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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2015年8月7日

特集 LGBTー映画にみるゲイ138
マーターズ(2008年 ゲイ映画)

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監督 パスカル・ロジェ
出演 モルジャーナ・アラウィ/ミレーヌ・ジャンパイノ

もういい死後の世界

アンナ(モルジャーナ・アラウィ)とリュシー(ミレーヌ・ジャンパイノ)が主人公である。ふたりは児童施設でいっしょだった。行方不明だった少女リュシーが体中を虐待され、衰弱しやせ細った体で路上をさまよっていたのが1971年。彼女は廃墟となった工場で長年にわたり監禁、拷問と虐待を受けていた。だれとも口をきかないリュシーはひとりだけ、やさしくしてくれたアンナに心を開く。ふたりは施設を出て15年後。リュシーは日曜日の朝ある家庭を訪れ、一家4人を猟銃で射殺する。現場にかけつけたアンナに、リュシーは自分を監禁して虐待したのは彼ら(父親と母親)だと言う。新聞に載っていた写真でわかったのだという。アンナは半信半疑だったがリュシーを落ち着かせ死体を処理しようとする▼なぜさっさと警察に知らせないのかと思いますね。アラウィがこの役を引き受けたのは「少女ふたりの愛に打たれた」からだそうです。ふうむ。リュシーを愛しているからアンナは死体を埋めていっしょに逃亡でもするのか。よくわからんが、もう少し我慢して見ることにする。監督は「ホラー映画でよく題材にされるのは孤独だ。社会に適応できない人だ。本作の基底には孤独の苦しみがある。それを表現するのはゲイの少女ふたりが適切だった。ふたりにとっては世界中が敵だ。家族もいない」。ふうむ。一家惨殺はリュシーの妄想であり勘違いであり、思い込みであったとアンナは疑っていました。ところが大違い、カルト組織による計画的な誘拐・暴行・虐待・監禁であり、地下室に幽閉されたこの世の人間とも思えないほど傷めつけられた女性を発見するに及んでアンナはリュシーの言っていたことが事実だったとわかる、アンナは「許して」とリュシーの死体にすがって泣く。リュシーは極度のトラウマによる発作に襲われ、自分で喉を掻き切ってしまったのです▼そこから映画は後半ゲイの繊細であるべき愛の世界は消滅。バイオレンスに突入します。マドモアゼルと呼ばれるカルト組織の首領の言い分はこうです「わたしたちは計画的に苦痛を育むの(つまり暗闇に閉じ込め規則的に虐待を続ける)。被験者はいくつもの段階を経てトラウマや亀裂が生じ存在しないものを見るようになる」なんのためにそんなことをするのか。殉教者(マーターズ)をつくるためなのです。「殉教者とは地上の悪を引き受け、自らの身を捧げ自己救済する存在、彼らは生きながら死後の世界を見る。そうなった存在を変容と呼ぶ。治験例からいえば変容は若い女性に起こりやすい」。ふうむ。若い女性を意識朦朧、妄想や幻想を見るまでいじめまくり衰弱させ、死の一歩手前まで追い込むのが「変容」ってことかよ。こいつら女をバカにしている。虐待するうちに命を落とす者もいるがごくまれに、死なずに殉教する者がいた「中国で神を否定しニワトリを盗んだ女、リュック村でドイツ人と寝た食料品店の女、バーミンガム病院で末期ガンだった無神論者の主婦、自動車事故の犠牲者、白血病患者」らが「変容」を遂げた、つまり死後の世界を見たとマドモワゼルはいい、アンナもこれから段階的に「変容」に達するプログラムを実施するというのだ▼延々とアンナの虐待シーンが続きます。鉄の鎖で両手をつながれ頭はスキンヘッド、吐瀉物みたいな汚い、まずそうな流動食をスプーンで口に入れられ、吐き出すと横ビンタを張られる。男が入ってきて鎖を解き、壁に打ち付けるわ、殴り飛ばすわ、蹴る、投げ飛ばす、一定の虐待プログラムを終えるとまたアンナを鎖につなぐ。トイレもなく穴のあいた椅子に座ったまま排泄する。アンナは抵抗する気力も体力も失い、リュシーの幻と対話するようになります。最終段階らしいです。なにをするか。なんと顔面を残し体中の皮膚を剥いで筋肉を露出させるのです。実在したイルゼ・コッホの「ナチ収容所悪魔の生体実験」そのままね。アンナを観察していた担当者がマドモアゼルに急報する。「見たこともない表情を浮かべています」生きていると知ったマドモワゼルはアンナが変容した、つまり殉教したと判断しあちこちに連絡を取ると、組織のメンバーがぞろぞろ集まってくる。みなかなりの高齢である。マドモアゼルの執事の演説によれば「これまで殉教者は4人いたが死後の世界を話せた者はいなかった。マドモアゼルはアンナからそれを聞いた」そんな戯言をきくために、見世物同様の虐待をせねばならんのか。みな目を皿のようにしてマドモアゼルのご託宣を待つ。執事は部屋にいるマドモアゼルに「みなさんがおまちかねです」と告げる。すぐ行くと彼女は答えるがなかなか出てこない。執事は気になり、ドア越しに「死後の世界はあるのですか」と尋ねる。「ある。疑問を挟む予知もない」といいながらマドモアゼルはメイクを落としていく。執事がドアから離れようとすると呼び止め「疑いなさい」と言って拳銃を口につっこみ発射したのです。あなた一体それ何なの?▼わけがわからないまま終わります。リュシーとアンナの愛やら少数派の孤独なんて適当なキーワードに使われただけで、主軸であるべきはずの死後の世界ですら放り出されています。そらそうだろ、そうだろ、だれも説明のつかない世界をとりあげ、屁みたいな終わり方に決着つけたのはマドモアゼルのドカンだけか。でたらめな方法でさんざん人を苦しめ殺してきた組織の首領としては。せめてこれくらいやってもらわなくちゃおさまりつかないからでしょ。もういい。
Case closed(本件は終了)

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