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特集「ザ・クラシックス」

2015年7月30日

特集「ザ・クラシックス2」存在の耐えられない軽さ(1988年 社会派映画)

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監督 フィリップ・カウフマン
出演 ダニエル・デイ=ルイス/ジュリエット・ビノシュ/レナ・オリン

軽かろうと重かろうと

もてる男ってこういうことをすらすら言うのね。トマシュ(ダニエル・デイ=ルイス)は優秀な外科医だ。画家サビーナ(レナ・オリン)のアトリエでトマシュが帰り支度をしている。サビーナが聞く。「あなたが求めているものは女の快楽?」「ささいなことを知りたい。すごく小さなことでささやかだが、その女性の際立った特徴をね」「わたしの特徴は?」「帽子だよ」それだけでサビーナはグッとくる。その帽子はサビーナの祖父の、そのまた祖父のもので、彼女がこよなく大事にしている品だ。黒いブラジャーとガータベルトだけになったサビーナが帽子をかぶる。エロチックである。そしてトマシュに聞く「なにを見ているの」「君の目を」言えそうでなかなか言えませんのですよ、こういうセリフ。大きな鏡を見ながら彼らはセックスをする。ナルシストの例にもれずふたりとも鏡が好きだ。ダニエルは黒々とした頭髪が盛り上がるほど豊かで、見るからに精力にあふれている。「人生は補充もきかないし修正もできない」が持論だ。それと女好きがどう結びつくかは知らないが、いつも複数の女性と気軽に交際し一度寝た女には見向きもしない。唯一例外はサビーナだ。彼女との間には気の合う友達のような友情がある▼トマシュは出張先のカフェでウェイトレスのテレザ(ジュリエット・ビノシュ)と知り合う。写真家の道をめざすテレザは、店で自分にやさしくしてくれたトマシュの言葉を頼ってプラハに出てくる。トマシュはサビーナに頼んでテレザの勤め口をみつけてやる。テレザの情熱にほだされトマシュは結婚する。このへんから「存在の耐えられない軽さ」がなにを意味するのか混乱してくる。だってDVDのパッケージには「人生はわたしにはとても重いのにあなたにはごく軽いのね。わたし、その軽さに耐えられないの」というテレザの言葉がある。だからタイトルはここからとったのだろう。しかしそんな軽い男がすぐ女の頼みを受け入れて結婚するだろうか。律儀に立会人までたてて。立会人はトマシュの手術で命を助けられた農家の純朴な主で、メフィストという子豚を可愛がり、結婚式の日にはメフィストにもネクタイをして列席させた。もっともトマシュの貞節な夫ぶりは長く続かず、すぐ女をつくる。夫の手の早さにテレザは呆れ、妄想にうなされる。テレザを寝かしつけるときのトマシュの言葉がまたスマートだ。「眠るのだよ。ほうき部屋のほうきたちの一本のほうきのようにね。森の中にある森の奥で千年も前に歌われた歌のように」髪を撫でながらこんなことをささやかれたら、あ~どうしよう(アホ)。トマシュは外科医で仕事熱心だし給料はきちんと家にいれるし、酒乱でもない、なんでつぎつぎ女と関係するのかと問い詰めたら「わからない」と答えるし、結局こういう男はほうっておくのがいちばんいいと女は思わないかしらね(笑)▼そうそう、この映画の時代は1968年プラハの春ね。ソ連の統制下に入り、サビーナはスイスに移住する。トマシュたちもスイスに。トマシュはサビーナとよりを戻し、サビーナは別の男と関係する。こう書くといい加減な関係ばかりに聞こえるが、テレザもトマシュもサビーナも、その相手の男も精一杯誠実だとしかいいようがない。神経の疲れたテレザが置き手紙を残してプラハに帰った。手紙の内容が「あなたの軽さに耐えられない云々」である。おまけにテレザはあなたがその気ならわたしも、と不慣れな情事に手をだし、自らを傷つけてしまう。人間、ガラでないことはするものじゃないのだ。トマシュは危険を承知で再びプラハに引き返しテレザと暮らす。サビーナと関係をもった大学教授は妻と離婚し、サビーナに結婚を申し込む。プラハで以前ソ連の介入を批判する記事を雑誌に発表したことのあるトマシュは「自己批判書」にサインを強制され拒否、病院の職を失いパスポートを没収される。サビーナは離婚してまで自分と結婚しようとする男の誠意に泣くが、一方でトマシュとの関係も断てない。翌日男がサビーナを迎えにいくと部屋はからっぽ。サビーナは行き先をつげず蒸発したのだ▼医師免許を剥奪されペンキ塗りになったトマシュに、テレザは田舎に行こうと提案する。自分たちの結婚の立会人になった農夫の家だ。彼はメフィストとともに歓迎し、3人は日の出から日の入りまで農作業に明け暮れ、仕事が終わればジョッキをあけて歌いしゃべり疲れをいやす。幸福で安らかな日が戻ってきた。そこへ…アメリカに来ていたサビーナはある日一通の手紙を受け取る。トマシュとテレザが交通事故で即死したという知らせだった。存在の耐えられない軽さとは、ひとしくわれわれ自身の存在のことだったのですか。サビーナとテレザが女同士、ジュネーブでかなり親密な関係になるのですが、全然刺激的じゃなかったからはぶくわ。ジュリエット・ビノシュって、すべての映画をうやむやにする女優だと思わない? ルイ・マルの「ダメージ」なんか最高だったわ。一点非のうちどころのない主人公ジェレミー・アイアンズが息子の婚約者ジュリエット・ビノシュを狂気のように愛する。男はすべてを失い女は別の男と結婚し、数年後空港で女をみかけたジェレミー・アイアンズはつぶやく「彼女を見た。子供を連れていた。普通の女だった」狂気が通り過ぎたらだれでもそうなる(笑)。軽かろうと重かろうと生きるのが存在ってことよ。

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