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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年9月17日

特集「LGBT映画に見るゲイ10」266
お嬢さん(上)(2017年 ゲイ映画)

監督 パク・チャヌク

出演 キム・ミニ/キム・テリ

シネマ365日 No.2605

ピカイチの復讐劇 

特集「LGBT映画に見るゲイ10」

 豪腕パク・チャヌク監督! 原作はサラ・ウォーターズの、先に映画化された「荊の城」をパク監督が大胆に改変しました。舞台はヴィクトリア朝から日本統治下の朝鮮に。「荊の城」の全体をおおう沈鬱、暗い謀略のムードが一掃され、女二人が(あばよ、やってやったぜ!)と意気も晴朗に勝利の美酒を酌み交わすのが見事。映画の早い段階で、女たちはあっさり策略をばらしあい、手を組みます。ここが新鮮です。男たちが欲望と金のため、女をふたり、がんじがらめにした。一人の男伯爵は詐欺師。莫大な遺産を相続するお嬢さんと結婚して金をせしめたい。セレブの秀子お嬢さん(キム・ミニ)は、自分を変態の男たちの見世物道具にする叔父からの脱出のため、伯爵の話に乗る。お嬢さんが家出したままでは捜索されるから、身代わりを精神病院に送り込み、一生閉じこめておくことにする。その身代わりにされるのがメイドとしてやってきた珠子(キム・テリ)だ▼もう一人の男は秀子の叔父、公爵。図書館みたいな広い書斎にエロ本・稀覯本がぎっしり。定期的に読書会と称し、政財界のエリートを招待し、秀子に朗読させる。身振り手振りのパントマイムもさせる。宙吊りにした木工人形と交接の体位を取らされる。招くほうも来るほうも変態度200%。公爵は男たちの表情を凝視するのが極上の悦楽なのだ。だからお嬢さんは一日も早く屋敷を出たい、出るだけでなく変態叔父の手が届かない、自由の身となりたい。珠子は生まれながらの泥棒育ちだ。「お嬢さんを精神病院に入れて金を山分けする」詐欺師伯爵の話に乗った。伯爵はお嬢さんには珠子を騙そうと持ちかけ、珠子にはお嬢さんを騙すと持ちかけるマッチポンプである。ところが、最初は嵌めるつもりだった秀子が純情そのもので、珠子は裏切れなくなる。秀子は秀子で、献身的に尽くしてくれる珠子が不憫になる。ふたりの距離が近づいていくプロセスがパク監督らしい、コテコテの作り込みで面白いのだ▼お嬢さん「伯爵に求婚されたの。次の満月の夜、日本に逃げようって。教えて。男は何を望んでいるの? 結婚した夜よ。誰も教えてくれない」珠子、お嬢さんに抱きつかれ(ヤケクソだ。教えて早く寝かせよう)と腹をすえる。「私は手足が冷たいから嫌われる」とかいうお嬢さんを、そんなことない、そんなことないとか言いながら、珠子は抱いたり撫でたり、さすったり、何も知らないはずのお嬢さんが積極的なのだ。お嬢さんはお嬢さんで、「伯爵の人選は適切だった。珠子はバカで純粋みたい」。伯爵「宝石や綺麗な衣装を見せたら母譲りの物欲で、もっとバカになります」。でもお嬢さんは虚しくなる。叔父や伯爵のように、自分を欲望と金の道具にしようという男たちに比べ、珠子の純粋さはどうだろう。思いあまって首を吊ってしまう。庭の大きな桜の木は叔母が自殺した木だ。自分もそこで死のうと、太いロープを巻いて宙に浮いた、はずなのに(ん?)なんで空中に止まったままなのだ。いる。珠子がしっかり体を抱えている。そして叫ぶ「お嬢さま、結婚しないでください」。お嬢さまは「心配なのはお前よ。私を騙したつもり? お前が騙されているのよ。私の名前で精神病院に入れて、伯爵と逃げるつもりだったの。謝らないでおくわ。お互いさまだから」。なんだと! 珠子はお嬢さまの体を離し、木に放ったらかしてスタスタ。女二人は手を組むことにする。この映画は男に性と権力を封じ込められた女たちが、鮮やかに逆転し、金も自由を手に入れるお話。パク監督が腕によりをかけたピカイチの復讐劇です。