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特集「更けゆく秋はスパニッシュミステリー」

2015年10月24日

特集「更けゆく秋はスパニッシュミステリー」
ロスト・フロア(2015年 サスペンス映画)

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監督 パトクシ・アメズカ

出演 リカルド・ダリン/ベレン・ルエダ

階段で子供が消える 

「ロスト」三作の最新作。かなり早い段階でからくりがわかります。というより監督はあえてチョンバレさせてしまいます。あっさり犯人が顔を出しましてね。この映画はそのあとがジクジクとよくなるのです。傷の痒さを掻きだしたら汁が出てきてジクジク、そのくせ体の芯が(いい~っ)とするような痒さで掻かずにはいられない、そのジクジクのエンジンになるのが、ベレン・ルエダとリカルド・ダリンです。夫婦役をやります。場所はアルゼンチンのブエノスアイレス。夫セバスチャンは弁護士。妻のディリアはキャリア・ウーマンで、マドリッドからブエノスアイレスに移ってきた。夫はかなりの遣り手だ。大手弁護士事務所で出世もしたが家庭をかえりみず、妻の親友と1年に及ぶ浮気もあった。妻は傷つき目下別居中。実家のマドリッドに帰る決心をする。子供がふたりいる。夫は毎日子供たちの送り迎えのため妻のマンションによる▼妻が離婚を決めてから夫は後悔を露わにし、なんとか思いとどまらないかと口説いているが、妻の決心は固い。セバスチャンというのが、かなり嫌味な男で、ブエノスアイレスで事業に失敗、破産してマドリッドに到着し、空港でヤケを起こして当たり散らしていたときディリアに出会い、彼女といっしょに飲みにいった、というきっかけで結婚。ディリアの父の援助を受け働き口と高給を得た。ブエノスアイレスに移住してからは、出世と金儲けしか考えない夫との仲は冷たくなったし、父親に介護が必要になったから実家に戻るという妻に、夫は「君の兄弟が介護士をやとって面倒みればいいだろう」と素気ない。そのくせ自分の子は愛しているので手放したくないうえ、ディリアにも未練タラタラだ。こういう背景で事件は起こる。セバスチャンがエレベーターに乗り、子供たちが階段でマンションの7階から1階へ降りる途中、消えたのだ▼実質登場人物は夫婦ふたりといえる。こどもたちがいなくなった、そんなバカな、というやりとりが繰り返され、マンションの住人や管理人が疑われ警察に通報し、警官がきて誘拐だと断定する。セバスチャンはのっぴきならない重要な公聴会を断念し、子供たちの捜索に没頭。気も狂わんばかりに取り乱す。やがて犯人から電話、身代金10万ドルをすぐ用意して指定の場所へ持ってくれば、子供は解放するというのだ。セバスチャンは開口一番「お義父さんに連絡して金を作ってくれ」。ディリアも泣いていたが我に返り「スペインは夜中よ。お金の手当はできないわ」。セバスチャンは自分が勤める法律事務所に駆け込み、オーナーに頼み込む。セバスチャンの今朝のドタキャンで重要なクライアントを逃したうえ「10万ドルを用立てろ」など冗談ではない、「君のキャリアは終わりだ」というと、「現金があることはわかっているのだ、金庫を開けないと頭を叩きわるぞ」とつかみかかって脅す。その金を持って所定の場所、というのがマンションの屋上で、少年が自転車に乗って現れ、セバスチャンが置いた封筒を取って姿を消すのだ。どことなくアナログである▼要は妻がセバスチャンに離婚の判を押させるために、同じマンションに住む警視と組んで仕組んだ誘拐事件だった。なんのことはない、子供たちはマンションの4階の部屋で、ゲームをしたりおやつを食べて過ごし、そろそろどことなく様子がおかしいと思いはじめていた矢先、母親が迎えにきた。ディリアは「考えなおしてくれ、やり直そう」というセバスチャンの言葉に冷たく、深夜便でスペインに発つと告げ、タクシーで空港へ。子供たちが遊んでいた部屋を見に行ったセバスチャンは、そこでディリアしか持っていないはずの薬袋の殻を見つける。身代金にしても人身事故を起こして金のいる警視がリディアの計画に乗ったというところだ。空港に走ったセバスチャンは搭乗一歩手前で子供たちを取り返す。「君のしたことは犯罪だ。邪魔だてするなら刑務所行きだぞ」と夫に脅される。狂言で誘拐を仕組むほどのたいそうな問題ですかね。しょうもない。夫も子供を取り返したのはいいが、職は解雇されたし、男手ひとつで小学生ふたり育てるのは、先行きラクじゃないわね。ストーリーとしてはかなり荒っぽいけど、主演ふたりが表現した人物像に深みがあったのが救い。高層マンションの階段を俯瞰・仰観した幾何学的な構図が美しい。

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