女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「B級映画に愛をこめて」

2018年8月20日

特集「B級映画に愛を込めて9」⑤
ヘンゼル&グレーテル(2013年 アクション映画)

監督 トミー・ウィルコラ

出演 ジェレミー・レナー/ジェマ・アータートン/ファムケ・ヤンセン

シネマ365日 No.2577

安っぽい魔女 

B級映画

 親に捨てられた兄妹が魔女のお菓子の家に監禁され、兄ヘンゼル(ジェレミー・レナー)は子供時代のお菓子の食べ過ぎと運動不足でのちに糖尿病になり、妹グレーテル(ジェマ・アータートン)は不思議な夢によって母親が白魔術を使う大魔女だったことを知る。白魔術の魔女は「ええもん」で黒魔術の魔女は「わるもん」である。兄妹は魔女の家脱出のさい、魔女退治は、捕まえた魔女を火あぶりにするのがいちばんよい、という結論を得ており、魔女ハンターとなって国中を旅し、村人を苦しめる魔女狩りプロフェッショナルとなる。血の満月だとか、白魔女の応援だとか、大魔女ミュリエル(ファムケ・ヤンセン)との対決だとか、兄妹を狙う保安官が大魔女の手先だったとか、テキパキ見せ場を作っているのですが、どうにもこうにも「魔女狩り」という言葉に引っかかって、チャラチャラ魔女狩りをやるこの映画をとても安っぽくしてしまった▼娯楽なのだから無視すればいいようなものだが、物語の背骨がゆがんでいると思うのだ。女性史には中世をピークに隠蔽と陰険に象徴される「魔女狩り」という暗黒面がある。何万人もの女性が自分では何ひとつ発言できず、拷問と虐待で殺されたことを思うと、同調圧力の下で無力だったマイノリティの悲劇、社会が女性をいかに抹殺してきたかを思わずにはおれない。本作でヒロイン、グレーテルが白魔術の大魔女の娘であり、「ええもん」が「わるもん」をやっつける勧善懲悪なのだとわかったところで、コンセプトそのものの悪趣味はおおいがたい。しかもジェレミー・レナーはインタビューで、マシンガンで魔女をガンガンやっつけるところは「胸スッとした」などと、どこまで「魔女狩り」を知らないのか、カン違いしているか、どっちにせよインテリジェンスを疑った▼メルヘンの悪役がダークヒロインとして捉え直され、大女優たちが水を得た魚のように生き生きと演じている。「スノーホワイト」のシガニー・ウィーバー、「シンデレラ」のケイト・ブランシェット、「マレフィセント」のアンジェリーナ・ジョリー、「スノーホワイト/氷の王国」のシャーリーズ・セロン。これらはダークヒロインを物語ることによって、いわゆる「魔女」として、本筋の「端役」「悪役」「劣役」の位置に生き埋めにされていた女性たちのパワーに、息を吹き返させた。どれもみなヒットしたのは、子供向け・家族向け映画だったからというより、一流の女優たちが作品の解釈に共感し、多くの観客が彼女らの演じる女性像に共鳴したからだ。この映画がどこまで広い共感と興奮を呼んだか聞いてみたい。ただファムケ・ヤンセンが大魔女の風格にぴったりの悪女役だったのが救い。彼女は「96時間」三部作で、リーアム・ニーソンの元妻を演じた人。