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特集「神も仏もない映画」

2015年7月6日

特集「神も仏もない映画」オーメン(1976年 ホラー映画)

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監督 リチャード・ドナー
出演 グレゴリー・ペック/リー・レミック/ハーヴェイ・スティーブンス

「666」

死産だった男の子の代わりに、同日同時刻病院で生まれた男児を養子にした駐英大使夫妻。ロバート・ソーン(グレゴリー・ペック)とキャスリーン(リー・レミック)だ。男の子の名前はダミアン(ハーヴェイ・スティーブンス)。以来まがまがしい事件が立て続けに起こる。神父は大使に「悪魔の子があなたのすべてを奪う。あの子の母親は山犬だ。キリストの救いを受け入れよ」と予言する。乳母は窓から飛び降り首を吊って死んだ。代わりに来た乳母ベイロックには、家来みたいな黒犬がついてきた。彼女は「恐れることはない。ダミアン、あなたを守りに来た」とつぶやく。ダミアンを動物園に連れていくとキリンは逃げ出すし、マントヒヒの群れはパニックに陥り車を襲撃してくる。カメラマンのジェニングスは、自分が写した死んだ人物たちには必ず、矢のような印が首についていることに気がつく▼「オーメン」と「エクソシスト」は70年代を代表するオカルト・ホラーの代表作です。「山犬が母親だって。バカ言うな」と普通思うでしょ。それを、つぎつぎ生じる不審死にからめて「どうして、どうして?」と疑惑と恐怖にからめていき、とうとう「666」がダミアンの頭に刻印されている出生の秘密にゆきつく。「6」は聖書では悪魔の数字。その3連番は「悪魔と反キリストとにせ預言者」のことだというのだ。だからどうなのだ、と思うのですが、キリスト教文化圏の人にとっては聖書とか、なかんずく「黙示録」となるとミステリーの源泉として想像力をかきたてられるらしいのね。大使夫人まで自殺した。だれかが自殺するか、事故死するときは黒犬が「死の使者」として姿を現す。このワンちゃんたち、なんの変哲もない中型の雑種みたいで、大して賢そうに映らず、悪魔のお守役には役不足にみえるところがソンしているわ▼チェルベットはローマから北に50キロ、エトルリア時代の廃墟にある墓地で、ダミアンの母親の墓を掘り起こし犬の骨を発掘した大使は隣の墓もあばき、赤ん坊の骨を見つける。つまり大使たちの男の子は産まれたとたん悪魔に殺され、悪魔族は代わりにダミアンを送り込み、邪魔者(大使や母親)を殺していってコネと財産を受け継ぎ、ますます力をつけて悪魔の世を出現させる、とうプランらしい。我が子、というより悪魔の子を殺そうとした大使は児童虐待並びに殺害未遂の現行犯として射殺される。両親の葬儀に参列する、孤児となったダミアンの手をつなぐのはなんと米国大統領夫妻である。ニヤッとほくそえむダミアンをアップにして映画はエンドです。意味深なヨハネ黙示録が字幕に出ます「知恵はここにあり/心ある者は獣の数字を教える/数字は人の数にして666なり」(第13章第18節)…と言われたってなんのことか実はよくわからんのだけど、本作は制作費の21倍、6000万ドルの興収をあげ「ダミアン4」まで作られる大ヒットになりました▼でもね、本音をいうとこの映画のいちばんの意外性はやっぱりグレゴリー・ペックよ。正義と良識と知性の体現者である彼は「アラバマ物語」の弁護士でオスカーを受賞しました。それが60歳にしてなんでこの畑違いの映画に出たのか、未だに理由は知りませんが、彼はそれまでの自分をガラッと変えた本作がよほど気にいったとみえ、「ブラジルから来た少年」では、まあなんと、ヒトラーのクローンを再生させようとする狂った科学者ヨゼフ・メンゲルを演じました。グレゴリー・ペックは、オーソン・ウェルズが「大統領になれ」とすすめたほどの、アメリカ男性の範たる存在です。ジャック・ニコルソンとか、ジョン・マルコヴィッチ、ゲイリー・オールドマンやダニエル・デイ・ルイスという、現れただけで不気味になる男ではありません。もしかして、いちばんさきに悪魔に魅入られ、その気になったのは、グレゴリー・ペックだったのかも(笑)。

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