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シネマ365日

2015年11月1日

特集「もてるにもホドがある70代」カトリーヌ・ドヌーヴ
逢いたくて(2002年 恋愛映画)

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監督 トニー・マーシャル

出演 カトリーヌ・ドヌーヴ/ウィリアム・ハート

シネマ365日 No.1556

しゃあない女 

特集「もてるにもホドがある70代」カトリーヌ・ドヌーヴ②

始めから終わりまでカトリーヌ・ドヌーヴが通しで出演している。トニー・マーシャル監督、よくぞここまで、ドヌーヴさまのワンマンショーにしてくれました、ひたすら感謝…なのに、なんなの、途中から出てくる変態ハゲのオッサン。これがだれあろう、オスカー俳優のウィリアム・ハートなのよ。ややこしい、もとい、繊細で複雑な役をやらせたら天下一品のヒト。代表作はもちろん「蜘蛛女のキス」。同作で彼はアカデミー主演男優賞と、カンヌ国際映画祭男優賞などを取っています。この映画ではドヌーヴが幻の恋人を追って、ニューヨークはエンパイア・ステート・ビルにくる、そこへ彼女に一目惚れしたカメラマンのマット(ウィリアム・ハート)が「手近なものを愛すべき」なんて都合のいい主張で横入り、おどろくべきことに、ドヌーヴをその気にさせる。ドヌーヴさま、あなたは手近なこのオッサンで手を打つために、わざわざパリからきたのか。あほらし▼「エンパイア・ステート・ビル」でピンとこられたでしょうが、本作は「めぐり逢い」をモティーフにしたラブストーリです。ヒロイン、ファネットをドヌーヴが演じます。彼女がウンといわなかったらこの映画は撮らなかった、と監督が言うほど、ツボっていますね。ドヌーヴは美術誌の編集者。シングルマザーで娘がひとり。だれがスクリーンに現れようと、ドヌーヴは愛の中心なのだ、というのがこの映画の主張です。娘の場合はこうである。「おはよう」娘がベッドの母親にキスする。ファネットはじろっと目をあけ「なぜキスを?」「前はママがしてくれたわ」と不満気な娘。「子供のときでしょ。いまは大人よ。母親の唇にキスする年じゃないわよ。唇は恋人のものだわ」「ママは恋人よ」これこれ、朝から何を言う。娘は自分のアパートもあるのに頻繁に母親のところへ「部屋があいていないか」見に来るママっ子だ。ある日娘の部屋に行ったら先客がいた。若い女性である。娘は彼女といっしょに暮らすという。これ、母親が娘のゲイに寛大であることをいうためにだけ作ったシーンみたいね。ドヌーヴには兄貴もいる。妹は酔っ払った兄を介抱し、兄妹は肩を並べて夜のお散歩。セーヌ川をみて寄り添う。兄妹仲がいいという主張は、この映画でなにか意味あるのか。ないぞ。要は娘からも兄からも、ファーストシーンの同窓会では、昔のクラスメートからもドヌーヴは愛されている、というだけのことだ▼そのドヌーヴさまの日課は、アーカイブの映画館で「めぐり逢い」を見て、フィリップという元カレの思い出に浸り涙することとくる。言いたくないが「昼顔」や「哀しみのトリスターナ」「インドシナ」あるいは「赤いブーツの女」や「ハンガー」「恋のモンマルトル」「夜の子供たち」など、ドヌーヴの莫連系・娼婦系・怪奇系・ゲイ系映画の系列からみれば、ファネットとは吹き出しそうなくらい可愛いキャラだ。ドヌーヴ自身も戸惑ったと思うが、そこはそれ「肝っ玉母さん」なのよ、彼女は。仕事とあらば受けて立つのだ。どこかで書いたけど、ドヌーヴってグラマラスでとても豊かな体格です。年は隠せない? なるほど。本作で彼女は59歳だ。腰回りは堂々と肉がつき、顔も一回り大きくなり、お尻はデンと貫禄、しわもふえお腹もでている。でもあえていうが、そんなレベルで足をすくわれるタマを、人は大女優と呼ばないのだ▼マーシャル監督はそのへんがわかっていたように思える。ファネットとは、人の話を無理に「聞こうとしたこともなく」男に「なぜ独身なのだ」と聞かれたら「あなたの妻になれとでも?」と叩き返す女。腹をたてた男がビンタを食らわすと、強がっていたくせに傷つく。自分勝手でわがままのいいたい放題、そんな女が恋の思い出にホロホロと、暗い映画館で泣いている。まるで少女ではないか。マーシャル監督は「ドヌーヴという女優は、映画そのもの」だという。これはほめ言葉か。もちろんそうにちがいないが「映画そのもの」という、余りに包含的な評し方には、どこか「なすすべがない」というか、ほかに「言いようがない」という感触がある。大阪弁でいう「しゃあないな」である。放っておかんと「しゃあないな」。あいつのやることだから「しゃあないな」。とにもかくにも「しゃあないな」。そんな女を想像すると、ドヌーヴがとても愛すべき女に思えてくる。

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