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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2015年8月21日

特集 LGBTー映画にみるゲイ152
アイム・ソー・エキサイテッド(2013年 ゲイ映画)

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監督 ペドロ・アルモドバル
出演 ハビエル・カマラ/セシリア・ロス/ブランカ・スアレス/パス・ベガ

しのび笑い

冒頭アントニオ・バンデラスとペネロペ・クルスが夫婦役でカメオ出演します。二人は整備士。離陸寸前の飛行機のストッパーを外していたバンデラスがペネロペの妊娠がわかった、大喜びで妻を気遣ううちストッパーを外し忘れた。そのままペニンシュラ航空2549便は飛び立った1時間半後、コックピットの中で機長と副機長は降着装置が働かないことに気づく。臨時着陸するために滑走路を開けられる空港がない、飛行機はトレド上空でむなしく旋回する▼アルモドバル映画の登場人物はみな一筋縄でいかない男や女ばかりである。女はたくましく男はくたばらない。絆を求める男や女が織りなすやさしさと人生にネヴァー・ギブ・アップのしたたかさが、あるシーンではコテコテに、あるシーンではしんみりと、あるシーンではくどくどと、離陸して着陸するまでのワン・スチュエーション映画がじつにテンコ盛りだ▼機内で機長はじめ主たる乗組員はどんな行動をとったか。パニックを防ぐためベテランの客室乗務員(女性)は、エコノミークラスの乗客を「エコノミー症候群予防措置」として睡眠薬を飲ませ全員眠らせてしまった。ところがビジネスクラスの乗客がコックピットに盛んに出入りする男性客室乗務員に「?」。未来を予測できる超能力のある女性ブルーノが立入禁止を無視して操縦席に入り「死の匂いがする。今日この飛行機でたいへんなことが起き、全員の運命が変わる」と予言したのだ。チーフ・アテンダントのホセラは部下のふたりウジョアとファハスに乗客を落ち着かせろと指示するが…3人ともゲイである。ホセラは機長と恋人関係。副機長のベニートとも情事あり。ベニートにモーションをかけているのがウジョア。ファハスは信仰心厚く機内に小さな祭壇を作りお祈りする。いちばん先に異変に気づいた乗客がノルマ(セシリア・ロス)だ。過去の飛行機事故のトラウマとしてウソがつけなくなったホセラが事実をばらしたものだからビジネスクラスは騒然。落ち目の俳優リカルド、メキシコの警備員だというインファンデ、銀行の頭取マス、新婚旅行に来たばかりのカップル。リカルドは機内電話で元カノ・アルバ(パス・ベガ)に電話するが、彼と別れたばかりのアルバは精神が不安定、陸橋から飛び降りる寸前だった▼新郎はかくしもっていた麻薬を取り出しアテンダントにわたし特製バレンシア・カクテルを作ってもらう。麻薬入りカクテルを飲んだ乗客たちは自分たちの秘密と隠し事を暴露しはじめた。銀行の頭取は不祥事をためスイスに逃避行を企てていた。ひとり娘がおり家出したきり帰ってこない、なにをしているのというノルマの質問に頭取は肩身が狭そうに「いわゆる女王です」。ノルマはにやり。またもやブルーノが「死の匂いがこのあたりでする」。「わたしのことよ」とノルマが話を引き取った。なぜなら彼女は「SMの女王」で、上客は政治経済界の大物ばかり。秘密を知りすぎたノルマを消すため飛行機事故が計画されたというのだ。ところがブルーの指し示した人物はインファンデ。メキシコの警備員は「そうだ、おれは殺し屋だ」と告白し請け負った殺人がノルマだという。告白して肩の荷がおりた乗客たち。いつしか機内はメイクラブ解禁。女王ノルマと殺し屋インファンデ、機長のアレックスとホセラ、副機長のベニートのウジョア、もちろん新婚カップルも。未来の予知能力を恐れ男が近づかなかったアラフォー処女ブルーノもエコノミークラスのイケメンとめでたく処女卒業▼やっと飛行機は着陸した。消火剤の撒かれた白いふわふわした泡の中を、女王と殺し屋は手に手をとって逃走、頭取は女王が連絡をとってくれた娘と再会をはたすため逃亡は中止、家に帰ることに(当然警察につかまる)。機長のアレックスは妻がバイであることがわかる。予言通りそれぞれの運命が変わったわけです。彼らはみな耐え切れないような面倒なトラブルに直面してうろたえるが、やがて現実を受け入れ、立ち直り、傷ついたけれど何事もなさげに生きていく。かれらの後ろ姿にただようのは、はかなさとともにしのび笑いだ。それがアルモドバル映画のいとおしさと強さだと思える。

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