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特集「ザ・クラシックス」

2015年7月26日

特集「ザ・クラシックス2」のら猫の日記(1996年 家族映画)

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監督 リサ・クルーガー
出演 スカーレット・ヨハンソン/アレクサ・パラディノ/メアリー・ケイ・プレス

生きやすさ見出す女たち

監督はとんでもないことを映画にしているのよね。親のいない10代の娘ふたり、姉は16歳で妹は12歳。妹のマニー(スカーレット・ヨハンソン)が語るには、姉ロー(アレクサ・パラディノ)に養親の元から「誘拐」され、母親が唯一残したボロ車に乗って旅に出た。食料品はスーパーで万引き、寝泊まりはモデルハウスか、長期留守にしている空き家、もしくは別荘。ガソリンはローが男の子と仲良くしてわけてもらう。早く言えばローはひとりではさびしいからマニーを乗せてさすらいのプータローをやるのです。盗みと家宅侵入に、ローは売春にマニーは義務教育放棄である。あんなひどい家の養子でいるとダメになるからとローは言うが、自分のやっていることのほうがよっぽどひどいのだ▼ヨハンソンはこのとき11歳だった。3歳から演技に興味をもち、8歳でアクターズ・スタジオ幼年部に入った。子役出身の女優というと、エリザベス・テイラーやジョディ・フォスターやミーシャ・バートン、クリステン・スチュアート、それにヘザー・グラハムらがいる。リズなんか、出現した時はすでに完成品みたいな「女優の顔」をしていた。いちばんこどもコドモしていたのは、知る限りフォスターで、コロコロした幼顔はアンパンみたいだった。ヨハンソンは体つきこそ子供だが、落ち着き払ったセリフまわしと表情に、ひとつも無理を感じさせない、ひとかどの女優ぶりである。妹は姉が太ってきたと注意する。ダイエットなんかすぐだと姉は聞き流すがお腹はますますせりだしてきた。妹は姉の大きなお腹に耳をあて「音が聞こえる」姉「何か動いている」まったくもう、ローは妊娠したのである。今まで姉妹ふたり盗みも家宅侵入も力をあわせてやってきたが、こればかりは想像もつかない。助けがいる。ふたりはマタニティ・ショップで妊婦にアドバイスする、店員のエレーン(メアリー・ケイ・プレス)の自信ある対応をみて、あの人なら大丈夫と安心し、彼女を誘拐する▼エレーンこそとんだ迷惑である。家出した小娘ふたり、しかもひとりは妊婦で臨月。お産を手伝えというのだ。エレーンは逃げられないよう小幅で歩ける長さのある鎖で両足をつながれ、部屋の中をよちよちと行ったり来たりするしかない。休暇をとるからしばらく店を休むとハガキを書けとローは命令する。エレーンはおとなしく書くが「わたしは休暇を取らないの。みな只事でないと思うわ」とだけ言う。マニーは姉より冷静だ。エレーンのいうことがたぶん正しい、うそをつくような女性ではないと感じ取る。冷蔵庫には缶詰がぎっしり(その家は住人が長旅に出ている山荘だった)、お腹がすくとふたりは缶切りであけた缶詰の中身を調理もせず食べるのだ。「人質にだってまともな食事をする権利はあるわ」エレーンはありあわせの材料を使って料理し、きれいに皿に盛り、ナイフとフォークを使わせる。「おいしい」とマニーが思わずいうと「食べ物でつられるな」とローが怒る。マニーはエレーヌを信頼できる女性だと思う。エレーンは打ち明け話などしないが身の上は孤独らしい。孤児である少女ふたりに、家族のいない中年の女は世間で必要な最小限度の常識をそれとなく教えてやりながら、三人は不思議な同居になじんでいく▼山荘の主が急に帰ってきた。みつかった姉妹の危機を救ったのはエレーヌで、彼女は男を気絶させて納屋に監禁した。男は脱走する。それをみたローはエレーヌが男をかくまっていたように思い、マニーだけを連れ山中にエレーヌを置き去りにして逃走しようとするが、とうとう陣痛である。12歳のマニーが運転してエレーヌをさがしに引き返すのだ。山道を歩いている彼女をみつけたが、エレーヌはローの無礼には我慢ならぬ、謝罪しないかぎりどんな手助けもしないとキッパリ。マニーが姉を謝らせ、エレーヌも気がすみ、河原で湯をわかし原始時代を彷彿とさせるお産である。エレーヌがとりあげたのは元気な男の子だった▼エレーヌが赤ん坊を抱き、マニーとローが並んで川を上っていく4人の「家族」の後ろ姿。たいへんではありませんか。どうするのですか、監督。住居は、医療は、仕事は、教育は…ノラ猫のままではすまない問題がまちかまえている。しかし監督の視点は徹頭徹尾「人生とは自分の生きやすい生き方をみつけること」で、すべてはその上になりたつのである。きちんとなりたたせる役はもちろんエレーヌであって、彼女さえいれば大丈夫だと言わぬばかりに、監督はプッツンとエンドにしている。「ノンストップ・ガール」では、ヒロインは自縄自縛のしがらみから脱出する女だった。本作では社会のしがらみからドロップアウトした、もしくはドロップアウトさせられた女たちだった。どっちにしても既成の規定から外れ、自分の規範を見出していく女たちである。彼女らのワイルドでユニークなこと、ノラ猫どころのスケールじゃないです(笑)。

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