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特集「夏こそベストコレクション」

2018年7月31日

特集「夏こそベストコレクション」⑧
ルージュの手紙(下)(2017年 家族映画)

監督 マルタン・プロボ

出演 カトリーヌ・ドヌーブ/カトリーヌ・フロ

シネマ365日 No.2557

大人向けのやさしさ

夏こそベストコレクション

ベアトリスは一瞬だが、意識が消えるようになっていた。クレールが訊く「薬は飲んだ?」「朝だけ」「どうして」「まずいから」。気分が悪いとベッドに横たわる。眠ったようだ。毛布をかけようとしたクレールは、トド、いや大きな子供みたいなベアトリスを抱いて、添い寝する。夜勤なので付き添いを隣の菜園彼氏に頼む。帰宅するとベアトリスと菜園彼氏が和気あいあいとキッチンでコーヒーをたてている。「カフェオレはやめたほうがいいわ。全身麻酔の後で肝臓が疲労しているのよ」とクレール。「カフェオレくらい」なんと彼氏はベアトリスの肩を持つ。クレールがピシャッと彼氏を追い出すと、ベアトリスがとがめるように「男に冷たいのね。なぜ紹介してくれないの」さらに訊く。「あなたの母親は私を憎んでいた?」「世界を憎んでいたわ。いつも一人でもがき苦しみ、幸せじゃなかった」苦しそうに実母を振り返るクレールに「あなたを産んで幸せだったはずよ。私ならそう思うわ」ベアトリスは、生き方はハードだが気持ちはやさしい▼手元不如意のベアトリスは金時計を質に入れようとしたが断られた。小さな町に金の時計なんか買い手がいないというのだ。惨めになったベアトリスはやみくもに歩き出す。クレール「どこ行くの。昔から逃げ足は速いわね」「好き勝手に生きてきて、今はあなたに頼っている。医療費も払えない」クレールはベアトリスの頬をはさみ「父が言っていた。あなたのキスが好きだって。あなたはキスで幸せにできる人よ」そう言って道の真ん中でベアトリスにキスする。エメラルドの指輪を外しドヌーブに「売って」。菜園に連れていく。クレールの後ろから「そのコートは最悪よ。お金ができたら買ってあげる」振り返らず「何度も言わないで!」ベアトリスへこたれず「自分の後ろ姿を見たら?」。菜園彼氏は国際長距離トラックの運転手だ。何日か留守にして帰ってきた。クレールとベアトリスを乗せドライブに出る。緑の窓外を見るベアトリスの表情が透き通っている▼夜、胸騒ぎがしてクレールは目をさます。ベアトリスがいない。探しまわるが見つからない。手紙があった。「出て行くわ。スーツケースは必要ないから置いていくわ。シルクのシャツは似合うから着てね。ポール(菜園彼氏)によろしく。ドライブはいい思い出になったわ。シモンとリュシー(クレールの息子夫婦)にもよろしく。お腹の子に会えないのが残念よ。きっと大物に成長するわ。あなたも私も、そう悪い人生じゃない。愛しています」そして行方を絶った。クレールの勤務する病院は老朽化のため閉鎖、新勤務先は年間4000人の出産を扱う大病院だ。案内嬢が新採用のクレールに院内施設を紹介しながら「あなたが知る医学は時代遅れです。産婦人科は最新医療機器と技術を持ったハイオクの…」クレールは断る。「あんなところで働きたくない。私の経験を伝えるわ」菜園彼氏は明るくいう「イモを食って暮らそう」そして船着場に来て「…ボートが離れている」。目をやった先にセーヌ川が広々と流れていく。クレールは届いた一通の封書を開けた。ベアトリスにわたしたはずの指輪が入っていた。便箋に文字はなく、真っ赤なキスマーク。これが「ルージュの手紙」の意味だ。束縛されない、強制されない、好きなことをやり、どんな結果になってもこだわらない、そんなベアトリスといつしか母娘を超えた女同士の友情で結ばれ、人生に積極的に打ってでるクレール。ベアトリスが死を選んだことをクレールは知った。悲しみかはかなさか、わからないものを感じたが、これだけは確信した。未練もなく欲もなく、ひょうひょうと最後まで、望みを貫く人生だったベアトリスが、自分の中で生き続けることだ…甘さのない、でもユーモアのある大人向け映画です。ラストのルージュが鮮やかに決まっています。