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特集「劇場未公開」

2018年10月16日

特集「劇場未公開」②
誤診(1997年 事実に基づく映画)

監督 ジム・エイブラハムズ

出演 メリル・ストリープ/アリソン・ジャニー

シネマ365日 No.2634

他人事ではない 

特集 劇場未公開

 誤診というタイトルがいい加減だけど、原題はヒポクラテスの五つの誓いのうちの一つです。「医療に忠実たること/同僚に公正たること/患者のために己の診断により養生を施すこと/何より害をなさぬこと」の五番目です。医師たる者が「害をなさぬ」ことを誓わねばならないのは、奇異に聞こえますが、本作では「薬害をなさぬこと」に該当すると考えていいと思います。ヒロイン、ローリ(メリル・ストリープ)は、学校から息子のロビーが「転んだ。転び方がおかしかった」という電話を受け、勤務先を早退します。ロビーは激しい発作を起こし病院に搬送される。診断は「てんかん」で、CTスキャンや腰椎穿刺で検査し薬を服用する。しかし息子の症状は治まらず、病院は薬の処方を変え、変えるたびに副作用は重くなります▼高校の同窓生のボブがある日ローリを訪ね「私も4歳からロビーと同じ薬を飲んでいる。医者にも発作の原因は謎だ。ロビーは実験台みたいに薬を試される。すべて医者に任せていたら大変なことになる」。ローリは病院と医師の処方を信じていたが、息子の発作はだんだん激しくなり、歩きながら昏倒する。「別の薬を試します」と医師は事務的に言うだけ。「息子は薬で参っています」。ローリが言うと「発作に幼い脳は耐えられない。発作さえ収まれば普通の生活ができる」「発作が止められないなら?」「理解力の減退、発達が遅れ、精神遅滞を招きます」。しかし日に日に弱っていく息子をローリは見ておれない。保険は止められた。ローンを払えない家は差し押さえになった。夫は収入を保持しようと、危険な爆発物輸送トラックを運転する。子供は三人。ロビーとその姉と兄だ。ハワイ旅行を楽しみにしていた貯金にも手をつけ、母親はロビーにかかりきり。父親も疲れ、家族の気持ちはバラバラになる。ローリは主治医に訴える。「薬を与え、その副作用を治すためにまた薬を。その副作用に別の薬。息子は発疹が出てリンパ腺が腫れ、便秘のため痔になって、歯茎は腫れ、酔っ払いかゾンビみたい。病気のせいではなく治療のせいです」▼ローリは図書館で膨大な関係書籍にあたり、食事療法に光明を見つけた。「ケトン体産性食事よ。体を絶食状態にし、その状態が発作を止めるの」。その治療法を実施するジョンズ・ホプキンス病院へ退院を求めると「病院からの移送は救急車。医療設備のある飛行機。ロビーの薬。点滴、緊急用の酸素。付き添いの医師。以上の条件を満たせば退院を認めるわ」。それをせず連れ出せば誘拐になるというのだ。ローリは死に物狂いだ。ボブを診た医師が「付き添い」を買って出てくれた。病院のやさしい黒人看護師が休暇をとってローリに同行してくれることになった。彼女は言う。「先生よりあなたのほうが正しいわ」。ローリの隣の主婦は、妹がいた修道院が無料で泊めてくれると手配した。出発の日、家族全員が車に乗る弟と母親を見送った。ホプキンズ病院の食事療法の厳密な管理は、ケリー栄養士の指導で行われる。彼女は「40年続けている。絶食すると体が休まるの。3割の子供たちの発作が消え、後の3割もよくなっている。感謝しなかった母親はいない」▼「ロビーは食事療法を3年後に完了し通常の生活に戻った。二度と抗てんかん薬は用いず、発作も起こさなかった」と字幕に出る。つくづく考えさせられる。ロビーは勇敢な母親がいてよかった。しかし究極のところ、自分の体の治療法は自分で決めねばならない。20年前のこの映画は、今も他人事ではない怖さを突きつけてくる。