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特集「劇場未公開」

2018年10月23日

特集「劇場未公開」⑨
ダークネス・ビギンズ(2008年 アクション映画)

監督 アッシュ・アーロン

出演 ロバート・ディアス

シネマ365日 No.2641

冷たさも残酷さもない 

特集 劇場未公開

 復讐ものには佳品が多いです。古典的なまでに伝説となった、チャールズ・ブロンソンの「狼よさらば」のポール・カージー、妻子を殺されたアラン・ドロンが復讐の鬼となった「ビッグ・ガン」「ドラゴン・タトゥーの女」三部作、復讐がメーンではなかったけど、ニコール・キッドマンなんか「ドッグヴィル」で皆殺しを部下に指示するし。ジョディ・フォスターの「ブレイブワン」はポール・カージー女子版でした。壮絶大エレジーともいうべき「アイ・スプリット・オン・ユア・グレイブ」のクライマックスたるや、カルトというべき詩情すら漂わせました。妹の復讐にライフルをぶっ放す「リップ・スティック」もよかった。そんな作品に比べると、どう言えばいいのだろう。マーゴット・ロビーのデビュー作であり、主人公もイケメンで、映画の空気としてはいいのだけど、ただ、ただ、つまらないのです▼恋人にプロポーズした夜、暴行殺害で彼女を失った主人公ルーク(ロバート・ディアス)が、体を鍛え、復讐する。警察の代わりに悪人どもを退治し、街の人々は彼を「ビジランテ」と呼ぶ。ルークは目出し帽みたいな黒い帽子をかぶり、影のように現れる。しかし素面は柔和で、ものいいもやさしい青年なのだ。そりゃね、アラン・ドロンだって美男で、柔和でハンサムでしたよ。でも底には傲然とした冷たさがあった。どうにもこうにも、ルークのような人のいい青年が復讐者として大成(トいうのもおかしいが)するのだろうか、首をひねりながら見ていた。それがするのだ。どこまで手抜き・低予算でまとめてしまったのだろう。物語と主人公のキャラを無理やり、こじつけるためにストーリーを94分に詰め込んだとしか思えない。復讐っていうのは憎しみの塊だろ。人間の心の一部が凍りつかないとできないことでしょ。彼のような始終、微笑みを浮かべて闇世界に通用するのか。暴漢にボコボコにやられている間に恋人は殺された、不甲斐ない、と痛感した彼は武道の恩師に入門する。先生はもちろん達人だけど、逆襲にきた連中にあっさり殺されてしまう。拍子抜けすることおびただしい。見せ場づくりというものがわかっとらんのか▼裏社会には裏社会の掟があるでしょうけど、そういう微に入った具体的なエピソードもなし。ということは、リサーチが足りんのではないでしょうか。「キル・ビル」なんか、タランティーノがむちゃくちゃ作っているように見えたけど(なんでヒロインが東京に、黄色いジャージで現れたのか今もってわからない)、有無を言わさぬ腕力があったわ。それにルークはお金持ちなの。超セレブの復讐の鬼といえばモンテ・クリストだけど、感情を葬ってしまった彼の心は氷河だ、鋼鉄だ。世界的研究機関のエリートとして、最強のバイオ兵器を開発する悪魔の愛弟子というような役が、変化のないこの俳優の面相には似合っていたわね。ロマンスかラブコメなら受けたでしょうに。復讐の鬼なんて、用いられ方が気の毒。