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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2015年8月26日

特集 LGBTー映画にみるゲイ157
殺しのドレス(1980年 ゲイ映画)

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監督 ブライアン・デ・パルマ
出演 マイケル・ケイン/ナンシー・アレン/アンジー・ディッキンソン

せめぎあう二つの性

トランスです。1980年だからまだまだゲイは閉ざされた世界だったと思うのですが、その割にはのびのびしていますよ、この映画。監督がブライアン・デ・パロマだからね。本作はヒッチコッキアンの彼の「サイコ」へのオマージュだといわれますが、中身は全然ちがいます。サイコ・サスペンスでも本作はどこか明るくて陽性なのよね。犯人はトランスである精神科医エリオット(マイケル・ケイン)です。のっけからネタバレ全開だけど、わかったからってどうってことはないの、この映画。マイケル・ケインは始まってややたってから登場する。本筋に入るまでかなり寄り道する映画です。ヒロインが殺されるまで「サイコ」もさんざんひっぱられたけど、でも導入部の精密描写はやっぱりヒッチに軍配ね▼そのかわり、といってはナンだけど、オープニングにいきなりヒロイン、ケイトのシャワーシーンが長々と映される。肩や腰、形のいいおヘソ、金髪のアンダーヘアに石鹸をぬりながらケイトは恍惚(このシーン時間かけすぎ)としながら、湯気の後ろから裸の男が現れ抱きすくめられる妄想にふける。彼女は夫とのセックスに欲求不満だ。カウセリングの精神科医エリオットに「夫は下手だ」と打ち明け、先生は素敵と誘うが、エリオットは婉曲に避ける、ところがだ。エリオットの内部には男と女がいる。エリオットの「女」の部分であるボビーは、エリオットがほかの女に関心を示す(勃起状態)になるとエリオットをのっとる。そして彼の関心の対象である女を殺しにいくのである。金髪のかつら、黒いサングラスに黒いコートで。この場合、ケイトの誘惑にエリオットがその気になったと受け取ったボビーは「エリオットを奪ったけしからん女」ケイトの後を追う。エリオットに拒否されたケイトは焦燥をもてあましながら美術館に入る。アートの殿堂メトロポリタン美術館だ。そこである男に気をひかれる。男は挑発的にケイトを誘い、ケイトはくらくらと男といっしょのタクシーに。車の中でセックスし、さらに男のアパートに行く。情事のあと男の机のひきだしをあけ男が性病にかかっていることを知る▼ケイトはあたふたと男の部屋を出る。指輪を忘れる。脱いだパンティも取りに戻る。首ひねりますね。情事のときに指輪をいちいち外しパンティをはき忘れる? こんなノンキでどんくさくて危険な情事ができるのだろうか。エレベータを待つ。扉が開いて目の前に立っていたのは金髪にサングラスの女。ボビーだ。エレベータの中でケイトはズタズタにされる。つぎにエレベータのドアが開いたとき、外で待っていたのが娼婦のリズ(ナンシー・アレン)。警察の尋問を受けることになったリズは、ケイトの息子ピーターと出会う。さんざん刑事に意地の悪い質問をされたケイトは、やっと釈放されたものの、地下鉄の中で男3人にからまれ、ピーターに助けられる。ピーターとリズは力を合わせて犯人を探し出そうと手を握ります。発明オタクの少年と娼婦のコンビネーションがおもしろい。ナンシーは当時のデ・パルマ夫人です▼リズとピーターは再三窮地に陥りながら犯人の化けの皮をはがす。精神病院に収容されたエリオットの状態を医師はこう説明します。「彼はトランスで女性になりたかった。しかし男性側が転換に抵抗した。男がエリオット、女がボビーだ。ボビーは性転換手術を望んでいたがまだ不安定な状態だったのだ。ふたつの性がひとりの中にいる。解決は性転換手術だ。だがボニーが望めば望むほどエリオットが拒んだ。エリオットが興奮するとボビーにとっては赤信号だ。エリオットが勃起するとボビーが現れ、その相手を殺そうとする」。いまからみるとかなり大雑把な構成ですが、当時しては刺激的でした。デ・パルマらしいどんでん返しがラストにあります。最後までドキドキの緊張感を維持します。エリオットが看護師を強姦殺害し、それを病院の患者が鈴なりになって見物し、エリオットは脱走する。つぎのシーンではボビーが出現し、看護婦の白い靴をはいてバスルームのドアのかげからリズを狙う。リズののどにカミソリの刃がめりこみ、ぱっくりと口が開くところまで律儀に描写します。ハリポタにそっくりなピーター少年と娼婦のリズが、家族みたいに仲良しになっていくプロセスがよかったです。

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