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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年9月18日

特集「LGBT映画に見るゲイ10」267
お嬢さん(下)(2017年 ゲイ映画)

監督 パク・チャヌク

出演 キム・ミニ/キム・テリ

シネマ365日 No.2606

毒のあるユーモア

特集「LGBT映画に見るゲイ10」

 キム・ミニがエキセントリックな情熱を秘めたミステリアスなお嬢さんを。キム・テリが貧民窟からの脱出を夢見る、(お嬢さんに言わせると)バカで純粋な娘を、好演します。どっちもが、どんな騙しもやってやる、と思っていたのですが、お嬢さんは珠子を、珠子はお嬢さんを愛してしまう。映画はでもクソ真面目にならず、ユーモラスでさえあります。ベッドシーンでは「お嬢さん、お嬢さん、何も知らないはずなのに、どうして、どうして…天性なのですね!」ユーモラスなセンスといえば、パク監督の異常なディテールへの情熱とこだわり。叔父公爵の書斎がまるで道場みたいにドカーンと広く、後部は蔵書、蔵書の何列もの書棚。その全部が洋の東西を問わぬ、淫本・春画の稀覯本というから、そのへんの変態とはスケールが違う。病院に入らねばならぬのは彼である▼叔父の言うままに、いやらしい男たちの視線と行為に身を任せていたお嬢さんは、珠子が身代わりの道具だとわかっても、自分を地獄から救う救世主に思う。珠子が珠子で、こんな世間知らずな令嬢を騙すという非道が許せなくなる。伯爵と叔父をペテンにかけ、女たちは日本へ脱出する。男装したお嬢さんは、学芸会の変装みたいで吹き出すが。屋敷ではお嬢さんと珠子、要は金の成る木に逃げられた公爵と伯爵が地下の穴倉にいる。そこは拷問専門の地下牢だ。さてパク監督が腕まくりして拷問のディテールを映します。「オールド・ボーイ」で舌を切るジョリジョリまで音入れする彼の情熱。ここでは指です。それも伯爵の指は一本ずつなくなる。気の弱い人はえずくにちがいない。伯爵は断末魔に耐えるため、タバコを吸わせてくれと頼む。一本、二本、三本、やたらタバコを吸うのだ。密閉された地下室は煙が筋となってたなびき、やがて辺りは薄暮のような青い色が充満する。「水銀は気化するときに猛毒を発するのです」ギャーッ。公爵は恐怖にひきつるがもう遅い。その頃お嬢さんと珠子は客船で、さらば、朝鮮。船室で愛を交わします。これが、ですね。コテコテに念入りでパク監督の情熱が伝わります。「キャロル」のように優美でもないし、「アデル、ブルーは熱い色」のように精緻でもない。誤解を恐れずいえば、監督は大真面目にふざけているというか。例えば珠子がお嬢さんを覗く角度が、お嬢さんの膣内から見た珠子を捉えているのです。吹き出しません? 同じセンスは「親切なクムジャさん」にも顕著でして、復讐者がのめり込めばのめり込むほど滑稽にさせる、そんな毒のあるユーモアはパム映画の特質です。ニコール・キッドマンの「イノセント・ガーデン」も最後まで引っ張るミステリーのいい映画でしたが、いかんせん薄味だった。本作は久々にパム監督のこってり味を堪能できます。