女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「劇場未公開」

2018年10月15日

特集「劇場未公開」①
カモン・ヘブン!(2001年 家族映画)

監督 ダグ・マクヘンリー

出演 ウーピー・ゴールドバーグ

シネマ365日 No.2633

扉は開いているわ 

特集 劇場未公開

 劇場未公開には、いい作品が隠れていることがあります。で「未公開」を集めてみました。「カモン・ヘブン!」はウーピー・ゴールドバーグ以外、ほとんど知らない俳優ばかりでしたけど、コメディかと思いきや、シリアスにドタバタをミックスして、外国版「お葬式」になっています。ウーピーが長男に言う「知らないうちに心の扉は開くものよ」とそれに続くシーンは、この映画のイチ押しセリフです。聖書の言葉を説教くさくせず、テンポよく、ユーモラスに用いています。ワケあり家族のワケあり人物がお葬式に集合し、悪口を浴びせかけ、かき回すうち、断ち切れない家族の血が通いあう。ベタですけど、誰しもに思い当たる情愛の機微をツボっています▼パパが急死する。レイネル(ウーピー・ゴールドバーグ)が妹からの手紙を読んで聞かせている最中だ。「主と共にあれば一日も千年と同じ…ちょっと、あなた」。レイネルの妹マルガリートは失業中の息子をたたき起こして葬式に向かう。ブツクサ文句を言う息子に「17時間もかかって産んだのに」とおきまりのボヤキを言う。スローカム一家の面々は刑務所服役中、失業中、破産、アルコール依存症、見事にドロップアウトばかり。牧師が来て故人の人柄を教えて欲しいと頼むと、レイネルは「夫は意地悪でした。気が荒くて、幸福な時はほとんどありませんでした」。牧師はポカン。「息子二人の出産後、また教会に行きたいので夫に話すと激怒しました。以来20年間仲直りしませんでした。いえ、一度だけ、つまり」と、喧嘩以後に生まれた娘を見る。「娘は私の宝物です」…この娘なのですが、来客の前でも菓子をムシャムシャ食べ、行儀が悪く、まともに会話もしない。でも、レイネルにとっては宝なのだ。このあたりに本作のツカミはあるのだろう。家族とは、人から見てどんな娘であろうと息子であろうと、社会不適合者であろうとムショ入りしていようと、唯一無二の存在なのだ。単なる情愛ではない。血が繋がっているとは、悪縁であろうと腐れ縁であろうと、顔や癖が似ていることを指摘されると腹が立つくらいそいつを嫌っていようと、切っても切れない「つながり」で結びついているのが家族なのだ▼レイネルは自分の息子の出来の悪さ、娘の凡庸さがよくわかっている。お尋ね者にならなければメッケものだ、くらいに覚めている。嫁は弁護士と結婚するはずがレイネルの次男と結婚し子供が三人、夫はバカな事業に全財産注ぎ込み一文無し。彼女は歌が好きで「才能があると言われたのに」ヘタレ男のために一生を棒に振ったと、恨み辛みがエンドレスに吐き出される。長男レイはアルコール依存症だ。妻ジュリアはテキパキしたしっかり者だが、子供の出来ないことで悩んでいる。弟一家が泊まることになった。「あいつはバカで女房は喋り、子供たちは悪魔だ。俺の時は失踪したことにして庭に埋めろ」▼葬儀の段取りがまとまるはずがない。墓碑銘料一文字2ドルだ。聖書から引用したいが長すぎる。レイは久しぶりに母親と話し「墓碑銘はこれにした。心安らかに眠りたまえ」「そう。私たちはとっくにパパを失っていたよ」「愛していた?」「お前は?」「愛したり、憎んだり」「レイ。知らないうちに心の扉は開くものよ。その時パパへの気持ちも受け入れられるわ」「明日、扉は開くかな」葬儀が始まった。牧師は急性下痢でトイレに駆け込んで出てこない。「レイ、あなたが話しなさい」とレイネル。ためらう息子に「扉は開いているわ」。レイは壇上でポツポツと父の思い出を話し始めた。どんなひどい父でも死んでしまうと不思議といいことしか思い出さない。参列者は涙する。聖歌隊の番になって、レイが言った。「われわれは運がいい、今日はシャーリーズがいる」。歌手になり損ね人生を恨んでいた次男の嫁だ。歌ってくれ、シャーリーズ。彼女はおずおずと歌いだすが、その声は次第に力強く教会に響き渡り、みな声を合わせた大合唱になる。「天使にラブソングを」へのオマージュですね。絵に描いたような幸福を当てにせず、いまいる家族がそれなりの幸福に恵まれればいい。可もあり、不可もあり、が現実の幸福なのだ。扉の開くときは誰の上にも巡ってくる。かなりいい映画でした。