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シネマ365日

2015年11月8日

特集「もてるにもホドがある70代」カトリーヌ・ドヌーヴ⑧
ロバと王女 (1970年 ファンタジー映画)

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監督 ジャック・ドゥミ

出演 カトリーヌ・ドヌーヴ/ジャン・マレー/デルフィーヌ・セイリグ

シネマ365日 No.1563

元祖ガーリー 

特集「もてるにもホドがある70代」カトリーヌ・ドヌーヴ

笑いました。原作はシャルル・ペローです。童話とは本来、人間の欲望を子供にわからせるために簡略化したものである、子供が退屈しないように、筋書きはシンプルで短いが刺激的、そこにはリスクマネジメントをはじめとした、危機回避や生きる知恵がつまっている、であるから本当は「残酷な何とか物語」といちいち銘打たなくても、童話とは一枚皮をめくれば残酷なものなのだ、なんとなればそこにあるのは人生の実相なのだから…というのが童話の実態でしょうが、本作はちょっと違う。徹底的に楽しいのだ。ドゥミはお気に入りのカトリーヌ・ドヌーヴ、ジャン・コクトーへのオマージュとしてか、パートナーのジャン・マレー、おなじみのジャック・ペラン、そしてこの人、デルフィーヌ・セイリグを加え、現在の「実写」の先鞭というべきファンタジーにつくりあげました▼ある国の王妃が亡くなった、死の床で「再婚するなら自分より美しい女性を」と国王(ジャン・マレー)に誓わせた。王妃は、黒髪だからわかりにくいかもしれませんがドヌーヴです。王女と二役です。国王は閣僚たちがもってくる再婚話に「妻より美しい」をたてにとって断り続ける。「知性が感じられん」「陰気だ」「退屈そうだ」「高慢ではないか」「偽善的だ」「ハゲかもしれん」どだい彼は面食いなのだ。ところが肖像画の最後の一枚を見て「なんと美しい。この柔和な顔立ち、清らかさ、エレガントにあふれ、肩の線の美しさをみよ」それは「へ、陛下、王女さまでございます」。国王は耳をかさず「王女と結婚する」おいおい。王女は父王の無体にあきれ、森に住むリラの精のもとに行く。彼女は王女の相談役みたいなものである。この妖精が、なにを隠そうデルフィーヌ・セイリグなのだ。このとき38歳。彼女は1990年58歳の若さで没したから、よほどの映画ファンでないかぎり彼女を知らないだろうが、ならばこの映画「去年マリエンバードで」のヒロインだと言ったらどうだろう。わけのわからないあの映画を眠りもせず、最後まで見てしまったのは、ひとえにデルフィーヌが美しい女優だったからだと、そう信じているファンは今でも少なくない▼妖精の入れ知恵で、無理難題をふっかける王女を父王は叶えてやる。「お父様、空色のドレスを」「よいとも」贅をこらしたドレスが出来上がる。「イマイチです、太陽色のドレスを」「わかった」「せっかくですがお父様、月色がほしくなりました」「そうか、よし」。王女は「なんてやさしいお父様、結婚しちゃおうかしら」これこれ。さすがの妖精も困惑し、最後の手段が「ロバの皮」だった。そのロバは国の宝である。ウンチのかわりに金銀硬貨、宝石を雨あられとお尻から噴出するのだ。かわいそうに娘に狂った国王はロバを皮にしてしまった。どうしよう。泣きつきに来た王女に、妖精は魔法の杖を与え、ロバの皮をかぶって隣国に逃げるように指示する▼絢爛豪華な衣装のドヌーヴもいいが、ロバの皮をかぶったドヌーヴが最高に似合っているのだ。ロバ女になったばかりに「汚い」とか「ブタ臭い」とか、下女の仕事を与えられるのはコスチューム・ハラスメントもいいところだが、そこはそれ、夜になってあばら屋にもどって、魔法の杖をひとふりすれば小屋の中は宮殿、小屋のまわりは電子ビームが張り巡らされだれも入れない、朝になれば王女はなにくわぬ顔でロバの皮をまとい、水汲みと豚小屋の掃除…そこへ王子さまが町へ視察に来ることに。ケーキにいれた指輪で王女を探しあてるのは「シンデレラ」と同じ。めでたく結婚である。国あげての挙式である。各国の王が勢揃いした。シャム王はネコと馬車と輿でやってきた。インドの王はゾウで、アフリカの王はラクダで、そして王女の実家からきた国王はなんと再婚し、その妻とはリラの精なのだ。ちゃっかりした妖精である。おまけに彼らが到着するのはヘリコプターとくる。ロバ・カトリーヌとプリンセス・カトリーヌのギャップといい、時空を無視したヘリコプターといい、国王の玉座が巨大な白猫であることといい、ドゥミのおふざけ、いやエンタメ度はもはやサイコー。ドヌーヴは27歳でした。無邪気な王女を演じたおトボケぶりは、元祖ガーリーと呼ぶにふさわしかったです。

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