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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2015年8月11日

特集 LGBTー映画にみるゲイ142
パッション(2012年 ゲイ映画)

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監督 ブライアン・デ・パルマ
出演 レイチェル・マクアダムス/ノオミ・ラパス/カロリーネ・ヘルフルト

甘くみたのが運のつき

ブライアン・デ・パルマ監督が大好きな「双子」つまり「もうひとりの自分」のイマジネーションを駆使して描く犯罪映画。ドッペルゲンガーを象徴する小道具として鏡と仮面がピン・ポイントで使われます。主人公は大手広告会社のベルリン支社の役員クリスティーン(レイチェル・マクアダムス)と彼女に憧れる部下イザベル(ノオミ・ラパス)。とりあえずこのふたりの権力抗争で映画の前半が進みます。イザベルは仕事熱心で有能だがもっさりしている。目から鼻へぬけるようなクリスティーンのはしこさはない。仕事熱心でクリスティーンを喜ばせて昇進させてもらおうと一生懸命。新スマホの販促アイデアを夜中に思いつき、アシスタントのダニ(カロリーネ・ヘルフルト)を電話で叩き起こす。クリスティーンはイザベルの案を気に入りロンドンの会議でプレゼンするように指示、自分の恋人のダークを同行させる。プレゼンは大成功、大喜びのイザベルはダークと一夜を過ごし、ベルリンに帰社するとクリスティーンがプレゼン企画は自分の案だとして報告し、ニューヨーク本社栄転の異動までとりつけていた▼クリスティーンはイケしゃあしゃあと「横取りされたと思うなら、自分もこの席にすわって同じことをすれば」。クリスティーンはイザベルなんかどうでもなる女だとタカをくくっている。「わたしのこと怒っているのね。わたしには双子の美しい姉がいたの。両親は姉を溺愛した。ある日横断歩道を渡っている姉に声をかけたら振り向いた。そこへトラックが…あとはなにかがぶつかる音を覚えているだけ。姉が死んだときから母はわたしに愛していると言ってくれないの。あなたもそう。愛しているとはいってくれないのね」このへんまでイザベルはクリスティーンの言葉を鵜呑みにし、幼児期の心の傷がトラウマになっているのだ「かわいそうに」そこで言っちゃうのである「愛しています」おいおい▼ところがクリスティーンの性悪女ぶりをいやというほど知っているダークは「ケッ。双子の姉などいるものか。君を陥れるためならどんなウソでもつくぜ」彼は会社の大金を横領し、証拠をにぎったクリスティーンにいいように脅されているのである。イザベルは反撃にでる。ダニの忠告をいれネット上で企画の原案が自分のアイデアだと公開し、大反響を呼んだ。重役たちはイザベルこそ栄転にふさわしいと決める。どっこいクリスティーンの復讐の炎はメラメラ。幹部会の懇親パーティでイザベルは大恥をかかされ再起不能に追い込まれる。社内ではあんなイケズにあってなぜやめないのだと無責任におもしろがるだけ。いまやイザベルの味方はダニだけだ。さてここで第三の女・ダニ登場である。クリスティーンはダニがめざわりで仕方なかった。どんなにイザベルをひどい目にあわせてもダニがしっかり補佐するから、イザベルは立ち直ってしまう。驚くべきことに、あのドン臭いイザベルをダニは愛しているのだ。クリスティーンはダニに「あなたのほしいものはイザベルでしょ。イザベルといっしょにあなたを笑いものにしているのよ」と耳に毒を注ぐ。「信じません」きっぱりとダニ。怒りの炎にガソリンをぶっかけられたようなクリスティーンは「あなたの嫉妬が仕事の邪魔なの。辞表出して」嫉妬なんかだれもしてないだろ。パワハラどころか人権侵害ではないか▼クリスティーンとイザベルはどっちもどっちです。ふたりとも目的のためならなんでもする女。相手を引きずり下ろすために裏切りと策略を次々くりだす。デ・パルマは自家薬籠中ともいえる夢・悪夢・幻想のシーンを駆使し、女たちを袋小路に追いつめていきます。妄想から逃れるためドラッグに手をだし、薬物常用者となったイザベルは夜中に突然ベルリン警察の刑事に踏み込まれ拘束される。クリスティーンが自宅で殺されたというのだ。薬物依存のイザベルは弁護士のアドバイスも耳に入らず殺人を自白してしまう。そんなはずはないと、ここでまたイザベルを救うために献身するダニ。巧みなプロットの積み重ねで薄紙をはぐようにイザベルの空白が埋められていきます。なにやら意味ありげなバレエ「牧神の午後」がイザベルの「自白」をくつがえす。犯人イザベルで解決したかにみえた事件はふりだしに。では何者?▼馬鹿らしいほどの幻想シーンはあるものの、デ・パルマは舌なめずりしながらイザベルの化けの皮をはがしにかかります。鈍重なほど人の好かった(ように見えた)イザベルが、ダニの純愛を冷酷にもてあそぶシーンなんかけっこうな莫連女です。ダニが言う「あなたが好きなのに」イザベル(とぼけて)「それは問題ね」「どうして?」「ウソでしょ。ダニ、本気なの?」「わたしを愛しているでしょ」「愛していないわ。酔っているのね。エスプレッソ飲んでタクシーで帰って」ダニは沈黙。ややあって「薬漬けのあなたには困惑したわ。どんな薬を飲んでいるのだろうと、あなたがお茶に入れたものを口にいれてみたの。ただの甘味料だったわ。依存症はウソね。なぜそんなことをするのか、事情を知るためにあなたをつけたわ。あなたは劇場に行きちゃんとアリバイをつくった。つぎにクリスティーンの家に行った。完璧な写真が撮れたの。あとは送信ボタンを押すだけで刑事のケータイにつながる」「何がほしいの」「その口の利き方、改めてもらうわ」ダニを甘く見たのが命取りでした。愛してくれる女の愛を、みくびってはいかんですなあ▼登場人物が少ないからだれが殺したかはすぐ察しがつきます。むしろ本作の核は犯人探しより女ふたりのダークサイドと、ゲイのからみでしょう。ダニの存在がヒロイン同士のかけひきとは別に、この映画の暗さと強さを引き締めています。

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