女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「劇場未公開」

2018年10月17日

特集「劇場未公開」③
奇跡の絆(2017年 事実に基づく映画)

監督 マイケル・カーニー

出演 レニー・ゼルヴィガー/ジャイモン・フンスー/ジョン・ヴォイト/グレッグ・キニア

シネマ365日 No.2635

力強いレニー

特集 劇場未公開

 画商として成功したロン(グレッグ・キニア)が、不倫の償いに妻デビー(レニー・ゼルヴィガー)にホームレスがたむろする地区に連れて行かれる。ロンから言わせると危険エリアだ。妻は安レストランでボランティアをしていた。一人の黒人デンバー(ジャイモン・ブンスー)が暴れだし、テーブルをひっくり返す。デビーは彼が夢に出てきた「導く人」だという。結婚19年、夫婦の間はボロボロ。すれ違いばかりで夫は「2年もやっていない」とわめき、妻は「10年前から心は離れていた」と言い返す。ホームレスたちが並んで差し出すトレーに「私はデビーよ。あなたは?」と話しかけるが、「俺にかまうな!」と剣もホロロに怒鳴っていくのがデンバーだった▼ロンの両親はデビーのボランティアに否定的だ。「ホームレスの男性と友だちになろうとしているそうね」と姑。「奴らは怠け者だ。不潔だ」と義父のアール(ジョン・ヴォイト)。デビーの変わらない態度にデンバーは軟化する。「俺はプランテーション(棉花などを栽培する大規模農園)で育った。小作人だ。両親が死に叔父に引き取られた。俺を育ててくれたのは祖母だ。小屋に住み給料は払われず僅かな食事を与えられた。第二次世界大戦も朝鮮戦争も知らない。黒人は文字が読めずラジオも電気も電話もなかった。ある日農場を飛び出し列車に乗った。シュリープポードに着いた。最悪の刑務所に10年いた。白人は釣った魚を放す。むかつく。食うものに困ったことがない連中のやることだ」。デンバーと話すうちロンに変化が起こる。夫婦はお互いを認めあい明るい家庭になった。そんなときデビーのガンがわかる▼治るつもりでいたデビーに医師の妻の女性が話しかける。「辛いわね、末期ガンですって?」無神経さに声もないが、すべてを悟ったデビーはデンバーに会いに行く。いつものようにホームレス地区にいるデンバーの隣に座り、黙って肩にもたれる。デビーは死んだ。棺の前に花を捧げる多くの黒人たちの列を参会者はいぶかしむ。遺言によって送る言葉をデンバーが述べる。「私が彼女に会う前に彼女は私に合っていた。白人女性と関わるのを避けていた私に、彼女は友人になろうとした。なぜ彼女は私に関心を持ったのか。私は人生の大半を刑務所で過ごした。元囚人だとわかって離れていった人を責めません。刑務所を出ても、惨めで不幸なままだった私を彼女が変えた。神に与えられた鍵をポケットから取り出し、私を解放した。彼女だけが見捨てず私を愛してくれた。他の人と違うことで苦しんできたが、今はわかる。私たち全員が、神が敷いた道を歩む人間です。でもデビーは違った」みながデンバーの言葉に聞き入る「彼女はホームレスのためによりよい世界を夢見た。天国の話ではない。この町のここの話です。彼女の炎を絶やさぬよう私が受け継ぎます。デビーさんを喜ばせたい。金持ちの人、悩んでいる人、困窮している人、その間にいる人、みなホームレスです。一人の例外もない。それぞれ家に帰るために戦っている。おかえり、デビーさん、帰ってきたね」▼ロンはデンバーの協力を得て本を出版し、ベストセラーとなった。二人は各地で講演し8500万ドルを集め、ホームレスを支援した。デビーの「最初の一歩」がなかったら、少なくともこの町の黒人差別は従来のままだった。人はみなホームレスだ、帰るべき家を探し求め、戦い、敗れるが、それでも帰るべき家を見出すべきだ、これが本作の主張だ。多様性社会とは難しい。一朝一夕になくなるはずのない差別に、ためらいもなく飛び込んでいったデビーのシンプルな善良さが力強い。人はこうありたい、こう行動したいと思います。レニー・ゼルヴィガーの適役でした。