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特集「ベストコレクション」

2018年10月5日

特集「秋たけなわのベストコレクション」⑤
ルイの9番目の人生(下)(2018年 サスペンス映画)

監督 アレクサンドル・アジャ

出演 ジェイミー・ドーナン/サラ・ガドン/モリー・パーカー/アーロン・ポール

シネマ365日 No.2623

ママの望みを叶えた 

特集「秋たけなわのベストコレクション」

 不審な手紙がパスカル医師に届く。「先生はママとセックスしたい。近づくな。悪いことが起こる」。ピーターの母ヴァイオレットがルイに会いに来る。ナタリーとは嫁姑、犬猿の仲だ。ヴァイオレットはパスカル医師に「息子がルイを傷つけたなんてありえない。あの女は誰にもウソをつく」。それを聞いてナタリーと一線を越えてしまっていた医師はふと(レイプされた話もウソ?)チラと頭をかすめる。ナタリーはレイプの辛い経験を医師に打ち明け、すがり、医師は同情し発情したのだ。やがてピーターの遺体が崖下で発見された。逃走したとみられていた彼は死んでいた。ダルトン刑事「父親の死体はルイの落下地点から遠くない洞窟でした。同じ場所に二つの死体、偶然でしょうか」▼手紙の差出人を特定するため関係者の筆跡鑑定が行われた。病院の監視カメラに手紙を書くパスカルが映り、その筆跡は手紙と一緒だった。パスカルはルイが意識の中に入り自分を操っていると判断し、ルイの意識を呼び出すため催眠療法を受ける。パスカルの意識が眠るとルイの意識が目覚め、医師の質問「ルイ、あの事故の日、何が起きたのだ」に答えルイがしゃべりだした「ピクニックに行った」「どんなものを食べた?」「パン、サラミ、ジュース。ケーキがあった」「君は願い事をした?」「パパが本当のパパでありますようにと、言おうとしてやめた。僕がキャンディを食べようとするとパパが止め、ママに言った。やめろ、なぜあの子を傷つけようとする! ママに押されてパパは崖から落ちた。事故だったかもね。どっちとも言える。僕はママの望みを叶えたかった。いつだってそうさ。今回はママの手助けはいらなかった。後ろ歩きして5歩。6歩目に崖から落ちていった。そのまま海に落ちて死んだ。男はママが綺麗だからみんな騙される。中身もいい人と思うけど違う」▼回想シーンが入ります。ルイが感電死仕掛けた時はママが電圧を上げた、食中毒のときは生肉の肉汁を混ぜ、生後まもない事件では、クッションを顔に当てられ、キャンディには致死量の薬をまぶす、すべてナタリーの仕業だった。なぜ。医師の診断は「ミュンヒハウセン症候群」だった。「虐待性障害です。近親者を傷つけることで周りの同情を引こうとする。幼いルイを傷つけていたのはナタリーだ。成長したルイは母親の期待を察しそれに応えた。ルイは事故に遭い、母親が救う。それを繰り返し、絆を深めた。母親は息子を愛し、同時に邪魔者にも思っていた」。ナタリーは精神病院に収容された。パスカルの子を身ごもってお腹が大きい。ルイは意識の中で独白する。「以前はひどかった。不安だったし事故の連続だった。でも昏睡は悪くない」ルイは祖母の手厚い看護を受けていたからだ。「ママを心配し、パパを恋しく思うこともない。パパは言っていた。姿が見えなくてもいつでも話せる。いつも一緒だよ、パパは心の中にいる、お前が望むなら、あらゆる不思議が、可能性がお前の目の前にあると」…ルイの瞼が静かに開いた。母親の望みを叶えようとしたルイの告白が切なく、パパの犠牲は悲しいことだったけれど、なんとか安全に生きていける環境に、ルイがたどり着いたことを暗示して映画は終わります。狂った絆の求め方に奔るサラ・ガドンが悽愴でした。こんな役が似合いますね。「変態の詩人」デヴィッド・クローネンバーグのお気に入りで、「危険なメソッド」「コズモポリス」「マップ・トゥ・ザ・スターズ」と立て続けに出演。特に「マップ…」ではジュリアン・ムーアと近親相姦の母親を演じ、ジュリアンをコテンコテンに痛めつけています。刑事になったモリー・パーカーも面白い女優で「アドルフの画集」「美しい人」の脇役が光りました。しかしなんといっても一番のもうけ役は父ピーターのアーロン・ポールです。殺人犯だ、逃走犯だ、虐待犯だ、美人の妻をいじめるけしからん男だと思わせておいて、実の子ではないルイに愛を注ぐ、父性愛に満ちた父親を好演。ルイの心に話しかける意識だけの会話「パパはいつでも一緒にいる」は、ルイでなくとも泣きそうです。