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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2018年9月22日

特集「LGBT映画に見るゲイ10」271
夢見る頃を過ぎても(2003年 ゲイ映画)

監督 P・J・ホーガン

出演 キャシー・ベイツ/ルパート・エヴェレット/メレディス・イートン/ジュリー・アンドリュース

シネマ365日 No.2610

三人のマイノリティ 

LGBT映画にみるゲイ特集10

 すっきり仕上がったいい映画なのに、劇場未公開でした。よくわからないわね。人気スターが殺された、犯人は誰だ、なんてミステリーもあるかと思えばゲイ差別に女性差別、マイノリティ差別がぎっしり詰まって、それでいてユーモラス。「ミュリエルの結婚」で高評価を得たP・J・ホーガン監督のメガホンです。キャシー・ベイツが夫マックスから、突然離婚を言い渡された中年の主婦グレイスを演じます。彼女の楽しみといえばイギリスの大スター、ビクターの出演番組をかぶりつきで見ること。夫の離婚理由はそんな妻が「死んでいる」と評するのだ。彼女はしかし、ひょんな成り行きから抽選に当たり、ビクターの生番組に出演することに。収録当日主役のビクターが姿を現さない。なんと、彼は殺されていたのだ! グレイスは息子の嫁マウディ(メレディス・イートン)とイギリスまで殺しの犯人を見つけに行く▼ビクターには、ご近所の評判が最悪のゲイの同居人ダーク(ルパート・エヴェレット)がいた。世間体によって使用人ということにしてあったが、内々二人の間では家屋敷はダークに譲るということになっていた。故に彼が死んでも自分はここを出て行かないとダークは訪れた人間を追い払ってばかり。そこへグロリアが到着。グレイスはビクターの親戚からレコード会社の重役に間違われ、ちやほや接待されていたが「ただの専業主婦ですって?」てんからバカにされ、落ち込んでダークの家に泊めてもらう。ダークも最初こそグレイスをバカにしていたが、音楽が好きで、歌が好きで、明るい彼女に心を解きほぐされる。「ビクターは不実で勝手な男だった。いつも浮気ばかりしていた。彼の言い草は他の男とも寝るが、君としか眠らない、だった」。「愛は無条件なのよ」とグレイス。「無条件とは何をしても許すことか?」「何も求めないことなのよ」「ゲイは大変なんだ」「わかるわ。息子の嫁も大変よ。少し体が小さいだけで好奇の目で見られる」▼ゲイのダークと「ただの専業主婦」とあしらわれたグレイス、小人症のマウディ。三人のマイノリティが揃ってところで舞台はシカゴに。「僕は犯人を探し出し復讐する。僕も君も長い間使用人と主婦だった。存在価値を認められなかった。確かに洗濯もアイロン掛けもしていたが心は恋人同士だった」「マックスの妻でなくなったら、私は一体なに?」。二人とも人生に目覚める。夢見る頃は過ぎてもできることはある。犯人探しの旅を監督は、自分を見失っていた中年男女二人の、アイデンティティ探しと位置付けています。マウディの存在感がすごい。自分が奇異な目で見られていることがわかった上で、ひるまずおじけず、どんな人混みもかき分け、意思を行動で主張する。ほとんどの人が、全身で戦う彼女の口撃にたじろぐ。ジュリー・アンドリュースが本人役で出演、乱気流でパニックになった機内で歌を歌い、乗客に平常心を取り戻させる。大サービスのゲスト出演です。愛と友情。古今の黄金律に則った、後味のいい気分のよくなる映画です。