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特集「ナンセンスは素敵だ」

2015年7月13日

特集「ナンセンスは素敵だ2」若妻恐怖の体験学習(1972年 ホラー映画)

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監督 ジミー・サンダース
出演 ジュディ・ギーソン/ピーター・カッシング

この映画マトモです!

「名門」と「名優」が枕詞につくハマー・フィルム・プロダクションとピーター・カッシングは本シリーズの「ホラー・エキスプレス」に既出ですので、同じ系列の本作も紹介します。「若妻恐怖の体験学習」です。原題は「夜の恐怖」。ごくまっとうな正統派タイトルを「若妻」とか「体験」とかにしたのは、1971年にヒットした「団地妻」とそれに続く一連の「昼メロ」の乗りですね。まともな映画がエログロ扱いされてぞっとします。ともあれ「名門」と「名優」の名に恥じない、B級のA級という言い方があるとすれば本作なんかがそう。登場人物が少なくてストーリーはよくあるお膳立て、出演する俳優も地味目で粗筋もほぼ見当がつく、ほんならいったいなにが面白い、といいたくなるところをグググと強引なまでに引きこんでいく、奇抜な粗筋や亡霊や怪物に頼らず、映画本来の面白さでひっぱっていく、ハマーの伝統がよく出ています▼ピーター・カッシングはロンドンから離れた田舎にある男子寄宿学校の校長マイケルです。貴族的な細面に銀髪。すらりとした姿に黒いケープをまとい物静かに登場する。知性と教養が服を着ているようなものです。彼の学校の教師であるロバートが結婚することになり、新妻ペギーを連れて学校の敷地内にある住居に引っ越してくることになった。ペギーはロンドンで下宿していた。下宿のおばさんもペギーを好ましく思っていたから、きっといい奥さんになるわといいながらも別れを惜しむ。出立する夜、ペギーは黒い手袋をはめた義手の男に背後から襲われ失神した。気が付くとベッドに寝かされたペギーをおばさんと医師が心配げに覗きこんでいる。警察に届けてほしいと頼むペギーになぜかおばさんはためらう。医師がわけをきくとペギーにはノイローゼによる入院経験があった。新居に移ったペギーは広い校舎を見学した。きちんと並んだ机、食堂にはすわりさえすればいいまでに整った正餐のテーブル。磨きあげたナイフ、フォーク、グラスが輝いている。現れたマイケル校長はおだやかな物腰で、礼儀正しくペギーを案内し、ロバートとの出会いなどをたずねた。ただ出会いから4カ月で結婚を決めた、とペギーが答えると「4カ月、それはまた早かったですな」とつぶやいた▼校舎のある敷地は森に続いている。ペギーとロバートは森でマイケルの妻モリーに出会う。モリーは活発な狩りの出で立ちで、野うさぎを仕留めたばかりだった。ペギーはモリーになじみにくいものを感じる。ロバートがマイケルの代理でロンドンに出張することになった。胸騒ぎがしたペギーは早く帰ってくれるよう頼む。そんな心配ならいっしょにくるといい、もとの下宿のおばさんのところで泊めてもらえばいいとロバートは言ってくれたが、下宿で襲われた恐怖があるペギーは、やはり学校にとどまることにする。念のため猟銃を手元においておくように言ってロバートはロンドンへ。その夜。不思議な物音に不安になったペギーは銃を手に寝室を出た▼暗い長い廊下。ぎしぎしきしむ床。窓際の揺らぐカーテン。黒い森の梢。ヒロインの顔の半分が濃い影におおわれるホラー独特のライティング。じ~と時間をかけて廊下を行くペギー。おい、まだ歩いてンのかと思うくらいどこまでもゆっくり、ゆっくり歩く。それが退屈でないからたいしたものである。やっと出た! 黒い手袋の義手が! 口をおおわれたペギーが必死に手をふりはなすと、背後にいたのはマイケル校長だった。悲鳴とともにペギーは銃を撃つ。校長は崩れ落ちる。逃げようとしたペギーの足を、でも校長はしっかりつかむのだ。え、え~。校長先生は不死身なのかよ~▼翌日ロバートが予定通りロンドンから帰る。ペギーはソファに横になっていて、わけをきいたロバートは「それで、それで」といきさつを聞きたがるが、なぜかペギーは話したがらない。ヒロインのジュディ・ギーソンがなかなかよく頑張っています。台詞も多くなく、特に後半ほとんどしゃべらない演技で、ただみつめるシーンが多いのですが、あどけない瞳に猜疑と不信を滲ませ健闘です。ところが「若妻の体験学習」なんて邦題をつけるから、ヒロインは体験するだけで死んじゃうわけではないとまるわかりですね。こういうところ、すごく無神経だと思います。ピーター・カッシングもペギーに撃たれたあと声だけの出演になります。観客が知りたいのは「黒い義手の男はだれか」「なぜこの寄宿舎には生徒がいないのか」「教師はロバートだけなのか」「なぜペギーはロンドンに続いて引越し先まで狙われるのか」「ロバートはなぜペギーを下宿に泊まらせようとしたのか、なぜ同じホテルではいけなかったのか」「マイケル校長はなぜ義手になったのか」「校長と校長夫人が一度も顔をあわさないのはなぜか」。これらの疑問にカッシングが回答を与えていくのが独白シーンです。エンディングは学校を訪れた警官が「マイケル氏から電話があった、ご在宅ですか」と聞く。ペギーは「ええ、期末ですから」と答えると警官は笑い「何年も前に閉校になり学校も生徒もいませんが」と言う。ペギーは背を向けすう~と屋敷の中に消え、庭の片隅に首をつったロバートがぶらさがっている。モリー? ロバートが射殺しちゃうのです。しかしま、なんといってもジュディ・ギーソンの力演とピーター・カッシングの耽美と怪奇がこの映画の肝ですね。

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