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特集「ザ・クラシックス」

2015年7月21日

特集「ザ・クラシックス2」少女首狩事件(2000年 事実に基づく映画)

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監督 フレデリック・シェンデルフェール
出演 シャルル・ベルリング/アンドレ・デュソリエ

力強い作り込み

「スウィッチ」「裏切りの闇で眠れ」の、フレデリック・シェンデルフェール監督が面白かったので、本作もアップします。おどろおどろしいのは邦題だけで、本作は驚くほどまともな映画です。原題は「犯罪の風景」という地味なタイトル。それなのにDVDの猟奇的なパッケージ、なんとかしてほしかったわね。内容と悪趣味な写真は全然関係ないです。でもこの監督の細密な作り込みって、なんでこう「拷問」とか「検死」シーンに発揮されるの(笑)。「裏切りの闇」でも、あの拷問じゃR18は無理ないわ。本作でいうなら少女の遺体が検死台にあるシーン。首と手首が切断されている。カメラは青黒く変色した肌や陰毛を、次第に俯瞰して開腹した腹部からドボドボと血の滴る内臓を掬い上げて除去したあと、正中に沿って開胸し胸骨を切って肋骨を左右に寄せる。心臓も肺も胃も腸も摘出した胸腔と腹腔は暗黒空間だ。このリアルなシーンだけでも見応えあります▼担当した刑事はファビアン(シャルル・ベルリング)とゴメス(アンドレ・デュソリエ)だ。捜査は難航し刑事たちに疲れが見え始める。ゴメスは仕事のあとバーに行く。バーテンは黙ってタンブラーを置きいつものウィスキーをダブルで注ぐ。ゴメスは口を湿すように一口。あと一気に流しこむ。彼の家族は妻と大学進学のきまった娘。ふたりが朝食のテーブルについているところへゴメスは降りてくる。立ったまま熱いコーヒーを飲み、妻にお義理のようなキスをしてそそくさと出て行く。妻は無表情だ。ファビアンの妻は臨月が近い。夫は妻にやさしいが、夫は夜中にでも出て行く。硬直する捜査にぎくしゃくする家庭。刑事たちは精神的にも肉体的にも追い込まれていく。酒を飲み娼婦の部屋に行き、担当課が証拠品として没収したエロビデをみて、身重の妻に後ろからかかる。ゴメスはある夜ファビアンの家で夕食をいっしょに食べ、酒を飲み、発作で倒れそのまま死んだ▼ブロンドの少女の失踪が事件のはじまりだった。友達と待ち合わせの場所に少女はいなかった。落ちていた旅行パンフレッタに血がついていた。事件にまきこまれたとみた警察は捜査に着手。わずかな手がかりから手がかりへ、地を這う捜査、聞き込み、資料を漁り関連事件をつなぐ。犯人はどこから少女の日常の行動を知ったのか。ファビアンは少女の家が森の一画から丸見えになることに気づく。警察犬を放ち少女の匂いを追跡した。河原まできてぐるぐると、あたりの匂いを嗅ぎまわる犬たちをねぎらい、捜査班は川底を浚った。ひきあげられるいくつもの黒いビニール袋からは首が出てくる。全部で7つ。すべて金髪だった。ガセネタにふりまわされながらも捜査陣はある情報を入手する。不動産業者からの苦情だった。建設現場が発掘調査のため保存になり工事が滞り、そのまま中断した。悪ガキらの巣窟となって困っている、工事再開したいがなんとかしてくれ。ファビアンらは現場に行った。からっぽの部屋の壁には一定の高さに穴が空いている。鑑識のルミノール反応には壁といわず床といわず、およそ部屋中に飛び散った血痕が浮かんだ▼鑑識は死体の解剖によって犯人と思われる人物に犬の毛が付着していることを報告し、体格としては上背のある大柄な男を推定した。ファビアンはパリの獣医をしらみつぶしに当たる。そこの聞き込みから男はスポーツジムに通っている可能性がある。捜査範囲は徐々に絞られてきた。動物病院の女性獣医のひとりが、男がもっていたバッグのブランドを覚えていた。ファビアンは彼女を車に同乗させジムの出入口を張り込んだ。男は来なかったが「あのバッグといっしょよ」そう彼女が教えた中年女性は子供連れだった。ファビアンは獣医を帰し、女性のあとを追い、家をつきとめた▼この映画は犯人探しでも謎解きでもありません。犯人は妻と子を道連れにして自殺します。17人を殺した異常連続殺人犯の日常が、スポーツジムで汗を流し、妻と小さな子どもがいて犬を飼い、庭のあるさっぱりした家に住んでいる。そのギャップが犯人の実像だった。犯人のあっけない自殺で終わる結末には賛否両論がありましたが、事実そうだったのだから仕方ないよね。それより最後にいたるプロセスを力強く引っ張っていく監督術を評価するほうがいいと思います。

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