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特集「神も仏もない映画」

2015年7月5日

特集「神も仏もない映画」悪い種子(1957年 サスペンス映画)

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監督 マーヴィン・ルロイ
出演 ナンシー・ケリー/パティ・マコーマック/アイリーン・ヘッカート

殺人犯は8歳の女子

8歳の少女が連続殺人犯。原因は祖母から受け継いだサイコパスの遺伝であり、それがわかった母親は葛藤し、娘を殺し自殺する、というのが話の骨子。母親クリスティーンのナンシー・ケリー、娘のローダ(パティ・マコーマック)いずれもアカデミー賞主演・助演賞候補となりました。犯罪の低年齢化が顕著な今でもおぞましいテーマを、1957年にとりあげたのが衝撃でした。天使のようなローダが大人にだきついて怖がる、おじさん、おばさんたちは「おお、おお」と抱いてくれる。ローラの悪賢く、邪悪な顔がアップになる。パティ・マコーマックは13歳で8歳の子を演じたが、それにしても小面憎い大人びた顔でした。物語はほぼローダの屋敷の室内で終始します。父ケネスは陸軍大佐、母はやさしく知的な美人。近所のモニカがローダを猫可愛がりするのにママは迷惑気味。モニカは脳に障害がある庭番のリロイを、冷たくぞんざいに扱う。ローダは人をわけへだてしないママではなく、いじわるなモニカのほうに共鳴している▼パパが軍務により4週間の出張となった。送り出す朝ママは理由のない不安を夫に打ち明け、実父に一度立ち寄ってくれるよう伝言を頼む。社交好きのモニカが昼食会を開き、招待客の作家でもある犯罪心理学者が「生来善悪の観念もなく、罪や自責の念のない犯罪者がいる」と話題にし、犯罪史上に残る女性として連続毒殺犯、ベシー・デンカーをあげる。美人で頭がよく冷酷。同じ毒を二度と使わず証拠をのこさず、逮捕しても有罪にできなかった。10歳で犯罪の兆しを見せ容疑がかかるたびにこつ然と消えた。陪審員たちは彼女の姿形や風貌がどうしても殺人者にみえないと言った。女の子をひとり産んだはずだがどうなったかは謎。母クリスティーンは父親に「自分が養子ではないかという不安が消えないの。空想じゃないわ」と父親を問い詰め、拾った子であることを告白させ、2歳のときの記憶が蘇り自分が「インゴールド・デンカー」と呼ばれていたことを思い出す。自分こそ犯罪史上に残る毒殺魔デンカーの娘であり、ローダはその孫なのだ▼ママは担任の先生に尋ねたことがある。「うちの子がいつもあんなに行儀がいいのは、子供らしい素直さに欠けると思えるのですが」やがて大胆かつ狡猾な美少女の犯罪がつぎつぎ表に出てくる。書き取りの試験で、自分よりいい成績をとりメダルをもらった同級生の男の子クロードを桟橋から湖に突き落とし、這い上がろうとする男子のひたいを何度も鋲を打った靴で殴り水に沈める。自分が死んだら金魚の置物をあげると言った老婦人を、階段から突き落として死なせる。焼却炉に靴を棄てるのを見たという庭番を焼き殺す。あげくモニカまで殺しの予定に組み込む。娘の「種子」を知った母親は子供らしい無邪気さを示さず、他人の災難に酷薄な態度をとる娘に、おののきながらも、愛する我が子であることを否めない。悪いのはこの子じゃない、自分のせいだとおのれ自身を責めてしまう。出張先にいる夫にも本当のことがいえない。ましておしゃべりで、でしゃばりのモニカ夫人に打ち明けるなど論外である▼ここに、息子の死が事故ではなく、ローダという娘が関係していると、直感している母親デイグル夫人が登場する。扮するのはアイリーン・ヘッカート。いい女優ですよ~。このとき37歳。一人息子を失った母、それも晩婚だった夫婦には次の子供は望めず「あの子が生きがいだった」母親を演じます。若くもなくいわゆる美人ではありませんが、彼女が現れるだけでスクリーンの空気が濃くなる。この女優はだれだ、と聞きたくなる存在です。デイグル夫人は悲しみをまぎらわすため酒に溺れ、酔った勢いでクリスティーンを訪ね、あなたはこんなお屋敷に住む上流家庭の奥さん、わたしはしがない貧乏な主婦、でも息子がいて幸福だった…あの子と最後に話したのはお宅のお嬢ちゃんよ、話をさせてと訴えます。夫は妻の気持ちを理解しているものの、この酔態を人がどう思うかもわかっている、抱くようにして家に連れ帰ります。彼女は二度クリスティーンの家にやってくる。最初は「気の毒な人」としか思わなかったが、娘の「種子」を知ったクリスティーンは、デイグル夫人が二度目に訪問したとき、彼女の社交でない本物の悲しみに、自分のつらい葛藤を共有できるのはこの人ではないかと思う。美少女殺人鬼もさることながら、彼女を巡る主演・助演女優のからみが映画を厚くしています▼それにしてもローダのひねくれた早熟顔はおみごとね。監督はよくこんないやな感じを出させるのに成功したと思うわ。クリスティーンは我が子と無理心中を図りますがローダは生き残る。母親だけ死ぬはずだったけど、それではあまりにひどいということで母親は命をとりとめ、逆に娘は雷に打たれて死ぬ。妥協した点で映画は甘くなりましたが、とにもかくにもドン・ジュアン女子は奮戦しました。

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