない。契約したギャラを値切ったばかりにハリーに愛車ベンツをバットでボコボコにされた怨みがあるのだ。アイリスは対戦相手に選ばれるためにエディと一夜をともにし、試合出場をOKさせる。試合はクリスマス・イブの夜、相手は世界チャンピオン「トレドの虎」、会場はシカゴ。片田舎の場末の小屋でもない、名を聞いたこともない相手でもない、ギャラは勝てば2万5千ドル、負けたら1万ドル。ハリーは超豪華な一流ホテルに泊まることにする。夜カジノにくりだしたアイリスたちはスロットに興じ、マシーンを操作してボロ儲け。ハリーは軍資金を稼ぐため賭場にいき、どんな手をつかったのかひとり勝ちする。帰途襲撃されると予想していたハリーは、いちはやくバットを持って物陰でまちかまえ、なにもされていないうちに二人組みをたたきのめし、有り金までまきあげる▼試合当夜となった。ハリーは言った「勝つ道はひとつ。あいつら以上に燃えろ」「やるだけよ」とアイリス。満員の会場にガールズはなかなか姿を現さない。リングで待ちぼうけを食う「虎」はみるみる不機嫌になり一触即発。ゲートに当たったスポットライトがガールズの出場を告げた。筋肉隆々のボディビルダーの肩高くかつぎあげられているだけではない、小林幸子も裸足で逃げそうな衣装なのだ。キンキラキンの全身ラメ入りスーツにまばゆい冠、翼竜のごとき巨大な白い翼をゆるやかに波打たせ、歓呼の声とともに入場してきた。ハナから相手を圧倒するために、ハリーが軍資金できっちり根回しをした仕掛けだった。リングの上はまるでショータイム。興奮のルツボとなった会場にゴングが鳴った▼ここからのクライマックスが素晴らしい。エディはレフリーを買収していた。ドールズを勝たせるつもりはなかった。引き分けの場合チャンピオンの勝ちである。試合時間は30分。「虎」は強く、反則を巧みに使う高度なテクでドールズを翻弄。レフリーは反則をとらないからドールズはやられっぱなしだ。アナウンサーが「レフリーの様子が変です」と言い出す。ハリーは「レフリーをたたきのめせ、こうなったら皆殺しだ」とわめく。アナウンサーが叫ぶ「ドールズが暴走しています。攻撃の的はレフリーです」あと2分。ひきわけたらチャンピオンになれない。両者はリングの下で格闘している。先にリングに戻ったのは「虎」チームだった。1分を切る。ガールズふたりはリングの中に戻らずロープの上に立って身を躍らせた。でたぞ、必殺「逆エビ固め」。「フォールだ、フォールしろ」でもレフリーはカウントしない。「フォールだ、レフリー、なにをしている」観客が怒声を浴びせる。レフリーは固まって声も出ない。ハリーがカウントを読み始めた「ワン・ツー」場内は総立ち、「ワン、ツー」のシュプレヒコール。我に返ったレフリーが「ワン・ツー・スリー」てのひらでマットを叩いた▼「虎」のトレーナー、スタンリーは敗れた選手をねぎらい「健闘を称えるのだ、行って来い」とガールズのコーナーに行かせる。握手を求めた「虎」たちを「さすがだった」とアイリスは称える。あ~気持ちいいぞ。「ロッキー」と「カリフォルニア・ドールズ」は映画史上に残るスポーツ・アクションの傑作だと思います。アルドリッチのヒロインといえば「何がジェーンに起こったか」「ふるえて眠れ」のベティ・デイビスといい、「甘い抱擁」のベリル・リードといい、暗い情念とエロチシズムを放ち、はかなさと哀惜をただよわせる女たちだった。アイリスにもモリーにもその遺伝子は受け継がれている。もう若くはない、体力は下り坂になる、それでも一生に一度の大勝負に挑む。人生の影をぬいながら光を求める男と女。そのやるせなさ、生きる度胸。これが遺作です。アルドリッチの映画人生を締めくくるのにふさわしい傑作でした。

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