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特集「ザ・クラシックス」

2015年7月24日

特集「ザ・クラシックス2」コンドル(1975年 アクション映画)

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監督 シドニー・ポラック

永遠の青年

1970年代のロバート・レッドフォードは乗りに乗っている。その10年の間の主演作「大いなる勇者」「追憶」「コンドル」「出逢い」がシドニー・ポラック監督による。このあと「愛と哀しみの果て」「ハバナ」まで、彼の30歳から54歳に至るまで、ポラック監督との仕事が続く。気が合うのだ。だからというわけではないが、レッドフォードのキザぶりてんこ盛りの映画が多い。悪口ではなく、そこまでキャラを知り尽くした監督と組んだ役者の幸運を思うべきだ。とくに女をぞっとさせるセリフをしゃらしゃらとレッドフォードに言わせる。「ハバナ」ではこうだった。女「わたしを待っていた?」男「生まれてからずっと」だと~▼本作ももちろん例外ではない。レッドフォードの年齢不問の少年っぽさ、黒いセーターの襟元にのぞく柄シャツにネクタイにGパン、ひたいに無造作にはらはらと垂れる長めの前髪、大学院で文学を専攻する学生みたい。彼が小型オートバイで雨の中を職場に向かってくる、遅刻である、秀才なのに教師の目を盗んでいたずらをする「いたずらっ子もどき」である、上司も「またか」という程度で目こぼしする。彼は職場で好かれ、仕事ができ堅物ではなくハンサムである。ブロンドである。(チェッ)と舌打ちしないほうがどうかしているのが、ポラックの描く静かなヒーロー、ロバート・レッドフォードなのだ。彼の仕事は「アメリカ文学史協会」と看板をだしたCIA組織の下部組織で、8人のスタッフとともに世界中で発行された小説を読むこと。ミステリー、サスペンス、スパイものが主で、作品に書かれている暗号をコンピュータに入力し、CIAの計画や作戦と照らしあわせて機密漏れやアイデアを探すのだ。今から思えばCIAの機密が作家に漏れるなんて、ばかばかしいとしか言いようがないが、当時はそんな状況を映画に設定しても違和感はなかったのだろう。主人公ターナー(ロバート・レッドフォード)は、その日スタッフの昼食の買い出し係に当たっていた▼ターナーが弁当を買って帰るとスタッフ全員が射殺されていた。殺し屋はジョベア(マックス・フォン・シドー)と呼ばれる一匹狼のプロである。ターナーは本部に保護を求めるが助けにやってきた本部のスタッフもターナーを殺そうとした。急場を脱したターナーはバッタリ出会った写真家のキャシー(フェイ・ダナウェイ)をピストルで脅し、彼女のアパートに身を隠す。フェイ・ダナウェイはこのとき34歳。「俺たちに明日はない」のボニーがあまり鮮烈だったせいか、直後の「華麗なる賭け」は気が抜けていました。ところが「チャイナタウン」で息を吹き返します。監督がロマン・ポランスキー、共演がジャック・ニコルソン。ニコルソンの毒気に負けまいとしたら、そらちょっと気合が要るわな。「コンドル」はその翌年なのですけどね、なんだかまたホワ~ンとしています。共演する男優によってそうなっちゃうのですかね▼キャシーの部屋に飾ってある写真を見たターナーは「葉のない木々、人のいない通り、誰も腰掛けていないベンチ、その向こうに広がる野、車の走っていない高速道路、孤独だ」女はぐっと来る。自分のさびしさをわかってくれたと思うのね。ターナーは拳銃を片手に女をベッドに押さえつけ、自分も横たわり「俺は疲れている。ここにほんの数時間こうしていたい。そうしたら出て行くから」女ってどうしてこう「疲れた男」に弱いのかしらね。疲れるのは女も男も変わらないのに(仕事する女なんかもっと疲れるわよ)男の「疲れ」にだけ、戦士の休息のようなドラマティックな要素を付加する、それにホイホイ甘んじて似合ってしまうのがロバート・レッドフォードの、よく言えば持ち味で、悪く言えば限界か。ラブシーンにしてもサラサラして、鳥がくちばしでつつきあっているようなものよ。キャシーはバーモントに恋人がいてそこへ戻らねばならぬ。ターナーは「ワシントンまで乗せて行ってくれる?」と頼む。虫がよすぎると思うが、さすがにキャシーも「できないわ」と断り、別れ際にこう言う。「でもあなたには素敵なところがたくさんある。いい目をしている。やさしくはないけど正直で、まっすぐに見ている。何事も逃さない、そんな目をしている」…どんな目かわからんが「やさしくはないけど」と言うのがミソです。仮に「やさしくて正直でまっすぐに見ている」というフレーズに置き換えると、そんな目だとあとに続くのは「でもすべて見逃してしまう、そんな目をしている」になりませんか。なんとなくバカっぽくきこえるでしょ▼事件の裏にCIAの一部が極秘裏に石油の利権にからんでおり、文学史協会が本部に提出したレポートに、偶然利権の策謀を示唆する箇所があった、それがスタッフ全員の暗殺になった、というのが真相です。ヨーロピアン・テイストを滲ませるクールな殺し屋、マックス・フォン・シドーが渋かったですね。

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