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特集「劇場未公開」

2018年10月20日

特集「劇場未公開」⑥
ディア・ブラザー(2010年 事実に基づく映画)

監督 トニー・ゴールドウィン

出演 ヒラリー・スワンク/サム・ロックウェル/ミニー・ドライヴァー/メリッサ・レオ

シネマ365日 No.2638

逆境を蜜にした女 

特集 劇場未公開

 逆境にいて自分を貫く、意志の強い女性を演じたらピカイチのヒラリー・スワンクです。貧困、家族の無理解と孤立、学校に行けなかった(行かなかった)劣悪な環境、難病、性差別。花に蜂が集まるように、ヒラリーの映画には「困難」が集まり、彼女はそれを蜜にする。初のオスカー主演女優賞に輝いた「ボーイズ・ドント・クライ」。二度目の受賞となった「ミリオンダラー・ベイビー」。わずかな余命を誇り高く生きる、筋萎縮症のヒロイン「サヨナラの代わりに」。精神に異常をきたした女性たちを故郷に返すため、アメリカを横断する「ミッション・ワイルド」。そして本作は兄の無実を証明するため、中年から勉強し、弁護士となった女性の18年に及ぶ奮闘です。弁護士ですよ、弁護士。貧しくて学校も出ていない兄妹が助け合って成人し、結婚もして子供も授かった、なんとか人並みの人生に乗り出したところへ、兄ケニー(サム・ロックウェル)が殺人容疑で逮捕、仮釈放なしの終身刑を言い渡される▼妹ベティ・アン(ヒラリー・スワンク)は諦めない。兄は無実だ。弁護料が高くて弁護士は雇えないならば、自分が弁護士になるのだ。神がかり的な決意と実行力に、意志薄弱の身はただただ口をつぐむ。おばさん大学生となり、同じような年頃のエイブラ(ミニー・ドライヴァー)と知り合う。家事・育児・勉強・パート仕事に突き進む。夫とは離婚、息子二人は奮闘する母に愛想をつかし父のもとに行き、母は孤立。投げ出しかけるときに助けるのが親友エイブラだ。先端技術で冤罪を証明した情報を得る。DNA鑑定を受けるには物的証拠が要る。しかし16年前の証拠品は保管義務から外れ裁判所に残っていなかった。たずね、たずね、現場を担当した警察の資料庫にあるかもしれないと聞く。今から行くとベティ・アン。エイブラは「弁護士らしくならないと」そう言ってりゅうとしたスーツに着替えさせ、同行する。いい友だちね▼血痕のついたナイフが保管されていた。鑑定はできた。現場の血液は兄のものではなかった。しかし冤罪を嫌がる検察はケニーに共謀罪を適用した。ベティ・アンは諦めない。偽証罪を証明しようとする。兄に不利な証言をした女性二人を追い、ここで初めて兄を逮捕した女性警官ナンシー・テイラーの名前があがります。これがメリッサ・レオです。スクリーンに出た途端、空気が凍るような妖気を発しています。なんと彼女は「一度睨んだ獲物は逃がさない」主義を通すため、証人を脅迫し偽証させたのです。被害者の女性は「30箇所も刺され脳みそが飛び出していた、極悪犯を許せない」と彼女は犯人憎悪に燃えていたのだ。偽証は暴かれた。証言は撤回され兄は釈放。逮捕から18年だ▼息子たちも途中から母親を応援した。エイブラは家族同様だった。自由の身となったケニーは、まるで思い残すことがなくなったように、半年後事故で亡くなった。ベティ・アンはパブの共同経営をしながら、イノセンス・プロジェクトに協力している。彼女の弁護士業は兄を助ける手段であって、目的ではなかったわけだ。トニー・ゴールドウィン監督は映画化の実現に8年を要しました。ベティ・アンの役は「ミリオンダラー・ベイビー」を見たときからヒラリー・スワンクに決めていたそうです。兄妹の回想もはさみ、時間経過の複雑な事実をスッキリと描きこみ、ヒロインへのベタベタした思い入れもなく、安っぽい苦労話にしなかった。特にメリッサ・レオの、狂った警官のキャスティングなどドンぴしゃり、はまっていました。