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シネマ365日

2015年11月4日

特集「もてるにもホドがある70代」カトリーヌ・ドヌーヴ④
ハッスル(1975年 犯罪映画)

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監督 ロバート・アルドリッチ

出演 バート・レイノルズ/カトリーヌ・ドヌーヴ

シネマ365日 No.1559

限りなく平凡なドヌーヴ 

特集「もてるにもホドがある70代」カトリーヌ・ドヌーヴ②

ドヌーヴがハリウッドのアルドリッチ作品に、というからどんな映画だろ、と思って見た。役柄はロス市警の刑事フィル(バート・レイノルズ)の恋人、フランスからきた高級娼婦ニコルだ。フィルはバツイチで市内に洒落たヒュッテふう借家を借り、ニコルと同棲している。どっちが家賃もっているのか知らないけど、高そうね。本作はそういう生活の匂いとは縁が薄い。ストーリーは派手さをおさえ、上手に起伏がこさえてあるものの、あの「「ロンゲスト・ヤード」で大ヒットをとばした監督と主演のコンビだとは思えない。だいいちカトリーヌ・ドヌーヴは完全に添え物です。最初にスクリーンに現れたときのクローズ・アップなんか見ると、余人をよせつけないヒロインだという、アルドリッチの主張はよくわかりますよ。わかるけど、キャラとしては限りなく平凡だわ。ロマン・ポランスキー(「反撥」)やルイス・ブニュエル(「昼顔」)が作りあげたドヌーヴの、足下にも及ばない▼しかしそんな視点は大きなお世話なのです。監督自身「これはラブストーリー」だと断っているくらいだから、相思相愛の恋人同士が、夢にまで憧れたローマに旅立つ一歩手前で、無残に男が殺されてしまうという人生のむなしさ。それがテーマなのであって、アルドリッチがドヌーヴを招いて、柄にもないラブロマに手をだし、失敗したとけなすことが、そもそも不当なのです。この凡作のなかで、アルドリッチがもうひとりクローズ・アップした女優がいます。アイリーン・ブレナンです。彼女は娘を殺された母親ポーラという役です。夫のマーティは退役軍人。朝鮮戦争から帰ってから人が変わった。彼らのひとり娘グロリアが、ある朝浜辺に死体となって横たわっていた。娘が生きがいだった夫は、死因は自殺と断定したフィルに「もっとちゃんと調べてくれ」と食い下がるが相手にされない。検視のため警察にきた夫婦に署内の警官たちは悔みの声もかけず、フットボールの中継や無駄話に興じている。死に顔をみた父親に事務的な挨拶をし、さっさと遺体を収容しようとするフィルを、父親は殴り倒す。「よくも娘をこんな姿に。なぜ助けなかった」▼母親は興奮する夫のそばでおろおろするばかり。夫にすがっている中年の主婦をブレナンが演じます。ところが筋書きが進むにつれ、ブレナンのシーンが何気にちょこちょこはさまるようになる。アルドリッチがムダな見せ場をつくるはずがなく、彼女の役割がだんだん重くなってくるなと予想できる。てきめんにブレナンの表情がはっきりとらえられるようになり、バート・レイノルズとサシでしゃべるアップは、たよりない主婦をかなぐりすてた、別人のような強い女の顔立ちです。ブレナンとドヌーヴでは、タイプがまったくちがうのですが、アップになったときのブレナンは、顔とか容貌に関係ない、堂々とした役者の力量を示しています。アルドリッチはどちらかというと、ブレナン親派ではないかと思ったくらいです。ブレナンの代表作をひとつあげるなら、やっぱりこれ「スティング」でポール・ニューマンの相方になった女詐欺師でしょう▼ドヌーヴはみごとなブロンドと思われていますが、地毛は黒髪、というかブルネットです。25歳で事故死した姉、フランソワーズ・ドルレアックがそうであったように。彼女たちは仲の良い姉妹でした。姉は妹に、「あなた、ほんとに男がたくさんいたわね」とあきれていた。一時仲違いしたのはドヌーヴがロジェ・バディムといっしょになったときで、姉によれば、嘆きのあまり姉妹の母は「いっぺんに老けてしまった」らしい。子供ふたりをなしたドヌーヴは、公の(たとえばカンヌのレッド・カーペットとか)で、場違いな行動をとる天然女優がいると、人が目をそばだたせないうちにさっさと隠してしまうような、なかなかの肝っ玉母さんです▼暑苦しいほど男臭いバート・レイノルズが、娼婦だとはじめからわかっているニコルに「君がほかの男といることを想像するとたまらない、でもおれにはどうにもできない」と、今さら懐疑的になり、ニコルは「地下活動で爆弾を仕掛けて父が死んだ、それ以来わたしは孤独よ。結婚して。わたしは変わるわ」という、物語の前後に全然関係ない身の上話が唐突に出てくるのも、この映画でよくわからないことのひとつです。男は妻と別れた、女は娼婦だから自由業だ、本人たちがその気なら、どうみても障害のない大人の男女が、くだくだと「君が他の男と云々」とか「父親が死んでから孤独云々」とか、あれじゃ無理やり刑事を死なせる以外、おさめようはなかったでしょうね。

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