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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年9月20日

特集「LGBT映画に見るゲイ10」269
アバウト・レイ 16歳の決断(2018年 ゲイ映画)

監督 ゲイビー・デラル

出演 ナオミ・ワッツ/スーザン・サランドン/エル・ファニング

シネマ365日 No.2608

未来への応援歌 

特集「LGBT映画に見るゲイ10」

 トランスジェンダーです。16歳のレイ(エル・ファニング)が女性から男性に転換したい。医師の元に母親のマギー(ナオミ・ワッツ)、祖母のドリー(スーザン・サランドン)、祖母のゲイのパートナーフランセスが集まった。医師は家族たちに言います。「ようやくこぎつけましたね。心配することは何もありません。治療を始めるとまず体重が増えてくる。お尻まわりの脂肪が減ってお腹につき始め、顔や胸、腕に体毛が増えてくる。乳房は無くならない。手術が必要です。生理が減ってくる」。レイが(やった!)というように喜色を浮かべる。「ホルモン治療は男性ホルモンが生理を止めるのです。レイは16歳なので両親の同意が必要です」。帰り道祖母が訊く。「なぜ治療を急ぐの。それになぜ転校を?」「普通でいたいからよ」「なら普通のレスビアンでいいじゃない」「ママ、あの子は男の子なのよ」▼女の子として育ってきた自分を知る人がいっぱいいる今のご近所から、男として新しい環境で出発したいレイは早く治療の結果を出したい。マギーはイラストレーターだ。男と情事をしながら「ペニスがあるっていい感じなの?」「グレイトさ」「そう? でも欲しいとは思わないわ」。母親はためらっている。果たして16歳の判断で将来「失敗だった」と思う日が来ないとは限らないだろう。だから心の底では「男の子」にしたくない。娘のままでいてほしい。同意書をとるため、別れたきり音信不通の元夫クレイグを探しだした。「男にならなくても治るかもしれないじゃないか」クレイグは初めから病気扱いだ。「セラピーにも行った、何人の医師にも相談した。レイにとってヴァギナは体の一部ではなく何かの間違いなの」。祖母と相方は割り切っている。「レイを公立学校に転校させたら授業料はバカ安よ。だからここを出て行けるわ(母娘は祖母の家に同居している)。「こんなときに追い出すの!」「違うわよ。外の世界に送りだすのよ」。このおばあちゃんが面白いです▼レイは自分の「ドレス姿」を知っている人たちから離れられると有頂天になって喜ぶ。レイの父親がクレイグではなく、マギーが当時寝た相手のクレイグの弟かもしれないとわかる。この話が混じったせいでストーリーが冗長になっています。16年前の情事を蒸し返すより、もっとレイと母親の葛藤に絞り込んだほうが、奥行きが出た。父親にしても今は再婚相手と三人の息子・娘がいて16年前の妻の情事を蒸し返してもトクするとは思えない。映画はつまるところ、おばあちゃんの言う「私は、性の自己認知と性的志向の違いがよくわからないのだけど、レイの体が変わっても愛する孫であることに変わりはない」が結論になります。日本レストランでレイ、マギー、おばあちゃんカップル、元夫とその家族全員、父親かもしれない弟をまじえ団欒のシーンでエンド。今の時代を表すシリアスなテーマなのに着地がイージーだった。将来を心配する母親に辛く当たるレイに、おばあちゃんが「ママにやさしくしてあげて」という。16歳だから仕方ないといえばそれまでですが、自分のことだけに没頭しているレイはエゴ丸出し。トランスの抱える社会的な「しんどさ」を、おばあちゃんら、世間のわかった第三者の目でもっと言及してもよかったと思えます▼とはいえ「この映画のテーマに是非参加して、周囲にも意識を広めて行くの。そのような映画は貴重だわ。笑えたり、ダークだったり、ただ楽しいだけの作品じゃない」とナオミ・ワッツ。そうですね。ダイバーシティの潮流は世界を変えつつある。決して後戻りしない。本作のラストは未来への応援として、大団円で正解としましょう。エル・ファニングがよかったですよ。