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特集「B級映画に愛をこめて」

2015年6月28日

特集「B級映画に愛を込めて」かぞくモメはじめました(2012年 コメディ映画)

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監督 アンディ・フックマン
出演 ビリー・クリスタル/ベット・ミドラー/マリサ・トメイ

きめ細かい家庭劇

「モメはじめました」というほどモメないのだけど、ビリー・クリスタルやベット・ミドラーの重量感のある「ボケ」と、子供たちの「突っ込み」で保たせる映画ですね。きめ細かくできています。原題は「保護者の指導」。主人公アーティ(ビリー・クリスタル)は野球の実況アナウンサー。放送スタイルが古臭い、会社としては若いファンを獲得したいという理由で突如解雇される。帰宅して妻ダイアン(ベット・ミドラー)に「クビだ」と一言。妻は「あなたは最高よ、わからないやつがアホなのよ」と力強い夫の味方だ。そこへ娘のアリス(マリサ・トメイ)から「1週間夫婦で家を留守にするから、こっちにきて子どもたちの世話をしてほしい」と電話が。ひとつも自分になつかなかった娘と、長年折り合いが悪かったアーティは「行きたくない」と拒否するが、孫に会いたいダイアンは二つ返事で引受け、アーティもしぶしぶ車で出発する▼娘の夫というのがハイテクプログラムの技術者である。彼がコンペに出展した新製品が表彰される、末っ子が産まれてから夫婦だけで休みを過ごしたことがない、水入らずの旅行を兼ねて表彰式に出席するのが夫婦の計画だった。到着した娘の家は自慢のハイテクハウス。玄関を入れば「お帰り」というコンピュータにアーティは「うるさい!」と癇癪を起こす。彼は「フェイスブック?」「ツイッター?」「アプリ?」すべて通じないアナログ男である。孫たちといえば長女のハーバー(12)。バイオリニストめざし厳しいレッスンに明け暮れる。ジュリアード音楽院に進学しベルリン・フィルハーモニーで演奏するのが夢だ。ダイアンおばあちゃんは毎日こわい顔をして練習する孫娘にボーイフレンドをさがせとか、もっと遊ばないといい演奏はできないとか、アリスはダイアンに預けて娘が堕落しないか心配で仕方ない、息子たちもあのいい加減な祖父に毒されたらどうしよう。今日まで続けてきた英才教育が木っ端微塵である。アリスは空港からUターン。出発したばかりの自宅に戻ってしまう。アリスの教育はこうだ。「そんなことしてはいかん!」とおじいちゃんが怒鳴る。すぐさまアリスが「子供たちのやることを否定しないで。ダメというのではなく、こうしたらどうだと提案して」▼長男ターナー(8)は学校で吃音をからかわれ、いじめられている。でも子供野球ではエースだ。おじいちゃんはターナーが三振をとるたびにとびあがって喜ぶ。周囲の保護者は冷たい目。試合が終わり「ボロ勝ちだ。よくやった」でも審判は引き分けを宣する。「ばかなことを言うな」おじいちゃんは食ってかかるが「子供たちの世界で勝者と敗者は作りません。どんな試合も引き分けです」おじいちゃんは口アングリ。いつもターナーをいじめているクラスメートがいる。おじいちゃんは「お前こそクソだ、そう言え」と教える。ある日ターナーは殴られて目のふちを黒くして帰ってきた。おじいちゃんは「やり返したか」と聞き、やったと孫が答えると「つぎはもっと痛い目にあわせてやれ」。アリスは悪い予感が日々現実のものになっていることを知る▼末っ子のバーカー(5)は、架空のともだちカンガルーのカールを作っていつも話しかけている。パパもママもいっしょになって話を合わせる。おじいちゃんとおばあちゃんにすれば、現実生活に充実感がないからカンガルーで欠損感を代替させているのである。ふらふらになるまで体を使って遊ばせるべきだ。親のやることにケチばかりつける娘におばあちゃんは、お前こそまちがっているとおごそかに宣告する。「留守中わたしたちに任せるといいながらひとつも任せていない」娘は「パパはわたしに冷たかった」と大昔の心の傷を打ち明ける。仕事が忙しくてかまってやれなかったのは事実だ「おれが悪かった」とパパは謝罪する。いまは家族のための充分な時間がある、心配しないで亭主とふたりで骨休めしろ…やさしい言葉に娘は今度こそ空港へ。アリスのネックになっていたのは教育方針の違いではなく、自分が親から愛されていなかったというわだかまりだったのですね▼長女のコンテストの日。両親とおじいちゃん、おばあちゃん、弟たち、家族揃って応援にきた。バーカーのいたずらでおじいちゃんの顔は夜光塗料が塗られ、暗くなった会場では不気味な「オペラ座の怪人」。フルオーケストラをバックにした姉の演奏中、バーカーはふざけまわってとうとう演奏は中止。おじいちゃんは激怒し、孫をひっぱたき「いけないことはいけないと教えるべきだ。甘やかすからつけあがるのだ」会場いっぱいにわめく。するとだれかがどこからか「賛成だ」「そうだ、そのとおりだ」「いいぞ」拍手が湧き起こった。ステージのはしからターナーが現れた。吃音でなにもしゃべれないといじわるそうにみている級友。ターナーは1951年のナ・リーグのプレーオフ実況をひとこともどもらず、力強く完コピする。いきいきと目の前によみがえる伝説の名勝負に場内絶賛の嵐。子供のころ自分も吃音だったアーティが、プレーオフの実況を聞いたことでアナウンサーをめざし、吃音を克服した経験を孫に話していました。ターナーはそれを深く心に刻み、自分もやってのけたのです。家族はだきあって涙、涙▼カンガルーのカールは制止をきかず道にとびだし、車にはねられ事故死。しかつめらしくカールの葬式に参列したおじいちゃん、おばあちゃんはこれで孫の現実回帰が叶うとホッ。家族映画の王道みたいな映画です。それにしても本作に登場する中華料理店のマスターは、母が日本人、父が中国人、子供が韓国人で本人はパン・アジア人を自称する。はてしなくゆるいアジア理解には失笑するほかない。

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