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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2015年8月28日

特集 LGBTー映画にみるゲイ
159ステラ・ダラス(1937年 ゲイ映画)

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監督 キング・ヴィダー
出演 バーバラ・スタンウィック/バーバラ・オニール

ヒッチコックの妹

この映画は「ヴィオレッタ」でちょっとふれた母娘ものです。三度映画化されています。1925年、1937年(本作)、1990年。タニア・モドゥレスキーはどっちかいうとフロイト見直し派だと思うわ。彼女は本作の論証にフロイトの「精神分析入門」のここを引用しています。「われわれ男性が女の謎とよぶものの幾分かは、おそらく、女性の人生にあらわれる両性性に由来するのだろう」。つぎにモドゥレスキーはこう断言するのです「このような両性性は女の子が男根期を経験すること、もうひとつは女の子の最初の愛の対象が男の子と同じように母親であるということに原因がある。(略)。フロイトは女性にもしばしば、一生母親への欲望が残ることを認識せざるをえなかった。それは他の女性との関係ばかりではなく、異性との関係にも影響する。女はかくもしばしば二重の欲望にとらえられる」「両性性の謎の中心にある母/娘関係は、ヒッチコック映画で主要な問題として繰り返し提示されている」つまり母娘関係はゲイ関係の近似値にあり、ヒッチコックはこれを数度となく取り上げてきたっていうのね。これを読んで長年のつかえが氷解したわ。母親というのは娘にとっても息子にとっても、子供のときは万能の存在でしょう。いなければさびしいし、抱いてもらえば安心するし、母親さえいればこの世の不安から免れられる。これまでは息子と母親はやれマザコンだ、やれ近親相姦だという関係でよく取り上げられたのだけど、母親と娘は、娘が成長するにつれて異性へ関心を移すと、さら~と流されがちだった、フロイトはいやそうじゃないとおさえていたのだけど、彼のエディクス・コンプレックスだけが肥大していた、その隙間をモドゥレスキーは読み込んだのね。カリフォルニア大学バークレー校のメディア専攻のメアリ・アン・ドーン教授は「映画と仮装」で、女は母親の身体から分離できないとし、アン・カプランは著書「性幻想と映像表現」で「同性愛の要件が母親と娘の間で認められる」と述べている▼さて「ステラ・ダラス」ですが、三度の映画化となると、いわば「永遠の名作」殿堂入りです。そのわりには同じ家族映画でも「若草物語」とか「わが谷は緑なりき」とか「サウンド・オブ・ミュージック」とかと、全然ちがうじゃない、雰囲気が。後者三作はいわば「本日は晴天なり」とでもいうしかない、一点の曇りない青空映画なのだけど、「ステラ」にはどこか影がある。娘を思い、身を引き、自分は娘の幸福のため尽くすべき道を尽くし最善の方法をとった、思い残すことはないと、傘もささずほほえみをうかべ胸を張り、腕をふって笑顔で去っていく、バーバラ・スタンウィックの気丈かつ切ないラストシーンのせいもある。ここは映画史の名ラストシーンのひとつに数えられるでしょう。しかし思うのだけどこれを青空映画にカウントするのをためらう最大の理由は、濃密すぎる母娘関係ではないかと思えるのです▼母ステラ(バーバラ・スタンウィック)がフリフリのはでな服装で飾り付けた孔雀のようにレストランに入ってくる。ともだちは娘ローラ(バーバラ・オニール)がいることに気づかずさんざんこきおろす。帰りの夜汽車で母親は寝台車の上、娘は下で寝ている。パーティで同席した婦人たちが乗ってきて「悪趣味な服、時代遅れの靴、安っぽい宝石で飾り立てたローラのママ」と話題にする。ローラもステラも寝台でそれを聞いている。彼女らは「ローラが可哀想よ、上品ないい子なのに、あんな母親に育てられているなんて」などと言いながら車両を移る。しばらくしてローラは上の寝台をみて、母親が眠っているのに安心する。ベッドに入り母親に頬をよせると、ステラはいま目が覚めたように「どうしたの」「さびしくて。ママ、いっしょに寝てもいい?」。ローラの父親は離婚し、再婚していた。彼女は優雅で知性的でステラにも理解があり、ローラをひきとろうとする。ローラは拒否して母親のもとにとどまる。ステラは娘の将来を考えれば、家柄と言い経済力といい、ローラを幸福にできるのは向こうのほうだと判断、飲んだくれの昔馴染みに一芝居打たせ、わざと娘を失望させ追い返す。ローラが母親に自分の気持ちを伝えたときの言葉がこれです「お母様とわたしはお互いを必要としている、わたしは死ぬまでお母様と暮らすわ。いっしょに泣いて苦しいことを乗り越えられる人こそ、愛情という絆で結ばれている相手なのよ。あそこ(父の再婚先)にはいないのよ」…ふうむ、本作はさしずめ「ヒッチコックの妹」版でしょうか。

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