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特集「B級映画に愛をこめて」

2018年8月23日

特集「B級映画に愛を込めて9」⑧
あきれたあきれた大作戦(1979年 コメディ映画)

監督 アーサー・ヒラー

出演 ピーター・フォーク/アラン・アーキン

シネマ365日 No.2580

どうしようもない失速

B級映画

 いくら役者がよくても監督がよくても、つまらない映画はできてしまう見本みたいな作品。ピーター・フォークといい、アラン・アーキンといい、一流の俳優が音程を踏み外したとしかいいようがないわ。「芸術的なまでの掛け合い」? ないことはないですよ。ショボイけど。そう、この映画はすべてに失活しているのです。ストーリーが荒唐無稽なことはよくある、許せる、プロセスなり、セリフなり、どこかのシーンで笑わせてくれさえすれば結果オーライだから取り立ててケチはつけない。アラン・アーキンは彼の持ち味の硬派なアウトサイダーどころか、どこにでもいる歯科医が、ピーター・フォークに丸め込まれ、ドタバタしているだけだし、ピーター・フォークだって、彼の傑作には必ずある毒のような「苦味」が皆無だった▼出だしは悪くないのよ。でっかい磁石で財務省の現金輸送車を車ごと釣り上げ、塀で囲った空き地にドカン、手際よく錠前を焼き切り、盗むのは現金でなく、紙幣の原版。数日後ニューヨークの有名歯科医シェルドン(アラン・アーキン)の家では、娘の婿の両親の訪問を、首を長くして待っているが到着が1時間も遅れている。やってきたのはビンス(ピーター・フォーク)と妻のジェーン。ビンスこそ原版を盗んだ一味のボスだ。食事の間じゅう、ビンスはせかせかと熱帯の巨大ハエについて喋り続け、国際電話を受けるからと地下室へ。そこで盗んだ原版の一つをダクトに隠す。謹厳なシェルドンはビンスの傍若無人な行儀の悪さが我慢ならない。結婚は許さんと息巻く。「私が結婚するのは父親でなく息子よ」と娘。「親父を見たら息子はわかるものだ」とパパは頑強に無視。いい線いくかな、とこの辺りまでは思っていました。翌日シェルドンの診察室にいきなりやってきたビンスは自分のオフィスの金庫から黒い鞄を盗んでくれと強引に頼む。渋々引き受けたのがドツボ。盗み出したもののオフィスの前で、発砲されたシェルドンは通りかかったタクシーに逃げ込むと、中に乗っていたのはビンスだ。動転するシェルドンに「自分はCIAのエージェントで、重大な世界的犯罪を防ごうとしている。心配するな、君はすぐ自由にする。だがちょっと寄り道させてくれ」。ことば巧みにシェルドンを乗せて空港に走り、南米の小さな共和国の首都ティハダまで連れてこられた▼ティハダの空港(細長い滑走路があるだけ)では大物政治家が迎えてくれたがあっけなく射殺される。銃弾をかいくぐり安ホテルに逃げ込んだ二人。シェルドンは隙を見てアメリカ大使館に救いを求めたところ、情報担当のバリーは驚くべき情報を教えた。ビンスは狂っていて、過去に彼と一緒に仕事したものは必ず殺された。西側社会にインフレを引き起こす貨幣偽造団の企みを暴き現行犯逮捕するため、ビンスは敵の本拠地に乗り込んだわけだが、あえなく捉えられ銃殺を宣告される。くどくどと銃殺を引き延ばすピーター・フォークと、それに付き合うボケ役のアラン・アーキンが間延びしていて痛ましい。二人は無事CIAに救出され、娘と息子の結婚式に急行。ヘリコプターで式場に降り立つという離れ業で到着する▼ピーター・フォークはこの2年後の「カリフォルニア・ドールズ」で、アラン・アーキンは「ハバナ」「シザーハンズ」を経て「摩天楼を夢みて」で、やっと彼本来のアラン・アーキンを見た思いがした。彼は本作で製作総指揮を兼ね、映画は900万ドルの制作費で3800万ドルの興収だった。大ヒットよね。勝てば官軍とはいえ「愛すれど心さびしく」の主人公を知っているファンからすれば、どこがよかったのだろう。