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特集「アニマルフェスティバル」

2018年8月27日

特集「それいけ!アニマルフェスティバル6」①
ROAR/ロアー(1982年 事実に基づく映画)

監督 ノエル・マーシャル

出演 ティッピ・ヘドレン/ノエル・グリフィス/メラニー・グリフィス

シネマ365日 No.2584

動物映画のカルト 

それいけ!アニマルフェスティバル6

 オープニングにこうあります。「本作はアメリカ人道協会の規範に従っています。動物が傷つく場面がありますが実際には無傷です。動物たちは訓練を受けておらず、自由に演じているため、共同監督・脚本家としてクレジットされる資格があります」そこでロビーやとガールというライオンの名前があがり「マサイ族とケニアの人々に敬意を表します」と字幕に出る。ティッピ・ヘドレンは1982年、「ロアー」の日本公開のため来日し、インタビューに答えています。「ネコ科動物の保護活動で私を知る人もいると思います。1970年代に情熱を捧げたのがロアーの製作でした。家族全員で参加しました。夫となったノエル・マーシャル、娘のメラニー・グリフィス、3人の義理の息子。何年もかけ撮影し、数年にわたりライオンと暮らしました。ライオン、トラ、ヒョウ、黒ヒョウ、あんまり数が多くなり破産すると思いました」彼女は「鳥」で着ていたコートを手放し指輪も全部質入れした。息子は振り返る「私たちは無一文。父とティッピの財産は底をついたが、父がどうにかやりくりし、5年掛かって撮影に入った」▼特撮もCGもなし。ティッピが娘と息子とともにケニアに来た。落ち合うはずの夫は現れず、バスに乗って辿り着いた保護区の家は池に建った木造の三階建。「まあ、素敵」と遠目に見て喜んだが、そこは巨大なライオン、トラ、ヒョウが我が物顔にのさばっていた。目前に近づいたライオンの頭の大きなこと。悲鳴をあげ逃げ回ると面白がった動物たちは、軽々と跳躍して先回りする。「ボートだ」息子が叫び、たった一艘の小型ボートに乗る。いくら漕いでも沖に出ない。牡ライオンがしっかり船尾に手首をかけていた。振りほどいて突っ走るとボートは転覆。水泳上手なトラがスイスイ近づいてきた。美しい縞模様をケニアの太陽にきらめかせ泳ぎまくる。岸辺の茂みから太い牙を持った小山のようなアフリカゾウが現れた。打ち上げられたボートを片脚でバリーン。鼻で巻き上げ地面に叩きつけ、仕上げは牙でグサグサ。一家はショックで死にそうになる▼夫が帰ってきて事態は収拾。メラニーが一番先に動物たちと友だちになった。ライオンとじゃれ合う娘にティッピが悲鳴をあげると「襲うつもりならとっくに殺しているわよ」床もソファも家の中も外も150頭のネコ科が悠然と歩く。平和な光景ばかりではない。密猟者もいた。犠牲になったライオンもいた。密猟者はズタズタにされた。ライオンのオス同士の争いもある。ファミリーを作るライオンは、よそ者との戦いがボスの仕事だ。弱腰を見せたら負け。ボスの資格なしと見なされ、仲間から戦いを挑まれる。どんなに強敵であろうとも屈することはできない。それがボスの宿命だ。仕留めた獲物を家に運び込むと、先を争って平らげる。白い骨のついた太腿や、食いちぎった脚や内臓が床一面に散乱し、肉の取り合いになると真っ赤な口を耳まで開き、血に濡れたヒゲをビリビリ震わせて威嚇する。彼らのサイトではメラニー・グリフィスのベッドで昼寝するライオンは毛布をかけてもらい、太い前脚を握手するように差し出している。ティッピはライオンと床に寝そべり、タテガミのある頭をクッション代わりにして新聞を読む。後ろ足で立ち上がったライオンが冷蔵庫に頭を突っ込んでいる。彼らはメラニーの背中を、ふくらはぎを、ガブッと甘噛みしてカスリ傷ひとつつけない。いいなあ。こんな生き方もあったのだ。全財産をはたいた映画はヒットしなかった。あまりにも撮影に時間がかかりすぎ、ハリウッドが関心をなくしたのだ。惨憺たる興収だったが、あれから36年。この映画は野生動物と環境保護のカルトとなった。ROAR(ロアー)とは猛獣の吠え声のこと。動物好きであってもなくても、生きるって、無心であればいいのだと思わせてくれます。