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特集「最高の悪役」

2018年9月26日

特集「最高の悪役3」① ティモシー・スモール1
否定と肯定(上)(2017年 事実に基づく映画)

監督 ミック・ジャクソン

出演 レイチェル・ワイズ/ティモシー・スモール/トム・ウィルキンソン

シネマ365日 No.2614

ホロコーストは捏造 

特集「最高の悪役3」

 ホロコーストの専門家、エモリー大学のデボラ・リップシュタット教授は講義でこう述べる。「ホロコースト否定論者の四つの主張とは、①欧州の全ユダヤ人虐殺というナチス全体の命令はない。②死者の数は600万人よりはるかに少ない。③ガス室や新たに建てられた殺戮施設などなかった。④よって結論は、ホロコーストはユダヤ人が捏造したもので、彼らは賠償金をせしめてイスラエルを建国した。そしてまた戦争は残酷なものだ。犠牲者として苦しんでいるのはユダヤ人だけじゃない、ユダヤ人は大げさだ、と主張しています」続けて「ホロコーストはあったのか。証明方法は。ガス室内のユダヤ人の写真は一枚もない。ドイツ軍が撮影を禁じ、施設は焼却したから」監督は冒頭からスパッと映画のテーマを明らかにし、最後まで高レベルなテンションを保ちます。見応えのある作品でした▼ホロコーストがユダヤ人の捏造だと主張するのがティモシー・スポールの演じる歴史家デヴィッド・アーヴィングです。彼は稀代の悪役を重厚に、繊細に、深い理解とともに演じています。主役のレイチェルもよかった、弁護団チームの追求も作戦も見事だった、アーヴィングはバケの皮を剥がれ、それでも裁判後「ホロコーストは捏造だ。持論は覆さない」とテレビレポーターの前で宣言します。この映画で一番知りたかったのは、アーヴィングの自信が一体どこから生じるのか、でした。その前にまず裁判の前景を述べていきます。アーヴィングはロンドンでデボラと彼女の著作を発行したペンギン社を名誉毀損で訴えました。イギリスでは被告側が、名誉毀損の反論の根拠を立証しなければなりません。被告の法廷弁護士となったランプトン弁護士は、ホロコーストを象徴する「主力艦アウシュビッツ」にデボラを連れて行きます。「この真下がガス室でした」案内者が示した足元の大地には極寒の雪が降りかかっています。荒涼とした灰色の場所。正面に続く長い死の列車引き込み線。デボラは唱える。「高みに住まう慈悲に満ちた神よ。神の庇護のもと、安らぎを与え給え」。何百万の同胞たちの嘆きの死。自身ユダヤ人であるデボラは、アーヴィングの「うそ」が許せなかったのです▼しかし…始めの設問に戻ります。確かにどんな意見も言う自由はある。あるがデボラが指摘するように変えようにも変えられないものはあるのだ。「地球は丸い、プレスリーは死んだ」。ホロコーストという事実を捏造だとしたアーヴィングの狙いはなんだったのか。あるいは狙いもヘチマもなく、彼はただの詐欺師だったのか。ここは裁判の焦点でもありました。弁護団は「生存者に証言させない」「デボラ・リップシュタットにも証言させない」をルールとしてデボラに納得させます。自分たちの真実の声を聞いてほしいというアウシュビッツ生存者の願いを取り上げようとするデボラにランプトン弁護士はビシャっと言います。「アーヴィングの術中にはまるだけだ。ガス室に送られたと証言すると、ガス室に入る扉は廊下の右にあったか、左にあったか、とどうでもいいことを突っ込んでくる。証人は立ち往生する。こんなこともあった。証人が腕の囚人認識番号を示すと、あなたはその入れ墨でいくら儲けました…」。