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特集「B級映画に愛をこめて」

2015年6月22日

特集「B級映画に愛を込めて」ボディ・ハント(2012年 ホラー映画)

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監督 マーク・トンデライ
出演 ジェニファー・ローレンス/マックス・シエリオット/エリザベス・シュー

よくできた「段取り」

イギリスで人気の映画雑誌「エンパイア」が選ぶ世界で最もセクシーな映画女優(2013年度)ベスト10に、ジェニファー・ローレンスがランクインしている。そういえば顔も体つきも全体にポッテリした柔らかな感じですね。「ウィンターズ・ボーン」のときは20歳、そのわずか2年後に「世界にひとつのプレイブック」でアカデミー主演女優賞。本作はその中間にあります。ローレンスの上昇運気真只中のときです。オスカー授賞式ではステージに上がる途中でこけていましたが、もともと落ち着いている子じゃないですか。「ウィンターズ」の長女役なんか、健気というより、押しもおされぬ家長という重量感すら漂わせ、20歳やそこらで(すごいやっちゃな)と思ったものです▼共演がエリザベス・シューです。ローレンス扮するヒロイン・エリッサの母親サラの役です。演技力は定評があるのに、あまり目立たないのは本人がガツガツしていないからだと思えます。ハリウッドで女優をやるとは、「地獄の門」をくぐったことと同じですが、不思議とこの人、さらさらとしている。「31年目の夫婦げんか」で、夫とはるばるカウンセリングを受けに来たものの、理解し合えず心はうつろ、すっかりしょげて酒でも飲むかと、見知らぬ町のバーのドアを押したメリル・ストリープに、気さくに声をかける女主人がシューでした。女性が何人いてもパッと彼女の顔だけが目にとびこんでくる美人です。笑うと目尻や頬に深いしわをきざむのですが、それすら好感度として受け取られるトクな人です。メリル・ストリープといえば、共演者や監督やスタッフはじめあらゆる関係者に、たとえばロケ先の専用トレーラーが狭いとか、くだらないことで難癖をつけたりしない。新作プロモーションで海外に行っても、きちんとその国の文化を立てる、気配りが服をきたような聡明な女優ですが、その逆の「わたし、わたし」と人を押しのけメリルの逆鱗にふれた目立ちたがり屋もいて、まあ、エリザベス・シューはとてもそんなタイプと程遠い印象なのですね。お前それホンマかと聞かれたら「知らんけど」と答えますが、いいでしょ、印象なのだから。この映画のインタビューでももっと前に出てもいい大事な役なのに、主演のローレンスを持ち上げていました。そんなおだやかな性格だから、オスカーのノミネート止まりなのかもしれないけどね▼ホラー映画にとって「段取り」は非常に大事な要素です。怖いというエモーションに導いていく手順ですね。姿をみせない何かそこにある、観客は情報を与えられているから、そこになにかある、あるいはだれかいることをすでに感づいている、一連のシークエンスに従ってここで「怖いことが起きる」確信のようなものがある。「ジョーズ」も「エイリアン」も「エクソシスト」も、「段取り」の積み重ねがクライマックスにひっぱっていきました。段取りとはすべてリアリティのためであると言っていい。ホラーのできは、本来ありえない非現実を現実にみせかけるリアリティの構築にかかっている▼そのつもりになって映画をみていくと、本作ではまず冒頭の少女、長い髪で顔がみえない。少女というにはがっしりしたレスラーみたいな体つきをした「少女」の登場。ひんぱんにフラッシュバックするブランコの事故。兄ライアン(マックス・シエリオット)が両親を惨殺し森に逃走した妹を、じつは家の地下室に監禁しており、その妹はなぜか兄の隙をみてたびたび脱走を試みる。兄の告白によればブランコから転落して意識不明になった妹は、意識を取り戻したときは別人のように凶暴になっており、家族に暴力をふるいすぐ暴れた、明らかに狂っていた…ライアンは高齢の叔母を看取り、今は知的障害のある妹をひとりで世話する苦労性な青年なのである。ヒロインのエリッサはそういう陰のあるライアンに惹かれていくが、母親のサラだけは信用しない。エリッサは母親の不倫で父親と別れる羽目になり(たぶんパパっ子だったのだろう)母を恨み、尻軽女だと罵る。サラは医師だ。病院勤務の夜勤や急患に追われ、なかなか娘と会話する時間がもてないが愛情は伝えたい、そうシューは演じている。それにしてもライアンの妹は、なぜ執拗に脱走したがるのだろう…▼そういう「段取り」のあとに真相が明らかになる。かなりよくできたホラーでありスリラーであり、サスペンスだと思う。ローレンスも、肩も露わな無駄な薄着でよく頑張ったし。

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