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特集「劇場未公開」

2018年10月22日

特集「劇場未公開」⑧
ワンダフル!ウェディング〜結婚できる人できない人〜(2017年 コメディ映画)

監督 ダミアン・ハリス

出演 グレン・クローズ/ジョン・マルコヴィッチ

シネマ365日 No.2640

暗くなるぞ…ほら 

特集 劇場未公開

 中盤まで、登場人物同士の話がどうつながるのか、さっぱりつかめず、あやふやなままに終盤、ジョン・マルコヴィッチの独演となってやっと引き締まりました。5回目の結婚をする大女優、イヴ(グレン・クローズ)が家族友人を招いて、自宅で結婚式を挙げることになった。新郎は純文学の作家ハロルドだ。元夫かつ最初の夫だったローレンス(ジョン・マルコヴィッチ)も招待に預かった。イヴには3人の息子、ハロルドには3人の娘がいる。彼女らは父親の第二の人生の門出を祝うため、嬉々として同行した。明日が挙式という夜、ハロルドが娘の友達とできてしまい、しかも現場をケータイで撮られたことで、屋敷には死のような静けさが漂う▼ローレンスはもともとハロルドを「いけ好かない野郎だ。金はあるのか」と頭からヒモ扱い。ハロルドは映画界に疎く、娘から特訓でイヴの出演映画を教えてもらい会話に備える。誰と誰がくっついたとか、できたとか、一つ間違えば寝落ちするところを、ダミアン・ハリス監督は引っ張り、とうとうイヴが当日の朝「結婚はやめようと思うの」とローレンスに打ち明ける。ここからは有象無象のどうでもいいお話はカット、グレン・クローズとジョン・マルコヴィッチの二人芸となります。ローレンス「君は大女優だった」イヴ「私は脇役よ」。「俺たちは脇役に始まり、脇役に終わる」。「一晩中歩き回って考えたわ。結婚やめるわ。私には家族がいて、楽しく過ごせる。私の中に新しい家族をこれ以上、抱え込める余裕はない」「新しい家族がいいとは限らないよ」。なんだか風がこっちを向いてきたぞ、とローレンス。でもおくびにも出さず静かな聞き手に徹します。「俺たちは以前にもこんな会話をしたね。だから進歩したといっていいはずだ」。とイヴの選択が間違ってはいないというふうにさとす▼「招かれてきたのは、君に会いたかったからだよ。そろそろ君が結婚の“めでたし、めでたし”にというデタラメの現実から目を覚ますのではないかと。めでたいなんてウソッパチさ。待つのはデコボコ道さ」「私は見誤った?」「ハロルドを? いいや。君にはもっと釣り合う人がいる。君は愛されるべきだ。家族に愛を与えたから。一人で家族を支えてきた、ものすごいことだ。そろそろ君が頼ってもいい頃だ。一晩中眠れずに過ごしたパジャマ姿の君も、未だにすごくキュートだ。君は愛されるべきなのだ。だから昨夜のハロルドの一件は起こるべくして起こったのかも」甘い囁き。自分の苦労を掛け値なしに理解してくれていた男。イヴはぐっときます。そこへハロルドが部屋に来て「イヴ、俺はこいつ(ローレンス)になりたかった。君は素敵で聡明で色気もあって愛らしい。結婚したら僕も変われるかと思ったのだ。でも違った。君に屈辱を与えて恥ずかしい」。ゆっくりとローレンスが口を挟む。「ハロルド、もっと大人になったほうがいい。その年で25歳を求めるなんて悲哀が漂うね。ブタ同然だな。君はもう敗残者だ」「もっとひどいわよ」とイヴ。情け容赦がありません▼招待客が続々と屋敷に来る。「どうしよう」とイヴ。「俺に任せろ」力強くローレンス。目立たないようにハロルド父娘を出発させ、集まった招待客を前にローレンスが挨拶する。「みなさん、お知らせがあります。両当事者が熟考と話し合いを重ねた結果、予定していた結婚式は取りやめとします。でもここに判事も出席され、宴の準備は万端整っている」。ローレンスは2階から状況を見ているイヴに「われわれが結婚しないか、イヴ。他に結婚したい相手がいるなら俺は身を引く。俺は愚かだった。若くてバカだったからだ。しばしばこう言うだろう。ともに老いる人を探したいと。すでにこの年だ。今こそ君と老いを重ねたい。残りの人生をともに生きたい。妻になってほしい。もう一度結婚してくれるか」そして膝まずく。 まだ真骨頂がある。ふたりは湖のほとりに来た。山際に沈みかける入り日にローレンスが話しかける。「沈んでいく。沈む。暮れたな。暗くなるぞ。ほら」…沈み、暗くなる人生をふたりで見つめる。これが老いの結婚だと本作は言いたかったのです。マルコヴィッチはあの通り、茹で卵みたいな頭ですが、彼の声の演技は素晴らしく無敵です。グレン・クローズもセリフなし、表情の微妙な変化だけでマルコヴィッチを受けて立つ。ラストシーンのわずか数分で、それまでの退屈さと凡庸さを挽回した稀有な映画です。