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特集「意外な代表作」

2018年10月24日

特集「意外な代表作2」① ジャン=ルイ・トランティニャン 
殺しが静かにやって来る(1969年 事実に基づく映画)

監督 セルジオ・コルブッジ

出演 ジャン=ルイ・トランティニャン/クラウス・キンスキー

シネマ365日 No.2642

ジャン=ルイの殺し屋 

特集「意外な代表作2」

 セルジオ・レオーネの「荒野の用心棒」に先立つこと1年。マカロニ・ウェスタンの嚆矢にしてアンチ西部劇のカルトとなった映画。ジャン=ルイ・トランティニャンが子供のとき、両親の殺人現場を見たため、犯人から口がきけないように喉を割かれた、賞金稼ぎ専門の殺し屋サイレンスを演じます。当時「男と女」「女鹿」などでフランス映画界のスターだったジャン=ルイが黒ずくめで、武器はドイツの軍用拳銃モーゼル、銃弾の帯を肩から斜めに掛け、ユタ州の雪原にポツンと姿を現します。とても詩的な光景です。音楽はエンニオ・モリコーネ。砂漠に赤土、岩肌の西部劇とは真逆の設定です。主人公がサイレンスと呼ばれるのは、彼が喋らない、それもありますが、立ち去ったあと誰も生きていない死の静寂がおおうから▼事実に基づく、としたのは1898年の「スノーヒルの虐殺」からです。多くの無辜の村人たちが、賞金稼ぎの餌食になって無差別に殺された。それがこの映画のラストシーンになっています。夫をアウトロー集団の首領ロコに殺された妻ポーリーンの要請を受けたサイレンスは、スノーヒルにやって来る。黒幕は町の悪徳判事です。村人たちの仕事を奪い、暮らしが立ち行かなくて野盗にならざるをえなかった彼らを賞金首の罪人とし、ロコたちに殺させていたのです。判事の目当てはポーリーンでした。サイレンスは1000ドルでポーリーンに雇われます。ロコのいる酒場に現れたサイレンスは、ロコのタンブラーにマッチの燃えかすをポイ、次に火のついた葉巻をポイ。自分が先に銃を抜くと、サイレンスの正当防衛になることを知っているロコは挑発に乗らず、殴り合いになる。店を出ようとしたサイレンスに銃を向けたところを保安官が逮捕する。背中から撃とうとした、というのが理由です。保安官は筋の通った好漢です。ロコをブタ箱に入れるため馬車に乗せ出発したが、途中ロコの逆襲で命を落とす▼本作は悪人が生き残り、善人が殺されるバッドエンドです。ポーリーンとサイレンスの短い一夜を境に事態は最悪に。手下を引き連れた判事の襲撃によってサイレンスは右手を焼かれ、ポーリーンはレイプされかける。サイレンスは左手で銃をとって判事を射殺し、手下を撃退する。判事はサイレンスの両親を殺し、彼の喉を切った張本人だった。村人を人質に取ったロコはサイレンスを酒場に呼び出す。一対一の決闘と言いながら物陰にいた手下が、サイレンスの唯一使える左手を撃ち抜く。サイレンスは蜂の巣になる。ポーリーンも殺される。酒場の人質は全員殺される。散々の結末です。あまり悲惨なので、プロデューサーはハッピーエンドのラストも作らせたがアホらしくて、やはり元通りがいいとなったとか。カルトかもしれませんが好きになれない映画でした。理由の一つはクラウス・キンスキーです。変人で有名な俳優でしたが、実の娘二人の性的虐待、小児性愛にはゾッとします。長女のポーラは5歳のころから14年にわたって、父親からレイプされていたことを自伝で書いていますし、次女のナターシャも父親以上の愛撫を受けていたと回顧しています。私生活は俳優の仕事に関係ない? ありますよ。刃向かいもできない女の子への性的虐待なんて、言語道断、卑劣な弱いものいじめではないですか。のちにナターシャ・キンスキー(「パリ、テキサス」)の、多くの男性遍歴を考えると、幼児期の経験がかぶさっているとしか思えない。顔を見ただけでゾッとする俳優なんて、それでも存在感というのでしょうかね。