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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年9月15日

特集「LGBT映画に見るゲイ10」264
火星のカノン(2002年 ゲイ映画)

監督 風間志織

出演 久野真紀子/中村麻美/小日向文世/渋川清彦

シネマ365日 No.2603

浮遊恋愛 

LGBT

 ゆったりした映画ね。スロー・ペースがヒロイン、絹子(久野真紀子)の性格をそのまま表しているようだわ。29歳、チケット・ショップで働く絹子は、妻子持ちの公平(小日向文世)と不倫中だ。火曜日だけ会う。どっちもゆったり関係を続け、雰囲気として仲は穏やかだが、熱愛でもない。公平はデートの最中、時計ばかり気にする男。時間をやりくりして絹代と熱海に行ったら、妻から子供が熱を出して苦しそうだと電話がかかってくる。絹子は不機嫌になることもなく「帰ってあげて」とやさしいことをいう。そのくせ腹のなかはむしゃくしゃして、寂しい。絹子のアパートの隣に引っ越してきた聖(中村麻美)は絹子が好きで、彼女が風邪をひいたら温かいスープを作るし、お腹が空いたと聞けば甲斐甲斐しく食事の支度をする。思い切って絹子にキスしたら、突き飛ばされた。自分の部屋でショボンとしていると廊下に足音がする。さっきの邪険な態度も忘れ、聖は飛び出して迎える。するとどうだ「一人にするなよ」と絹子はいって抱きつくのだ。「一人にしない、絶対しない」と聖は抱きしめてやる▼ややこしい女ね、絹子って。キャラがはっきりしているのは聖と彼女の男友達、真鍋(渋川清彦)だ。彼は自称「路上の詩人・占い師」だ。絹子に好意を持ち、なりゆきで一夜を共にするが、それ以上追いかけようとしない。彼は彼で、絹子の曖昧さを押し破って侵入しても、上手くいかないと知っている。聖は公平に。どうやったら絹子を歓ばせることができるか自分を抱いて教えてくれと突撃インタビュー。笑いそうになるのだけど、聖の一生懸命に対して悪い気がしてやめる。聖と絹子は一軒家を借り、聖は念願の絹子との暮らしを始める。絹子はそれなりにゆったりと聖を受け入れているが、思い描くのは公平とのベッドだ。結論も見通しも示さず映画は終わる。ヨーロッパ映画的な風合いね▼ま、恋愛が命がけでなければならぬというわけでもなし、穏やかに過ぎる曖昧な関係も愛情のひとつの形なのだろうし、絹子は公平の家庭を壊すつもりはなさそうだけれど、どう見ても不倫は彼女の便宜主義でしかないわね。聖の純情を受け入れるのも肌さびしいだけ? 聖っていい子だと思うのよ。料理が好きでせっせと絹子の好きなものを作ってあげようとする。誠実そのものよ。絹子のようなヌエみたいな女を好きになったのが運の尽きね。 公平にしたって家庭に波風立てようとしない絹子が便利いいのだし。どっちにせよ、この二人の、ふわふわ浮遊するエゴイズムだけで、着地点の見えない恋愛を、好き嫌いは別にして、風間志織監督は上手に捕まえているわ。よくできた映画だけれど、感動するのだけが難しい。