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特集「B級映画に愛をこめて」

2015年6月24日

特集「B級映画に愛を込めて」ザ・ワーズ盗まれた人生(2012年 社会派映画)

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監督 ブライアン・クラグマン
出演 ブラッドレイ・クーパー/ゾーイ・サルダナ/ジェレミー・アイアンズ/ベン・バーンズ/ノラ・アルネゼデール/デニス・クエイド

ジェレミー・アイアンズ

話をすっきりさせよう。3人の人物がいる。男性だ。一人はこの映画の語り手。小説「ザ・ワーズ」によって成功した作家クレイ(デニス・クエイド)。「ザ・ワーズ」の主人公で、目下売れない作家志望の青年ローリー(ブラッドレイ・クーパー)。ローリーが劇中で発表した小説が「窓辺の涙」。彼はそれによってベストセラー作家となるが、ある日「窓辺の涙」は50年前に自分が書いたものだと言って姿を現した老人(ジェレミー・アイアンズ)。この3人を巡って登場するのがローリーの妻ドラ(ゾーイ・サルダナ)、老人の青年時代を演じるベン・バーンズ、彼の恋人セリアにノラ・アルネゼデールだ▼オープニングはクレイが講演会で次作を朗読している。なかなか芽が出ない作家の卵ローリーは新婚旅行先のパリで、骨董屋の片隅で古いかばんを買った。かばんの中には小説の書かれた原稿用紙が入っていた。「窓辺の涙」と題された作品に打たれ、ローリーは一字一句書き写す。彼の留守中偶然パソコンを開けたドラは小説を読み感動して、夫のものだと疑いもせず出版社の上司にみせるよう説得する。「窓辺の涙」は大ヒットし、ローリーはたちまち新人作家となった。パーティーの帰り成功にはなやぐローリーをじっとみつめるみすぼらしい老人がいた▼老人は青年のころ軍務を除隊しパリに住んだ。美しい恋人セリアがいたからだ。ふたりは結婚し娘に恵まれ幸せだった。しかしふとした風邪で娘が死に心がうつろになった妻に夫の慰めはとどかず、彼は帰国を決意する。しかしどうしても妻を忘れられず再び渡仏。自分の心のうちを、寝食を忘れてかいた「窓辺の涙」ができあがったが、その原稿をいれたかばんが汽車の網棚に置かれたままだったのにどっちも気付かず、この紛失事件が原因でふたりのあいだにいさかいが絶えなくなり、別れた。老人はそんな自分の過去をローリーに語った。ローリーは妻に事実を告げる。妻は軽率なローリーを責め、出版の代理人は老人に口封じの金を払って丸めこめという。ローリーは老人を訪ね事実を公表するというが老人は止める。老人の話には続きがあった。妻と別れた老人はアメリカで妻をみかけた。彼はバスの窓辺に、妻はバスストップにいた。夫と幼い娘といっしょだった。ふたりは目があい、かすかに手を振った。老人は「幸福そうな彼女を見て、彼女を捨てた罪悪感から少し気が楽になった。過去にとらわれず歩き出せた」という。ローリーは「書くことをやめたことに、才能を捨てたことに後悔はないか」。老人は「いいや」と答える。「やれることはやった。もてる力を発揮した。それで充分だ。わたしの失敗は彼女より言葉を愛したことだ。彼女こそ創作の源泉だったのに。たのみがある…去れ。ふりむかず二度とくるな。人は自分が選んだ人生を生きるしかない。だれも助けてくれん。行け」…「やっとローリーはなにをなすべきかわかった。生きるために。〈窓辺の涙〉ローリー・ジャンセン」で朗読は終わる▼講演会に出席していた女子大生ダニエラがクレイに「ローリーのその後」を問いただし、クレイの若き日がローリーであり、従って「ザ・ワーズ」は盗作であることをほのめかす。もちろんクレイが口を割るはずもないが正解でしょう。つまり関係者全員口をぬぐって、過去の盗作を秘密裏に葬ったってことね。ローリー、もう功成り名遂げたクレイといってもいいが、彼はやっぱり盗作の負い目を背負って生きていく自分の一生がわかっていた、さりとて今さら白状できない。盗作された老人も亡くなってしまったことだし、あとは口をぬぐって知らぬ顔を通すしかない。でもクレイは離婚したみたいだし、結局他人の一部を盗んだ人生ってうまくいかなかったのね。どうにかこうにか落とし前をつけようと悩んだ結果、クレイのとった方法が「小説という虚構による真実の暴露」だった。彼は盗作を劇中劇にすることで、自分の盗作を「お話」にしてしまったのだ。完成した「ザ・ワーズ」はいうなればクレイの懺悔だった▼筋書きとしては単純なのに幾層にも複雑に見えるのは、ジェレミー・アイアンズのせいですな。彼のシーンになるとこの映画、退屈しなくなるのよ。本作に限らない、どの映画でも彼がスクリーンに姿を現すと、すべての状況がとんでもなく意味ありげになってしまうのだ。本作では息もたえだえに哀れな過去を打ち明けるかと思えば、おれなんかどうせ死んだも同然の男、お前は残された可能性を信じて生きていくのだと、勇気をコブする人生の先達に変身、それが大げさでも誇張でもなく、彼のぼそぼそとした語りが、ありえないような深淵な哲学に触れた思いにさせる。実際そうなのだけど、逆の人もいるからね。シリアスな問題提議しているのだけど、あの俳優がしゃべるとなんでこう軽くなるのかという人がね。ジェレミーって、いくつになってもほとほとダンディだと思うわ。そうそ。彼の青年時代のベン・バーンズ。とっくにお気づきでしょうが「ナルニア国物語2 カスピアン王子の角笛」でカスピアン王子です。妻役のノラ・アルネゼデール。きれいな人ですね。25歳。フランス国籍。ゲランのミューズになり最新作はアレクサンドル・アジャ脚本の「マニアック」。こう聞くと見たくならない?

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