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特集「更けゆく秋はスパニッシュミステリー」

2015年10月17日

特集「更けゆく秋はスパニッシュミステリー」②
シャッターラビリンス(2009年 ミステリー映画)

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監督 ゲイブ・イバネス

出演 エレナ・アナヤ

「海の廃墟」 

閉鎖空間で子供がいなくなる「失踪もの」です。ジョディ・フォスターの「フライト・プラン」海上版ですね。登場人物はほとんどエレナ・アナヤひとりです。ひとり劇かというともちろんちがうのですが。水族館に勤めるシングルマザーのマリア(エレナ・アナヤ)は5歳の息子ディエゴと寄り添って仲良く暮らしている。ディエゴは母親思いのいい子だ。休暇をとってディエゴとイエロ島旅行に行くことにした。島の名前「イエロ」(鉄)が原題です。フェリーが荒涼とした海を渡る。海にもガランとした船室にも、バカンスのにぎわいはありません。じつにわびしい空気がたちこめ、いいことは起こりそうもないという不幸オーラが張り詰める。エレナ・アナヤがあの通り、いつも思いつめているような顔ですから、ムードはますます地盤沈下。マリアはうたたねから目を覚ました。あたりを見ると息子がいない。探しまわり、警察が出動し船内はもちろん、海上捜索するが行方不明▼半年後、島の警察から少年の遺体が打ち上げられたと、身元確認の連絡がある。マリアは島へ。遺体は息子ではなかった。ホット帰ろうとしたらDNA鑑定のため、あと3日間島にいてほしいという。マリアは島を当てなく歩く。誰もいない海岸。打ち寄せる白い大きな波。島に一軒しかないガススタ。たったひとり知り合いになった警官は「島の住民はみな顔見知りだ」。狭い人間関係がマリアには秘密めいて閉鎖的に聞こえる。キャンプ場とは名ばかり、汚いボロのコンテナが並び、廃車置場同様だ。一人住まいの中年・初老の男性が、コンテナの外でインスタント食品を食べるわびしい光景。ドイツ人女性がいる。元学校の教師をしていて、マリアが話をしたいと近づくと「スペイン語はできない」と拒否。でもあとでスペイン語はできるが、こどもを亡くしてから夫とわかれ、おかしくなったのだと聞く。別れた旦那のテントを訪ねたが乱暴に追い出される。マリアには海岸でイヌと遊ぶ男の子が一瞬ディエゴに見えたりする▼たいして脈絡のない、こういう一連のシーンが続きます。島をさまようマリアは、小高い丘に登ると、足下には霧のような雲がたなびく、幻のような島の光景だ。スペイン語がペラペラなのにしゃべれないとウソをついた女性が気になってマリアは再び訪問する。女性がコンテナを出た隙に中に入ると、鍵のかかった部屋があった。外してのぞくと、ディエゴがいた! 誘拐されていたのだ。女が戻ってきた。大乱闘になりマリアは太ももを刺される。突き飛ばし脱出したがガスの火が引火してコンテナは爆発炎上。マリアはディエゴを連れ必死で逃げフェリーにたどりつく。なんで逃亡者みたいに逃げるのかよくわかりませんが、マリアはとにかくこの島から離れたい一心なのです。ディエゴを大型トラックの貨物台に隠し、足をひきずって歩いていたら警官に呼び止められ、気を失う。気がつくと病院だった…▼マリアの回想。遺体確認でみた男児はディエゴだった。息子の死を認めたくないマリアは、ディエゴが生きていると妄想し、島の中をさまよい捜索する。ドイツ人女性が隠していた男の子は、映画の冒頭、車が転覆し母親は重傷、息子は行方不明という事故があった、そのときの子だ。母親は怪我した息子が遠くに行くはずがない、誘拐されたのだと信じ、島中にポスターを貼って行方を探していた。マリアは自分の息子のほかに誘拐された男児がいる、島の人間が犯罪にかかわっていると思い込み独自で捜索していたわけ。ドイツ人女性は、車の事故の現場から男児を誘拐し、自分の息子だと思って監禁していたのだ。二重、三重の「息子の喪失」が重なっています。マリアは病院で正気にもどり、ディアナと同じ年頃の男の子をみても、それが他人だと識別できるようになりますが、正気の顔からも、物悲しさが消えることはない。島の海岸沿いの無人の風景、トレーラーの遺棄されたエリアは、マリアの心象風景でもあったのでしょう。やれやれ、心温まるおバカ映画が見たくなるわ。

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