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シネマ365日

2015年11月10日

特集「もてるにもホドがある70代」カトリーヌ・ドヌーヴ
ビッグ・ピクチャー 顔のない逃亡者
(2010年 サスペンス映画)

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監督 エリック・ラルティゴ

出演 ロマン・デュラス/カトリーヌ・ドヌーヴ

シネマ365日 No.1565

ドヌーヴさまは何処に 

特集「もてるにもホドがある70代」カトリーヌ・ドヌーヴ

本作を「カトリーヌ・ドヌーヴ特集」にいれたら詐欺だといわれるかもね(笑)。弁護士事務所の所長だというアンヌ、つまりドヌーヴさまは不治の難病にかかっており、残り時間を夫といっしょに過ごしたいから、事務所をやり手の若手エリート、ポール(ロマン・デュラン)に譲ると言う(でも元気そうだけど)。ポールは郊外で妻と子供ふたりの家があり、子煩悩のよきパパだ。妻サラは作家志望だが鳴かず飛ばず。ポールは才能ある妻が執筆に専念できるよう、静かな郊外に家を買い、自分は何十分もかけ、電車で職場に通う。このごろ妻はイライラが募り、夫婦の間はギクシャク。ロマン・デュランが大げさなまでの朗らかさで、早口にまくしたて、ムスッとした表情を崩さないサラに「いってきます、キスもしないのかい?」と、芝居がかってみえるほどのやさしい旦那ぶり。このへんでもう(お前、なにか企んでいるだろ)という気がする▼ちょこちょこっとドヌーヴさまは顔をみせます。彼女は57歳。ポールに「わたしの病気は治療法がないの。その気もないわ。あなたに会社を譲るつもり。子供もいないし、ジャック(夫)のそばに長くいたいの。未来がないってすごく辛い」という。まともなセリフはそれくらいですね。ただね、ロマン・デュランと朝のカフェで向い合ってすわり、なんだ、かんだ、彼の話をきいて相槌をうち、理解を示したりする。別のシーンでは、辞職するというポールの決心を聞き「では今日限り会社は解散よ、売却するわ。乾杯しましょう」とどこに持っていたのか、ウイスキーの小瓶をだしてグイ飲みする。文字で書けばそれだけなのだけど、やっぱりドヌーヴ独特の「女優の愉しさ」というオーラをまいているのね。この女優が出てきたら(いっぺんに愉しくなる)、スクリーンを見ているだけで(この映画、いいな)と思わせる、そんな「女優の精」のような力を持つ、じつに、じつに稀な女優なのよ。映画のほうは、サッパリだけど▼ポールは隣家の売れない写真家と妻が不倫していることを感づき、問いただしにいくと彼、グレッグはあっさり認める。ポールの趣味が写真であることを知っているグレッグは、ブルジョワのお遊びだとか、サラが嫌がるのも無理はないとかバカにし、逆上したポールははずみとはいえ、グレッグを殺してしまう。ポールは途方に暮れるが、子供たちを「殺人犯の子供」にしたくないと決心、パスポートを偽造し、グレッグになりすまし、ヨットで沖に出てクレッグの死体を沈め、自分は事故死を装う。あたかもグレッグが生存しているようにみせるため、彼のパソコンでメールを送ったり、ケータイをかけたり、このへんの条件整備は「太陽がいっぱい」現代版アレンジ。行方をくらましたポールはとある港町で写真家として出直す…のでしょうね、やたら町を歩いて「写していいですか」と声をかけ、市井の人のスナップや、恋人同士や、酒場の情景を撮る。住民のひとりの口利きによってポールは新聞社と契約。彼の写真展は大成功を収め、取材申し込みが殺到、でも彼は顔をだすわけにいかない…▼これだけでもおかしな点は充分だと思うが、念のためもう少し書こう。有名になってしまったポールは、正体がばれないうちに南米に高飛びすることに。ボロ貨物船に乗り込んだある夜、甲板の騒動で目をさますと、もぐりこんでいた密入国者が見つかり、リンチにあったあげく海に放り込まれているのだ。シャッターを切っていたポールもみつかり、ついでに海に放り込まれてしまう。船員のひとりが落とした救命ボートで九死に一生を得たポールは、同じく命拾いした密入国者のひとりと南米のどこかに上陸、船上での事件を写した特ダネもの写真を、いっしょに助かった水夫を通じてメディアに売り込む…▼それまで弁護士やっていた男が、苦もなくパスポートを偽造し、見も知らない国で写真をパチパチ撮っていたら、親切な人がつぎつぎ現れ、ビジネスを保証してくれる、そうそう、きれいな恋人までできるのだ、でも顔がうれることはまずい、仕方なく南米に。あらくれ男どもに海に投げ込まれるが、親切な水夫が密かに救命ボートを海に落としてくれる、陸に着けば右も左もわからない外国で、たちまち写真が売れるとは、なんなのだ、これ。ドヌーヴさまだって死にそうになかったし。原題は「自分の人生を生きたかった男」…とはいうものの、ディズニー映画だってこうはいくまいと思える幸運の連続を、映画にしてどこが面白い。

 

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