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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年9月21日

特集「LGBT映画に見るゲイ10」270
ネオン・デーモン(2017年 ゲイ映画)

監督 ニコラス・ウィンディング・レフン

出演 エル・ファニング/ジェナ・マローン/キアヌ・リーブス

シネマ365日 No.2609

淫らな毒

LGBT映画にみるゲイ特集10

 オープニングがよかったので期待しました。でもあとが続かない。ジェシー(エル・ファニング)は生き馬の目を抜くファッション業界であっという間にトップモデルになる、ライバルのモデルたち、ジジとサラの嫉妬と憎しみが渦巻く。田舎から出てきたばかりのジェシーにやさしかったメークのビリー(ジェナ・マローン)はゲイで、ジェシーに「あなたの初めてになりたい」と迫るが、その気のないジェシーにあっさり振られた。ジジとサラは、ビリーが留守を預かる豪邸に忍び込み、包丁を振りかざしてジェシーを襲う。ビリーも一緒になってジェシーを追い詰め、空のプールにつき落とす。ジェシーはあっさり死んでしまう。三人はジェシーを食べる▼書くだけでおぞましい…オープニングの映像がね、赤いチークをテカテカ頬に塗り、金髪を編み込んだジェシーが血を滴らせてソファに倒れているポーズ。いわくありげで何もない…というか、何もないのに曰くだけありげ、のムード最優先のスクリーンです。この奇妙な面白さがどうなったか。ライバルのモデルたちの熱病のごとき嫉妬と、欲望の亡霊と化したジェシーが、美への妄執を毒で染め上げ、淫らな楽園が展開するのだ、と期待したのが大まちがい。ジェシーはこんな簡単に即死するか? たかだか1メートルか、2メートルもないプールに落ちたくらいで。ジェシーの頭の周りにみるみる血だまりができる。仰々しい。頭がカチ割れたのならともかく、原型そのままの立派な頭蓋骨から、いきなり血が流出するのかよ。黙れ、本作は監督の美意識によって作られたのであり、リアリズムでつべこべ言う愚かしさは控えよ、と言われるなら黙る▼でもな、モデルのトップに駆け上ったジェシーに一つも若々しい興奮と恍惚感がないのよ。16歳の女の子が、ともあれ売れっ子デザイナーのショーのトリを務めたのでしょう。嬉しくないはずがない。ジェシーのボーイフレンド、ディーンが(彼は誠実ないい奴です)「こんな軽薄な世界が君の憧れか」と訊くと「憧れていない。みなが私に憧れている」と答える自信女子よ。タフであるはずのジェシーと、ドジなプールの転落死や、部屋に紛れ込んだ山猫に震え上がる女の子に、ギャップありすぎ。エル・ファニングのメークはきらびやかで独創的だが、神殿に立つ娼婦のごとき神秘と虚無があるかというと、ない。まあな、16歳で処女というジェシーの設定からすれば、そこまでの練熟はないほうが自然かも▼キアヌ・リーブスが安モーテルの管理人で登場する。怪しげな裏社会のオヤジと、世紀の殺し屋ジョン・ウィックが同じ顔で現れるところがキアヌのいいところね。ビリーは副業として葬儀屋の死化粧をしている。死体・死姦・オルガズムとくる。ただこの女優ジェナ・マローンだけが、ジェシーに気があり、それゆえやさしかったゲイの女と、振られたあとサディストと化した女の狂気と暴力性を、はっきり差異化していてうまかった。