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特集「B級映画に愛をこめて」

2015年10月26日

特集「B級映画に愛をこめて2」
ダブル・インパクト(1991年 アクション映画)

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監督 シェルドン・レティック

出演 ジャン=クロード・ヴァンダム/ヤン・スン

アクション不足のヴァンダム

アクション映画といえばジャン=クロード・ヴァンダムで決まり、という時期がありました。彼が30歳くらいからほぼ10年間。本作は31歳のときで、最盛期を迎えたヴァンダムの色香がほとばしっています。彼が以後得意とする二役もののはしりというか、赤ん坊のとき別れた双子の兄弟が、ひとりはロスでエステのインストラクター、ひとりは香港で密輸業者という役です。脚本もヴァンダムが書いている。だから見せ場は充分に知り尽くしているはずなのに、どことなく不完全燃焼みたいで物足りないのは、ヴァンダム映画のわりにはアクション・シーンが少ないのよね。彼の映画で最高のアクションは「キック・ボクサー」だったと思う。ストーリーなんか二の次、はじめから終わりまでこれ復讐のヴァイオレンス。キック・ボクシングの達人だった兄の仇を討つため、素人のヴァンダムが古老のお師匠さまに入門、猛特訓の結果リングにあがりリベンジする。ド単純なお話だったから、ヴァンダムは終始一貫アクションだったのね。それが最高だったのよ▼ケチをつけるつもりじゃないのだけど、ヴァンダム映画でだれか演技やストーリーを期待するだろうか。この映画で言えば弟のエステ・トレーナーのヴァンダムがジムの女性たちにトレーニングしている。ここが主役登場のファーストシーンね。ヴァンダムのなにがいいといって、筋肉バカとキッパリ区別するのは肉体の美しさよ、美しさ。シルベスタ・スタローンやシュワちゃんのアクションと、ヴァンダムのそれはどこがちがうか。ヴァンダムにはエレガンスがあったわ。過去形で書いてしまったけど、彼の30代のアクションはバレエ・ダンサーのように華麗だった。べつに開脚180度だけの技を指摘するわけじゃないの。彼の身長は低いほうではないにせよ、キアヌ・リーブスやトム・ヒルドストン(「マイティ・ソー」のルカ)のような高身長ではないわ。「マトリックス」のキアヌは、それは、それは、カンフーの鬼みたいに頑張ったけど、あれをもって優雅というかというと「?」だわね。あれは優雅というよりメカニックな美しさだったのよ。ひきかえCGを一切使っていないヴァンダムの汗が飛び、体臭が鼻の先にツンときそうなアクションの肉感的なこと▼それが年齢とともにだんだんトーンダウンしてきて…年齢とともにと言ってもこのとき31歳だから老けたという年でもないのだけど、役が双子だから二人分のアクションをやるかというと、どっちもチョボチョボで、敵役ヤン・スンとの対決にしても動きそのものが少ない。ヤン・スンは広東省出身の香港ボディビル・チャンピオン。中国本土からの難民だった彼がひとりで泳いで香港に渡ったというエピソードが伝えられている。彼の腕・胸・腹の筋肉が呼吸に応じて生き物のように動くさまは驚愕した。アクションスターのだれもが通る、宿命というのが肉体の衰えです。体がついていかなくなる。ツヤツヤの脂ののったたくましい筋肉はブヨブヨとしまりをなくし、腹はたるんで腰回りを贅肉が取り巻く。年齢による女の変化を醜いととらえるが、それをいうなら男だって醜くなる。女の補正下着を笑うなら。アクションスターのマッスルスーツはどういえばいいのだ。にもかかわらず第一線を維持している、数少ないアクションスターの、彼らが不覚にもみせたシワだらけの腹や、七面鳥のようなノドのたるみに敬意を▼さてヴァンダムであるが、中期の停滞がなにによるものか知らない。いうなれば「ターミネーター」だってB級映画だった。「夕陽のガンマン」も「荒野の用心棒」も超一級のB級だった。ヴァンダムのアクションがつまらなくなったのではなく、彼のアクションへのとりくみや映画への思いが、観客にとってつまらなくなったのだと思う。ジョン・ウェインは「駅馬車」までほぼ10年の間、名もないB級映画に出演していた。彼がその後弁護士を演じたか、ミュージカルに出演したか、シャムの王様を踊ったか。彼の映画人生は、ジャンルとキャラクターに徹することがサクセスの王道だったことを示している。ヴァンダムはどうだ。ジャンルもキャラも、反れるにも反れようがないストロングポイントと、健康な肉体をもちながら、停滞を招いたこと自体が不思議だ。よれよれの初老の保安官でオスカーをとった「真昼の決闘」のゲーリー・クーパー。脳梗塞で倒れて回復したあと「ベッドに寝ていてできる役はない?」と聞いたベティ・デイビス。60歳を超えるまで、狡猾にもこの役を温存していた「許されざる者」のクリント・イーストウッド。役者って、みなそんなものだろう。

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