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特集「アニマルフェスティバル」

2018年8月29日

特集「それいけ!アニマルフェスティバル6」③
ロブスター(上)(2016年 社会派映画)

監督 ヨルゴス・ランティモス

出演 コリン・ファレル/レア・セドゥ/ベン・ウィショー/レイチェル・ワイズ

シネマ365日 No.2586

狼とペンギンはダメ 

それいけ!アニマルフェスティバル6

 シュールです。独身者は45日以内にパートナーを見つけ、子孫を残さないと、人間の資格がないと判断され、動物に姿を変えられる近未来のお話。主人公のデヴィッド(コリン・ファレル)は独身者ばかりの収容施設「ホテル」で支配人から説明を受けています。「ここで恋に落ちなければ動物になる、でもそんな悲しいことじゃない。動物になっても伴侶は探せる」と支配人。「ただし自分に似たタイプを選ぶことよ。狼とペンギンはダメ。ラクダとカバも。念のため聞いておきます。恋人探しに失敗したらどんな動物に?」「ロブスターです。100年も寿命と生殖能力がある。貴族みたいに由緒がある」「なかなかいい選択だわ」とお褒めに預かる。デヴィッドが連れてきた犬は数年前、犬に変えられた兄でした▼ヨルゴス・ランティモス監督の「籠の中の乙女」にも猫や犬が登場し、家庭内で子供達を監禁する父親が主人公というサイケな映画でした。本作の次が「聖なる鹿殺し」ですから、よくよく動物と人間のシュールな関係が好きなのでしょう。ホテルとは名ばかり、政府が決めた生殖のための強制収用所施設です。独身は社会の罪悪という観点からしてひどい。入居者は滑舌が悪くうまくしゃべれない男、足の不自由な男(ベン・ウィショー)、冷酷非道な女、鼻血をよく出す女。とりあえずカップルになって義務を果たさないと街には戻れない。デヴィッドは冷酷な女に近づきますが、彼女は「見せかけの愛は汚らわしい」罰として犬(兄)を殺してしまいます。デヴィッドは女を麻酔銃で眠らせ、動物に転換させる部屋に運び込み復讐しますが、ホテルに嫌気がさし、森に逃げ込む。森にはホテルの管理体制に抵抗するレジスタンス一党がいて、リーダーがレア・セドゥです。人物たちは名前もなくホテルでは部屋番号で呼ばれました。森にも掟があります。恋愛禁止、いちゃつくのも禁止。自分の墓は自分で掘っておく。一難去ってまた一難。ホテル派もレジスタンスも、自由と個性を奪うことによる支配体制であることに変わりはない。そんな人間たちが罰として動物に変えられるのだからお笑いです。動物こそ自己能力によって、責任と言ってもいい、自力で生きる自由の種族ではありませんか。監督は逆史観によって何をあぶりだそうとするのでしょうね。レジタンス一党がホテルを襲撃するのは、彼らが理想とするカップルの愛が、いかに偽善的かを暴くためです。脅されたら平気で妻を殺すことに賛同する夫、森へ追放される日を延ばすために、わざと鼻血を出してカップルにまでこぎつけた足の不自由な男。裏切りとインチキばかりの「愛」です。人間とはかくもいい加減な動物なのだ、と言うところでしょうが、別にホテル派なり、レジスタンス一党なりに属さなくとも、それなりの年になれば、口にこそ出さね、あいつもこいつもいい加減で無責任で口先男に口先女で、罪作りでヘタレだ、くらいは(自分も含めて)うすうすわかっていそうなもの。風刺と皮肉で描ききれない、もっとえぐり取った洞察が欲しい。