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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年9月11日

特集「LGBT映画に見るゲイ10」260
ミュリエルの結婚(1996年 ゲイ映画)

監督 P・J・ホーガン

出演 トニ・コレット/レイチェル・グリフィス

シネマ365日 No.2599

ふたりの「これから」 

LGBT

シャンプー台の向こうに」でゲイを好演したレイチェル・グリフィスの作品です。なんでこの映画がゲイか。ヒロインのミュリエル(トニ・コレット)は、一生車椅子になったロンダ(レイチェル・グリフィス)と暮らすためにシカゴに行くのよ。介護の生活を引き受けるのね。偽装結婚とはいえ、憧れの結婚式を挙げ、せっかく結ばれたイケメンの水泳選手とも別れて。ただの仲良しで誰がここまで腹をくくりますかい。思い出すのはテイラー・ハックフォード監督の佳品「黙秘」よ。母親に雇用先の女主人の殺人容疑がかかる。娘は母親が犯人ではないと断言する。何となればふたりは愛し合っていたのだ、週給たかが20セントで、しかも寝たきりの女主人の面倒を22年間母親は見てきた。ふたりで寄り添ってひっそり暮らしてきたのだと。娘役はジェニファー・ジェイソン・リー。母親にキャシー・ベイツが四つに組んだ力作でした▼太ってブスで高校は落第、市会議員の父は権利主義の権化で「就職させたら一ヶ月でクビ、家でゴロゴロ、外に出ると万引きで逮捕、お前はクズだ」弟妹も揃ってミュリエルをバカにする。「お姉さんはサイテー」が妹の口癖だ。母親は父親に一言もいえない。高校時代の友だちはミュリエルを仲間はずれにし、それでも彼女らを追って家の貯金を使い込みリゾートに追いかけるミュリエルは、徹底的ないじめられキャラだ。バカンス先でロンダと会う。「私も高校を中退したの。ここへはどうして」ミュリエルは婚約したとウソをつく。「でも時々自分はクズだと思うの」と本音を吐く。ロンダは「何言っているの。あなたはすごいわ。高校時代は黙りこくって無口な子だったけど、結婚を申し込まれるくらいだもの。独身最後の楽しみね」ミュリエルはますます結婚強迫症に落ち込む▼ミュリエルはロンダの住むシカゴに移りレンタル・ビデオショップで働く。ある日ロンダの脚が動かなくなる。「腫瘍が脊椎を圧迫していて脚への神経を侵しています。今なら手術で除かれます」。ロンダは手術を受ける。迷惑をかけているというロンダに「昔は一日中アバを聴いていた。あなたに会ってから聴かなくても平気なの。アバの歌みたいな人生だもの」ロンダは二度と元の街に戻らないと約束してくれと頼む。ミュリエルは婚約なんかしていない、嘘っぱちだったと白状し、でもシカゴに来たら男に誘われた「もうあの女じゃないの」「あの女?」「バカでデブのミュリエルよ」それから自分のことをマリエルと名乗る。父親の収賄がバレ議員を辞職した。不倫も発覚し居直って離婚だといい母親は自殺した。弟妹は自分達の面倒を見てくれる人がいなくなったという理由で嘆いている。こいつらこそクズである▼ロンダのガンが再発した。手術で脊椎の一部を切除し歩ける見込みはなくなった。ミュリエルはオリンピック出場権を得るために偽装結婚する男と結婚式を挙げる。式の日、ロンダは隠れてマニュエルを見ていたが見つかってしまう。「失礼するわ。母と街へ帰るわ。あなたに見限られたから一人では部屋代も払えない」「それは違うわ。航空券を買ったのよ」ミニュエルは謎のようなことを言う。「あなたは変わったわ。マニエルはミニュエルの足元にも及ばない」ロンダは去る。ミニュエルは新婚の青年に告げる。「愛してないの」「僕もそうだけど、いや、わからない」青年はミニュエルの素朴な可愛らしさに惹かれていた。指輪を返しベッドを共にし「頑張ってね」「君も」と言って別れた▼高校時代のイジメ4人組が、メダル候補と結婚して有名になったミニュエルの取り巻きとなって、ロンダの家で騒いでいる。つかつかとはいってきたミニュエルが「一緒にシドニーに戻ってくれない」「なぜ私が行くと思ったの?」「友だちだから」「いいわ」母親に「ママ、悪いけど一緒に住めない」クルリとイジメ組に向きなおり「あなたたちは雌ブタだし」。キツゥ〜。車の中からふたりは「サヨナラ、懐かしい街並み、さよなら、よく行ったお店、さよならポーポス・スピット(これが街の名)」ロンダといるとミニュエルはのびのびする。何をしても楽しい。ふたりで歌う「ウォータールー」はジンとくる。物語の底に酷薄な現実を織り交ぜながら、ふたりで選んだ彼女らの「これから」が明るい。改めて彼女らの芸達者ぶりがわかります。