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特集「ベストコレクション」

2015年6月10日

特集「水無月6月/ベストコレクション」イフ・アイ・ステイ/愛が還る場所(2014 家族映画)

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監督 R.J.カトラー
出演 クロエ・グレース・モリッツ/ジェイミー・ブラックリー

愛はどこへ還る

副題が「愛が還る場所」です。お子さまランチみたいな、最初にクロエありきのアイドル映画なので、見ていて困った。本作のような映画にケチをつけると、ろくなことはありませんのです。でもやっぱり正直に言おう。この映画がつまらない、というより感動するのが難しかった理由のひとつは、状況設定があんまりありふれていて、映画全体が絵に描いた餅みたいなのよ。変わり者だけど幸福な家族、真面目で才能があり努力家のヒロイン、ミア(クロエ・グレース・モリッツ)。彼女は学園のスーパースター、アダム(ジェイミー・ブラックリー)に恋され、彼女もまた彼を愛して相思相愛、両親や親友に励まされ音大の最高峰、ジュリアード音楽院に挑戦しつつ、恋人と喧嘩したり仲直りしたり、くっついたり離れたりを繰り返す。どこが面白い?▼ある日交通事故でママは即死、パパは術中死、弟も死ぬ。幽体離脱したミアは病院で危篤の自分を見ながら、家族を失い孤児となった状態に生きる希望を失う。いったんアダムと別れていたが、事故を知ったアダムは全力疾走で病院に走ってくる、それを窓からミアはみて「来てくれたのね、アダム」。昏睡している自分のまくらもとで、おじいちゃんのうちあけ話をミアは聞いている。ロック・バンドのドラマーだったパパは、ミアが借り物のチェロで弾く演奏を聞き自分のドラムを売り払い、チェロを買ってきた。ママはパパの「追っかけ」をする筋金入りのロック・フリークだった。アダムはロック、自分はクラシックと道はちがうが音楽への情熱はいっしょ。アダムとの話題をつくるためミアはママに「女性ロッカーの名前を教えて」。ママは「学校の社会の宿題?」なんて茶化しながら「デボラ・ハリー、パメラ・ムーア。ジョーン・ジェット」とスラスラ。キムは親友だ。「アダムとダメになったらなぐさめてくれる?」とミア。「もちろんよ。でも彼と一心同体モードはやめてね」とキム。「つまり〈わたしたちは〉…」「〈ふたりとも〉…」「〈同じ主義〉…」「そうなったら撃つよ」「自分で銃を差し出すよ」こんなガールズ・トークを言い合う▼離脱したミアは幸福だった家族の日常を思い出す。おばあちゃんがいても、おじいちゃんがいても、友達がいても、両親と弟を失ったことは耐えられない、と思う。ミアは看護師が枕元で「運命は自分次第よ」とつぶやくのを聞く。アダムがミアの手を握りギターを弾き、耳元でささやく。ミアは待合室に自分の回復を祈る人たちが仮眠もとらず、経過を見守っているのを知る。血の繋がりのないあの人達が、あなたが生きることを願っているとだれかが言う。アダムは家から一通の封書を取ってきてベッドのそばで開封。ジュリアード音楽院からの合格通知だった。アダムは「ミア、死ぬな、生きてくれ」それでミアの目がパッチリ開くのです…いいけどね、別に。辛い孤独な人生をこれからミアは歩むのか。そうとは限らないだろう。ミアのママも言っていたではないか「選択肢はふたつ。ジュリアードでチェロに賭ける。アダムと人生の冒険をする。どの道を選ぼうと幸せになれる。本物の恋をしたらつらいものなの」わざわざ恋をしなくても、どだい無傷で生きていける人生などない▼日本の青いテントにいる人たちの存在を教えたくなったわ。日本には家族を棄て、家を出てきたたくさんの人たちがいる。アメリカにはいないのか。こんな絵のような一家ばかりか。家族を棄てた人たちは底辺の暮らしをしながら新聞を読み、ひとり読書する。ひっそりと生きていくことで自分を守る人もいるのだ。人生になにがあったのかだれも知らない。そこにひとりでいることは、家族を棄てたのか、家族に棄てられたのかだれも知らない。わかっているのは彼や彼女に、家族でいやされるものがなかったという事実だけだ。家族さえいれば幸福で安心できる社会とは幻想にすぎないのではないのか。そんな疑いをもちながらこの映画をみていると、ミアが人生のとば口で、最大のピンチにであったこと、失ったものの大切さを知ったことは、むしろ幸運だったかもしれないと思う。幸福には寿命がありいつか失われるのだと知ったことは。失った時期は残酷なまでに早すぎ、予告もなく一瞬にして襲ってきたものだったけど、幸福とは命といっしょで必ず消えるものなのだ。それを思い知ってからすべては始まる。愛しき日々、いつくしむべき人と時間は厳しく限られているという真実に、愛はいつも還るべきだ。本来のメッセージはここだと思うけど、肝心なところが甘かったから、すっかり少女コミックになっているわ。まあいいか。

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