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特集「アニマルフェスティバル」

2018年8月31日

特集「それいけ!アニマルフェスティバル6」⑤
ディープ・ブルー(2004年 ドキュメンタリー映画)

監督 アラステア・フォザーギル/アンディ・バイヤット

シネマ365日 No.2588

青いコスモス 

それいけ!アニマルフェスティバル6

「この星は青い惑星。紺碧の水が地を圧倒する。青い海それは生命の源」。とても詩的なナレーションとともに、小山のような波が画面いっぱいに寄せては返す。本作の主張は多分ここだろう。「もっとも深い海を訪れた人間は宇宙を旅した者より少ない。人間はこれまで海の中よりも星や月に目を向けてきた。だが私たちを絶えず驚かせるのは海だ」。要約するならこの映画は「海の豊穣」への畏敬です。「海には陸よりも多くの生物が生息する。不均等に分布し青い宇宙に隠れている」それぞれの生物の生態が単に映像での紹介になった恨みがありますが、それでもスクリーンに広がる「青い宇宙」の映像は素晴らしい。地上での人間の諍いや競争が、いかにちっぽけなものか、青い大陸は思い知らせる▼それでも生あるところ死あり。体重30トンの親クジラを襲わず、子供を狙うシャチ。母親から引き離そうと子供を追い回し、疲れてきた子供クジラを血祭りにあげる。生存と残酷は同義語であると、人間の幻想を現実に引き戻す。50万羽のアホウドリが何千キロにも及ぶ旅の末、南太平洋の小島に産卵に来る。山階鳥類研究所などが小笠原諸島でひな一羽が孵ったと発表したのは2018年5月だ。それまでアホウドリは乱獲によって絶滅の危機にあった。アホウドリという和名そのものがこの優美な「海の女王」を侮辱している。50万羽が求愛のくちばしを鳴らすクラッタリングは、人間への批判のごとく響く。海は生と死と再生が無限に繰り返される舞台。水の透明な浅瀬にだけ見られる生命の輪、サンゴ礁。繊細なサンゴ礁の世界を支えるのは無数のイシサンゴ。骨格がサンゴ礁を形成し時には全長数百キロに及ぶ。青、紫、黄色、色とりどりのサンゴの世界にも縄張りがあり、隣人を攻撃し、生きたまま食べてしまう。夜が来ると光を頼る生き物はサンゴの陰に身を隠すが朝をむかえられる保証はない。夜行性の生物は獲物の筋肉から出る電気を感じとり、狙いを定める▼地球の北と南の地の果てにも、厳しい命の営みは繰り返される。南極の皇帝ペンギンは繁殖地を目指し160キロの凍土をあの歩行で歩く。円陣を組んでマイナス50度、風速45キロの吹雪に耐え、3カ月絶食して卵を守りメスが帰るのを待つ。北極の冬は海を堅固な陸地に変え、ホッキョクグマは腹ペコだ。子グマに狩りを教え、氷の下に隠れたアザラシを探す。暖かい陽光が水を溶かす頃、コククジラは北極海目指し1万キロの旅に出る。生後3カ月の子供を連れゆっくりと泳ぐ。子供を狙うのが海のギャング、シャチだ。エイはさすらいの巨人。海流に乗り、餌を求め数千キロを旅している。海には永遠の闇の世界がある。太陽のわずかな光さえ届かない。深淵に揺らめく小さな青い光は生き物か、妖精か。生命の豊かさと生きる厳しさと謎をはらみ、光と闇と危険が混在する青いコスモス。人間の日常がどうでもよくなるくせに、そこは別世界の「日常」。人間はこの海から生まれたのだ。思わず思った。こんな壮大な故郷があったのだ。小さなことは気にしない。