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特集「意外な代表作」

2018年10月30日

特集「意外な代表作2」⑦ ルーニー・マーラ 
タナー・ホール 胸騒ぎの誘惑 (2018年 青春映画)

監督 フランチェスカ・グレゴリーニ

出演 ルーニー・マーラ/ブリー・ラーソン

シネマ365日 No.2648

可愛くない女優 

意外な代表作

 ルーニー・マーラ24歳。本作の2年後「ドラゴン・タトゥーの女」でブレイクします。この頃からすでに屈折した役選びが感じられます。タナー・ホールとは全寮制女学校。休暇を終えたフェルナンダ(ルーニー・マーラ)が学校に戻り、親友のケイト(ブリー・ラーソン)とルーカスタと抱き合って喜ぶ。公開は2018年でしたが製作は2009年。女性監督フランチェスカ・グレゴリーニによる青春映画の王道モノです。フェルナンダの幼馴染のヴィクトリアが転校してくる。彼女はおばあちゃんの宝物だったインコをわざと逃し、おばあちゃんは寂しがって間もなく亡くなった。鳥かごの柵を開けるヴィクトリアを見ていたフェルナンダは「悪は人の心の中にあると彼女から学んだ」と回想する。ヴィクトリアは相変わらずトラブル・メーカーだった。規則破りの常習犯で、校長の息子を篭絡し、校門の鍵を手に入れ、誘い合ってお祭りの夜の遊園地に脱出する▼優等生のフェルナンダは「行かない」と言っていたが、結局行動を共にする。彼女が関心あるのは母親の友達の夫のジオ。妻は親友の娘ということでフェルナンダを家族同様歓待するが、フェルナンダとジオはできちゃう。関係を続けようとする男をあっさり振るのだが、妻子持ちの中年男に惹かれるなんて定番すぎる。ケイトはつまらない付き合いに嫌気がさし、勉強に没頭して大学を目指す。それぞれの高校時代最後の一年だ。ルーニーは「キャロル」でアカデミー助演女優賞候補に、ブリー・ラーゾンは「ルーム」で同主演女優賞を取る。彼女らのデビュー間なしの作品です。映画が始まって間もなく、娘を学校に送っていく母親の車の中で、フェルナンダがチューインガムを噛んでいる。口から出してラジオかエアコンかのスイッチに押し付ける。母親が窓からポイすてする。すかさず「それはいけないわ」と娘が注意する。ルーニーって床や道に紙クズ一つ落ちていてもゴミ箱に入れる、環境保全の権化です。彼女のために作ったシーンでしょう▼家族のいる家で男と寝てハイ、サヨナラの女子高生は、ルーニーが演じていることもあって、全然可愛くなかった。どだい彼女は「可愛い」という女性ではない。本作でも耳年増の女の子が通過儀礼として初体験してバイバイするのに比べ、悩んだり反抗したり、掟破りをしたり、同性に惹かれたりするケイトやヴィクトリアのほうがよほど娘らしく、年相応の可愛らしさがあります。聡明なルーニーは二度とガラに合わないファンンタジー、もしくは青春路線を踏まなかった。一度大失敗を喫しています。「PAN〜ネバーランド、夢のはじまり〜」で見事ゴールデンラズベリー賞最低女優助演賞にノミネート。自分でも後悔していると失敗を自認した。「LION/ライオン〜25年目のただいま」も失敗だった。あれはニコール・キッドマンの圧勝でした。「キャロル」ではケイト・ブランシェットと互角に渡り合ったのに「ライオン…」は不思議なほど影が薄かった。なぜか。役があまりにもノーマルで、パンクでもなければ逸脱者でもない、健康な女性だったからです▼以後彼女のチョイスは正気に返り、「ローズ、秘密の頁」では赤ん坊殺しの容疑で40年間精神病院に幽閉される女性、大女優ヴァネッサ・レッドグレーヴの、若き日のローズをルーニー独特の高いテンションで演じました。ルーニー・マーラとはマイノリティの暗い場所にある精神の一面が、その役柄にないと燃えない女優です。意固地なほどストイックに我を通す、硬質な魅力の持ち主です。9年前にいわゆる青春映画を卒業しておいて正解でした。大した誘惑も胸騒ぎもありませんでしたけど。